まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『変態王子と笑わない猫。12』感想

変態王子と笑わない猫。12 (MF文庫J)

変態王子と笑わない猫。12 (MF文庫J)

ストーリー
「わたしと、ピクニックの仲間を集めに行きましょう」……一本杉の丘で再び出会ったぼくと月子ちゃんは、手を繋いで歩き出す。大切な人を、かけがえのない思い出を、きっと取り戻すために。横寺くんノート(著&脚色・筒隠月子)に基づき、ゲーセンで遊んだり勉強会をしたり、いちゃいちゃアニマルタイムを繰り広げたり、昔懐かしいイベントに奮闘するのだけれど――「月子ちゃんも早くすっぽんぽんノルマを果たさなきゃ!」「それもやぶさかではないですが」「なーんちゃって、……え?」――脱ぐ気いっぱい!? 大人気爽やか系変態青春ラブコメ第12弾! 何もかもが変わってしまった新世界で、それでも変わらない何かを探す最後の旅路が、今始まる――。

あー、終わってしまったー!!
「シリーズ全体のエピローグ」として位置づけられた今巻。寂しいけれど最終巻……ということになるのかな。
笑わない猫像を巡る一連の物語は終わり、新たに始まった世界での横寺と月子ちゃん、そして他キャラクターたちのあかるい姿を描くとともに、これから待っている素敵な未来を予感させてくれる1冊でした。
最後まで変なところでこだわってしまう月子ちゃんと、そんな彼女に新たな1ページを開かせる横寺、そしてまさかの新キャラの登場(!)と、最後まで見所たっぷりで大満足です。


世界が変わり、過去が変わり、これまでの11巻の物語は、11冊の「横寺くんノート」の中に記録として残るのみ。
前回間違いなくハッピーエンドを迎えたのは確かなんだけれど、これまで紡いできた出来事が全部なかったことになってしまったというのは、一抹の切なさを感じる部分でもあり。小豆梓とか、マイマイとかね。横寺との関係がフラットに戻っているのを見ると、やっぱり残念な思いもある。
だから月子ちゃんが、横寺ノートの内容を振り返るようにしながら、元の世界での事件や関係性を再現しようと懸命になってしまった気持ちも、ちょっと分かってしまったり。
でも過去ばかり追い求めていてもしょうがないんだ。これまでのお話も素敵だったけれど、これからのお話も絶対に素敵に決まっているから。また新しく友達になって、ばかなやりとりで笑いあっていけばいい。なんだか、8年間追いかけてきた読者へのメッセージにも聞こえてくる。横寺はたまにいいことを言いやがる。ずるいです。


関係性は少し変わったかもしれないけれど、小豆梓も鋼鉄さんもエミもマイマイも、それぞれの魅力を改めて見せてくれました。
特に小豆梓(わんこ)は、やっぱりめっちゃ可愛いんですわ! 永遠の愛されキャラ、天性のヒロインですわ……さすが永遠の2番手や!(不憫)
鋼鉄さんはなんだか、めっちゃデキる先輩っぽくなっていて驚いたけれど、これが彼女の本来の姿なんだろうなと不思議としっくりきました。でも変なところで抜けてるのがやっぱり鋼鉄さんって感じ。彼女がいたからこそのこのエンディングだったんだよなと本当に思います。
エミ。最初に出てきたときはなんだこのキャラと思ったけれども、今もわりとなんだこのキャラと思ってます(笑)。1人だけ特殊な立ち位置にいるよね。でも結構好きやで。これからもよーとおにーちゃんのセクハラに負けずがんばってほしい。
マイマイ! 可愛い! 推し! 某イベントでさがら先生に直接「副部長が好きです!」って伝えたのを思い出します。あの頃はまだ名前すら付いていなかったのに、こんな風にヒロイン陣の一角として名を連ねるようになるとは感慨深いものです。それだけの魅力を秘めたヒロインだった。踏んでほしい。
そして圧倒的正妻たる月子ちゃん。せっかく本音を取り戻したのになかなか表情を見せてくれなくて心配に思っていたのだけれど、最後にようやく泣き顔を、そして笑顔を見せてくれましたね。僕はこの笑顔を見るためにこの作品を読んでいたのだと思うよ。
改めて、最後まであかるくたのしいラブコメディを見せてもらいました。まさかのタイミングでの新キャラについても「最後の最後にまたやりおったな!」という感じで、笑わせてもらいました。エンディングまで読めて良かったです。あとがきにあった「幸せな短編集」とか、ちょっと期待しちゃうんだからね。またね。


さあ、横寺くんノートから新キャラの伏線をさがさねば(ほんとにどこだよ……)。