まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』感想

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

ストーリー
5年片想いした相手にバッサリ振られたサラリーマンの吉田。ヤケ酒の帰り道、路上に蹲る女子高生を見つけて――「ヤらせてあげるから泊めて」「そういうことを冗談でも言うんじゃねえ」「じゃあ、タダで泊めて」なし崩し的に始まった、少女・沙優との同居生活。『おはよう』『味噌汁美味しい?』『遅ぉいぃぃぃぃぃ』『元気出た?』『一緒に寝よ』『……早く帰って来て』家出JKと26歳サラリーマン。微妙な距離の2人が紡ぐ、日常ラブコメディ。

26歳サラリーマンの主人公が家出女子高生を拾い、別にアレやコレやをするでもなくただまったりと同居生活を送る、優しさに満ちた日常ストーリー。
特にこれといった事件が起こるわけでもなく、短い章立てでただ淡々とJKとの毎日を描く。それだけのはずなのになぜかとてつもなく楽しい、不思議な魅力のある作品でした。
いや正直性癖ドンピシャすぎて辛いんですけど。世間の黒い部分を渡り歩いてきてスレきった女の子をエロ目的ではなく自分のもとに置いてひたすら優しくしたい……これがパパ活の芽生えか……(違う)。


入社から5年片想いしていた先輩に振られ、酒に溺れて帰ってきた吉田(26歳・サラリーマン)は、自宅の前で体育座りをしている家出JK・沙優を見つける。
酔いの勢いもあって家に上げてしまうのだけれど、宿代として体を差し出そうとする沙優に対して「ガキは好みじゃねえ」とバッサリ切り捨てちゃう「きちんとした大人」な吉田の対応の安心感たるや。また逆に、これまで沙優がどういう風にして家出生活を送ってきたのかも容易に想像できてしまって、なんとも言えないモヤモヤ感が湧いてきます……。
や、ライトノベルのヒロインで、これだけはっきりと「そういうこと」の経験がある子ってかなり珍しいのでは? この生々しさが、個人的にはかなりグッとくるんですけどね。守ってあげたくなっちゃうよね。


体ではなく、家事をやってもらうことを宿代として、とりあえずの間は沙優を家に置いておくことにした吉田。
そんな吉田の優しさに感化されて、どんどん懐いてくる沙優の可愛さったらない! 10も年上のオッサンをからかうような台詞とか、「にへら」という笑顔とか、ちょっとした仕草ひとつひとつがたまらなく可愛いんだ!
一緒にご飯を食べたり、職場のことについて話したり、時々買い物に行ったり。そんな何気ない日常も、吉田と沙優の気の置けない会話も、とても楽しそうで、見ていてほのぼのした気持ちになってきます。
沙優にとって吉田の存在はどんどん大きくなっていくわけですが、彼女なりに遠慮したり気を遣ったりしてくることも多くて、そんな風に大人の表情を見て過ごしてきたんだと思うと、また切ない気持ちになったり。
そんな居候の思いがある時ついに弾けてしまうのだけれど、沙優にとっての吉田と同じくらい、いつの間にか吉田にとっての沙優の存在も大きくなっていて。
だってねえ、朝起きて「おはよう」、出かけるときに「いってらっしゃい」、帰ってきたら「おかえり」、寝る前に「おやすみ」、そんななんでもない挨拶を交わす相手が家にいてくれることが、26歳独身男性にとってどれだけありがたいかってことですよ。
恋人とも友人とも親子とも違う、絶妙な距離の家主と庇護者。この柔らかく穏やかな日常をまだまだ見ていたくなる良作でした。もちろん年の差恋愛への発展にも期待しちゃいますけどね! 早いとこ2巻も読もう。


イラストはぶーたさん。なんだこの完璧な可愛さのJKは……。
色んな表情を見せてくれる沙優がいちいちたまりません。


後藤さんの悪女感が半端ないのだが……!