まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『優雅な歌声が最高の復讐である』感想

優雅な歌声が最高の復讐である (電撃文庫)

優雅な歌声が最高の復讐である (電撃文庫)

ストーリー
俺は怪我でサッカーを辞めた。他にやりたいことなんてない。そんな灰色の高校生活で出会ったのが、歌姫の瑠子だった。学校中に注目される瑠子は、夢を失った俺には近寄り難いけど、その瑠子から合唱コンクールで指揮者に指名された。なんで俺が――?
私は歌えなくなってアメリカから帰ってきた。クラスのみんなは歌姫「RUKO」に期待している。でも、本当のことを言えず辛い時、サッカーをやめて無気力になった隼人がいつも助けてくれる。隼人はかつては眩しかった。私のことは覚えていないみたいだけど、また輝きを取り戻して欲しいと思ってる――。
挫折から立ち上がる少年と歌姫を描く、極上のボーイミーツガールストーリー!

怪我でサッカーをやめた少年と、元の歌声を失った世界に誇る歌姫の少女が出会い、ともに背中を押しあいながらまた走り出すボーイミーツガール。
それぞれの理由から目標をなくしてしまった少年少女が出逢いをきっかけにして新たな一歩を踏み出していく綺麗な物語展開が良かったです。
強気にグイグイ来るヒロインに振り回されたい欲、ありますよね。


主人公の隼人は元々同年代の日本代表に選出されるほどのサッカー少年。でも怪我が原因でサッカーから離れることになり、夢を失ってぼんやりとした毎日を送っている。
そんな彼の前に現れた転校生は、全米で大成功した歌姫・RUKOこと瑠子。しかし彼女にも人前で歌うことのできない理由があって……。
サッカーと歌。それぞれ恵まれた才能を持ちながらも、それを失ってしまった少年と少女。まさに運命的な出逢い。これがボーイミーツガール。
初めはちょっと距離のあった二人が、校外学習や合唱コンクールを経てゆっくりとお互いを特別な相手だと思うようになっていく過程が丁寧に描かれていて良かったですね。
特に合唱コンクール! 伴奏担当の歌姫から直々にご指名を受けて指揮者になるとか、かなり燃えるシチュエーションなんですけど! なったらなったで「腰抜けの性根を叩き直す」とか言ってビシビシくるし、瑠子はいい意味でアメリカ的というか、まどろっこしいところがなくていいですね。


瑠子のサッカー練習がきっかけとなり、そして瑠子とのサッカー観戦が決定的な理由となり、サッカーが好きだという思いを取り戻していく隼人。
たとえ日本代表には戻れなくてもね。好きだという気持ちが素直に弾けるのを見るのはいいもんですよ。デート中の女の子をほっぽり出してどっか行っちゃうのは本気でありえないけど……ぶっちゃけドン引きだけど……。
ただ、サッカーの試合描写は、ちょっと専門用語が多すぎて目が滑ってしまったなあ。いや、瑠子にまつわる音楽語りもそうなんですけどね。サッカーと音楽に関する作者の造詣が深いのは分かりましたが、小説ではなくて説明文を読んでいるみたいで、だいぶ面白みに欠けた部分がありました。サッカーの試合は隼人の転機となる重要なシーンだし、ここは正直もったいなかったかなと。
そういう細かいところを除けば、ストーリーの仕立ては綺麗だったと思います。隼人の次は瑠子の番ということで、元々の歌い方ができなくなってしまった瑠子が日本で新たな挑戦を始める展開にはドキドキしたし、瑠子が隼人にちょっかいをかけてきた理由が明かされるとニヤニヤしてしまいました。
終盤の「つきあってないけどほぼカップル」な二人のやりとりとか、いいラブコメっぷりでしたね。ごちそうさまです。


イラストはU35さん。少し淡い印象の本文イラストがストーリーによくマッチしていたと思います。
エピローグの見開き2枚、贅沢でよかったー。


亮が一番の萌キャラ説。

『オミサワさんは次元がちがう』感想

オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)

オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)

