まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『ロメリア戦記 ~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~ 3』感想

ロメリア戦記 ~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~ 3 (ガガガブックス)

ストーリー
アンリ王の死から二年――。人類最強国と目されるヒューリオン王国の号令により、打倒魔王軍を掲げた連合軍が結成された。連合軍には連合の盟主であるヒューリオン王国を筆頭に、フルグスク帝国とホヴォス連邦、ヘイレント王国にハメイル王国という名だたる列強国が参加を表明する。ライオネル王国も連合軍に加わり、聖女となったロメリアが「ロメリア二十騎士」を率いて、魔王軍に支配された難攻不落のガンガルガ要塞攻略に挑む。だが、一致団結したはずの連合軍では、保身と打算、歴史的な因縁からくる対抗心、そして手柄の奪い合いが横行して足並みが揃わない。さらに連合各国は、ロメリアのことを成り上がりで聖女になった女と見下しており、全く相手にしない。連合各国は代表として、王子や王女も参陣させているが、各国の王族達もロメリアとは一定の距離を置いている状況だ。しかしロメリアは逆風を気にもせず、自ら考えた秘策でガンガルガ要塞の攻略に挑む。一方魔王軍の本拠地ローバーンでは、二年前に起きたセメド荒野の戦いを生き延びた魔王軍特別参謀のギャミが、打倒人類連合軍のために策謀を開始する。ここにロメリアの新たな戦いが始まる。

全てを見届け、そして聖女は微笑む
魔族によって占拠された難攻不落の大要塞を落とすべく、各国から集った連合軍が魔族の軍団と一大決戦を繰り広げる。今回は1冊まるごと使ってガンガルガ要塞の戦いが描かれたわけですが……。
おい、めちゃくちゃ面白いじゃないか。話のスケールが大きくなってきて楽しみとは言ったけど、ここまでとは聞いてない。ハリウッドで映画化してくれ。
連合軍ならではの軋轢の中、敵も味方も欺くロメリアの大作戦。ただでは負けてくれず、大いなる反撃に出る魔族軍。勝利のすぐ先の敗北。どこまでも先の読めない大戦争に、手に汗握りっぱなしでした。


3万の魔族が蠢く大要塞ガンガルガ。そしてその要塞を取り囲む人類各国の大軍勢、その数45万。純粋な頭数こそ圧倒なれど要塞の壁は高く、また技術も魔族には劣る人類。さらにはロメリアを侮り、表面上以上の協力をしようとしない各国代表たち。どこを見ても問題だらけの攻城戦ですが、そんな四面楚歌の状況であっても他国を一歩出し抜いて敵に大打撃を与えてみせるロメリアの戦術眼は、いよいよもって極まってきたように思います。
何よりもロメリアは人の扱い方が巧すぎる。高慢な魔道士にはさらりと大仕事を流してみせ、将軍たちの軍議の場では自らの立場を上手く利用しながら周囲を煽り、最終的に目的の作戦を成功させてみせる。うーん、これは間違いなく人の上に立ち、人を使う者の器量だ。


しかし魔族側にもロメリアに比すべき智者が。勝利確実と思われた状況が、新たにもたらされた智慧ひとつでひっくり返されてしまうのだから恐ろしい。
迫りくる魔族の大軍勢。ここにきて尚、足並みの揃わない連合軍。そんな中、逃げ惑うばかりだった公女や姫、王子たちが、戦いの中で自らにできることを知り前に進んでいく姿には勇気づけられました。作者は、一見して残念っぽいキャラクターを魅力的に見せるのが上手いですね。今回でいうとレーリアのことは終盤で一気に好きになりました。
そして何より、最大の窮地に立たされてからのロメリアの人知を超えた奮闘ぶりが凄かった。こんなこと他の誰にもできんわ。


大いに先が気になるところで続巻へ。本来ならめちゃくちゃやきもきするところだけれど、なんと幸運なことに4巻がもうすぐ出るらしいぞ! やったね! ということであと数日、楽しみに待つことにします。