まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『海鳥東月の『でたらめ』な事情』感想

海鳥東月の『でたらめ』な事情 (MF文庫J)

ストーリー
「財布? 携帯? ぜんぜん違うよ。私が盗まれたのは――鉛筆さ」仲良しのクラスの女子・奈良芳乃から突如、謎の相談を受けた海鳥東月。だがそれは奇妙奇天烈な事象の始まりに過ぎなかった。海鳥の自宅に現れた謎のネコミミパーカー『でたらめちゃん』。彼女によって引き起こされるトイレの貸し借り、裏切り、脅迫、掴み合いからの一転攻勢、そして全力の命乞い……全てを終えた後、でたらめちゃんは海鳥に告げてくる。「海鳥さん。私と一緒に、嘘を殺してくれませんか?」海鳥は訳も分からぬまま『嘘殺し』に協力することになり!? 第17回MF文庫Jライトノベル新人賞〈最優秀賞〉作は奇妙奇天烈! だけど青春ストーリー?

第17回MF文庫Jライトノベル新人賞〈最優秀賞〉受賞作品。嘘が実体化して周囲に影響を及ぼしてしまう世界で友達になるために少女たちが戦う不可思議異能ストーリー。
学校で起こった謎の鉛筆泥棒の話から主人公のとんでもない性癖暴露が始まったかと思いきや、あれよあれよと嘘と真実が入り乱れる奇妙な異能バトルへとお話がもつれ込んでいって、ふと気づいたら終わってました。
変なキャラクターと変な設定が合わさって変な味わいの物語ができあがっているんだけれども、なんだか変な魅力のある物語でしたね。


自分の鉛筆が何者かに盗まれて別の鉛筆と入れ替えられていることに気づいてしまった女子高生・奈良と、彼女から相談を受けた海鳥。おかしな小事件から始まったので学園ミステリーでも始まるのかとワクワクしていたらすぐに犯人が判明しちゃって拍子抜け……かと思いきや、その犯人がどエラい行動に出だして唖然。現実世界の高校生にこんな突飛な設定付けちゃいますかと笑っていたら、次に出てくるキャラもその次のキャラもクセが強くてまた唖然。
この作品、ストーリーの流れだけ見れば自宅と近所を舞台にして軽く異能でバトるだけのシンプルな物語なんですけど、アクの強すぎるキャラクター陣や独特なセリフ回し、一風変わった設定が味付けになって結果的にめちゃくちゃユニークなお話になっているのが凄いですね。バチバチにセンスでまとめ上げているので最優秀賞も納得です。


嘘を付くことができないために、友達を作ることを諦めていた海鳥。そんな彼女の前に降って湧いた、奈良と友達になれるかもしれないという希望。一方の奈良は奈良で、海鳥のために自分から協力していく積極性を見せていて、あったけぇ関係だなあと思いました。変わり者同士、傍目から見たらもう十分友達なんですけど、こういうことはやっぱり当人の思い次第ですからね。ここまできたら納得行くまで頑張れ!
具現化した嘘であるでたらめちゃんも、二人の友情物語に挟まれつつも存在感出てましたね。弱い女の子が必死になっている姿にはどうしてもグッと来るものがあります。海鳥と奈良の力を借りて、彼女自身の願いもどうか叶えていってほしいなと思います。


イラストは天城なつきさん。シンプルかつ可愛らしい絵柄でした。
表紙のでたらめちゃんオーラある~!


こんなに飯テロされないラノベ飯も久しぶりだな……。