ストーリー
大学二年の雪斗には気になる女性がいた。芸術科の小海澤有紗。無表情、無感情で人と関わろうとせず、そこかしこに絵を書き散らすも、その落書きが数百万の価値を生む百年に一度の天才。人とのコミュニケーションが断絶してしまっているそんな小海澤さんが気になり、なんとかお友達にこぎつけた雪斗。しかし天才との変わった交流を楽しむはずが、彼女の重大な秘密を共有することになり――。次元が違う彼女との、もどかしくピュアなキャンパスラブストーリー。

桐山なると先生の新刊だー! と喜び勇んで買ったはいいもののジャンル的に期待していたラブコメじゃないようなので(それくらいにデビュー作が鮮烈だったのだ、許して)ちょっと置いといたんですが、もっと早く読めばよかったと後悔! 面白かったです。
天才画家のヒロインに秘められた謎。そんな彼女と会話しようと必死になる内に自然と惹かれていく主人公。
一緒にいてはいけない理由と、一緒にいたい想いと。切なさともどかしさが爆発する素敵な恋愛ストーリーでした。この落ちはちょっと完璧すぎるぜ……。未読の人は絶対にあとがきを先に読もうとしてはいけないんだぜ……。


主人公・雪斗が所属する大学の芸術科きっての天才・小海澤さん。彼女が描いた絵を見るために芸術学部まで通っているほどのファンである雪斗は、なぜか誰ともコミュニケーションを取ろうとしない彼女のことが気になってしまう。
小海澤さんのもとに連日通う中で時々会話をしてくれるようにもなって、だんだん可愛らしい一面も顔を覗かせるようになって。少し距離が縮まったかなと思った矢先に起こる異変。
ただ単純に芸術家らしい変わり者というだけなのかと思っていたのに、まさか小海澤さんにこんな秘密が隠されていようとは! 次元がちがうってそういう意味か! いやぶっちゃけめちゃくちゃ怖い描写でしたけど。ホラーかと思った。
しかし一度この秘密が明かされると、小海澤さんに対する見方がガラッと変わるというか、一気に彼女のことが愛おしくなってきます。どうにもできない理由から孤独になって、誰にも相談できずに、ただ一人で絵を描くだけの日々。どうにかして彼女のことを理解して、一緒にいてあげたくなってしまう……。


小海澤さんには、雪斗のことを避ける立派な理由があって。でも雪斗の方にも、小海澤さんに会いにいくだけの大きな想いがあって。
お互いにお互いのことが大切だからこそどうしようもなくすれ違う切なさ。でも小海澤さんの唯一の誤算は、雪斗の思いもかけない押しの強さでした。
いやめっちゃグイグイ行きますやん! 優男に見えてやるときゃやるんだなあ。でもこれくらい押していかないとね、小海澤さんの心の殻をこじ開けることはできないよね。
気持ちが伝わるようにはなっても、どうしても会話ができない時間は生まれてしまう。それはやっぱり切ないし悲しい。でも雪斗は小海澤さんのことを分かっているし、小海澤さんは雪斗のことを分かっている。それだけのことがひどく嬉しいし、ずっと一人だった小海澤さんにとっては奇跡みたいなことであるはず。
だからこそ。雪斗のことを大切に思うからこその決断。誰よりも一緒にいたい人だからこそ一緒にいられないって、運命ってなんて残酷なの……。
切なすぎる別れからの、ラストまでの展開は素晴らしかったです。最後の最後に明かされた小海澤さんの絵に込められた謎には完全にやられた。だめだ小海澤さん可愛すぎる。にやけちゃう。まだまだハードルも多いけれど、この微笑ましい二人の行く末に幸せな未来が待っているといい。そう願います。


イラストはヤマウチシズさん。髪の毛ばっさばさの小海澤さんがとても可愛い。
第六章扉の小海澤さんが特に可愛い。


ごんごんじー(やっぱり怖い)。

『好きラノ』2018年上期に投票します

lightnovel.jp
投票します。
いつも通り新作優先なんですがどうしても入れたい完結作品があったので新作:既存=9:1で。



【新作】

『オタギャルの相原さんは誰にでも優しい』(MF文庫J
【18上期ラノベ投票/9784040699547】

オタギャルの相原さんは誰にでも優しい (MF文庫J)

オタギャルの相原さんは誰にでも優しい (MF文庫J)

オタク素養のあるギャルヒロインとかもはやオタクにとって最高以外の何ものでもなく、恋人未満なカップル(仮)の気の置けないイチャイチャ具合がただひたすらに楽しい最上級ラブコメディ。
感想↓
『オタギャルの相原さんは誰にでも優しい』感想 - まだまだペンキぬりたて



『西野 〜学内カースト最下位にして異能世界最強の少年〜』(MF文庫J
【18上期ラノベ投票/9784040698595】

裏世界では最強なのに学校の中ではカースト最底辺をゆくフツメン主人公の健気なダンディズムに涙する。2巻でメインヒロインのド変態ぶりが明らかに。ぶっちゃけ引くかも(僕は好きやで)。
感想↓
『西野 ~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~』感想 - まだまだペンキぬりたて
『西野 ~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~ 2』感想 - まだまだペンキぬりたて



『三角の距離は限りないゼロ』(電撃文庫
【18上期ラノベ投票/9784048938297】

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

青春ラノベの名手・岬鷺宮先生が贈る学園恋愛ストーリー。二重人格ヒロインの片方への恋をもう片方に応援してもらうとかおいしいシチュエーションすぎませんか。切なさと温かさのバランスが絶妙。
感想↓
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『錆喰いビスコ』(電撃文庫
【18上期ラノベ投票/9784048936163】

錆喰いビスコ (電撃文庫)

錆喰いビスコ (電撃文庫)

電撃小説大賞<銀賞>受賞作品。「錆」によって荒廃した遠未来の日本を舞台に主人公たちが暴れ回るバイオレンスSFアクション。世界設定は魅力的だわキャラクターはクールだわアクションは抜群の迫力だわで文句のつけようなし。
感想↓
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『恋してるひまがあるならガチャ回せ!』(電撃文庫
【18上期ラノベ投票/9784048936859】

すまんな、いつもの杉井光枠やで! スマホゲー廃課金勢の大学生主人公とヒロインが送る残念すぎるガチャ生活。ツッコミどころ満載で最高に笑かしてもらいました。
感想↓
『恋してるひまがあるならガチャ回せ!』感想 - まだまだペンキぬりたて
『恋してるひまがあるならガチャ回せ!2』感想 - まだまだペンキぬりたて



『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』(スニーカー文庫
【18上期ラノベ投票/9784041064757】

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

26歳サラリーマンと家出女子高生とのまったりとした同居生活を淡々と描くだけなのに、なぜだかハートに突き刺さりまくる日常ストーリー。ぶっちゃけ性癖にストライクすぎて辛い。
感想↓
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『裏方キャラの青木くんがラブコメを制すまで。』(講談社ラノベ文庫
【18上期ラノベ投票/9784041068144】

裏方キャラの主人公が学園のヒロインに恋をする。舞台には上がれない僕たちのモヤモヤした思いと、それでも諦められない想いを情緒たっぷりに描きだす青春学園恋愛劇。
感想↓
『裏方キャラの青木くんがラブコメを制すまで。』感想 - まだまだペンキぬりたて



エートスの窓から見上げる空 老人と女子高生』(ファミ通文庫
【18上期ラノベ投票/9784047349605】

JK(太もも好き)と老教師(太もも好き)がJKの太ももを見上げながら学園にまつわる謎を解いていく摩訶不思議な魅力に満ちた学園ストーリーミステリー風味。なんかエモい。
感想↓
『エートスの窓から見上げる空 老人と女子高生』感想 - まだまだペンキぬりたて



『オミサワさんは次元がちがう』(ファミ通文庫
【18上期ラノベ投票/9784047350564】

オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)

オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)

他人とは違うものが見えている芸術学部の天才ぼっちヒロインと、彼女に近付こうと頑張る主人公のすれ違いラブストーリー。ラストの落ちが実に秀逸。
感想↓
『オミサワさんは次元がちがう』感想 - まだまだペンキぬりたて



【既存】

変態王子と笑わない猫。12』(MF文庫J
【18上期ラノベ投票/9784040691824】

変態王子と笑わない猫。12 (MF文庫J)

変態王子と笑わない猫。12 (MF文庫J)

8年間続いたシリーズにピリオド。笑いと切なさと月子ちゃんペロペロと、ずっと楽しく読ませてもらいました。大好きな作品でした。ありがとうございました。
感想↓
『変態王子と笑わない猫。12』感想 - まだまだペンキぬりたて



以上!