まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『恋してるひまがあるならガチャ回せ!』感想

ストーリー
夢も将来も彼女もない留年寸前大学生の俺は、バイト代をすべてスマホゲーに突っ込んでガチャだけが生き甲斐の生活を送っていた。そんな俺が大学で知り合ったのが旧華族出身のガチお嬢様・薗村紗雪。やつには秘密があった。あらゆるスマホゲーで俺のライバルとして立ちふさがる、俺以上の廃課金ゲーマーだったのである! 生まれつき恵まれまくったお嬢様なんかが俺の廃課金道に踏み込んでくるなんてゆるせねえ、絶対に負けられねえ! スマホゲーだけが俺の青春、ガチャだけが俺の人生の煌めき――。業界震撼、世界初の廃課金ラブコメがここに爆誕!

6月9日(ロックの日)に『さよならピアノソナタ』(さよならピアノソナタ (電撃文庫))を読み返していたら頭抱えるくらい面白くてモーレツに新しい杉井作品が読みたくなって積んでた今作に手を伸ばしました。さよピはいいぞ。今をときめく赤坂アカ先生が作画をしている漫画版(さよならピアノソナタ 1 (電撃コミックス))もいいぞ。もし未読の方がいたら騙されたと思って読んでみてください。


話を戻して今作。スマホゲーとガチャに人生の全てを費やす限界大学生の主人公が、同じく廃課金勢のお嬢様ヒロインと出会い、バチバチ張り合いつつも親交を深めていくソシャゲラブコメ
はー面白かった! やっぱり僕は杉井先生の文章が大好きなんですよ。シリアスもいいけど、ギャグがまたいい。何気ない会話でも声出して笑っちゃう。ほんとコメディセンスばっかりはね、読者の趣味にもよると思うんで一概には言えませんが、抜群ですよ。


「惨獄死クロニクル」「獣仙娘々」「焼き肉ストライカーズ」等々、次々に出てくるオリジナルスマホゲーの数々。そしてその全てにことごとく課金を振りまいていく主人公の遠野。こいつは中々やべーぜ。スマホゲーのイベントを走りつつ体だけは授業に出席、ガチャ40連を外しては奇声を上げ(大学構内で)、スマホゲー対戦で敗れては奇声を上げ(大学の食堂で)、そしてまたiTunesカードを手にガチャを回し、金がなくなり1週間以上バイトのために自主休講。底辺大学生じゃねえか!
その熱中ぶりだけあってスマホゲーには一家言ある遠野さん。口を開けば聞かれてもいないスマホゲーの薀蓄が湯水のように流れ出す。これはもはや哲学だ。会話はできてないけど。ク○オタクじゃねえか!
まあここまでのめりこめるものがあるってのはいいことだな。いいことかな? あんまりいいことじゃない気もしてきたな?
樋沢とかいう奇跡みたいな友人がいてほんとに良かったなお前……。まあこいつはこいつで○ソナンパリア充野郎だけど……。


そんな詰んでる遠野と運命的な出会いを果たしたヒロインは、お嬢様なのに同じく詰んでる廃課金勢ぼっち大学生の紗雪。
こんな美人でしかも趣味も一緒で、すぐに意気投合できるかと思いきや彼女からのフレンド申請をさくっと断っちゃうスマホゲーガチ勢の遠野さんマジ遠野さん。何やっちゃってんの……。まあ、それだけゲームに本気だからね。本気なら仕方ないですけどね。でも意地はってかっこつけたわりにはすぐに後悔してウジウジしちゃうあたりがほんと、駄目なオタクって感じだ……。
そんな具合に残念なすれ違いを演じつつもなんだかんだで仲良くなっていくふたりのラブ未満コメ増量の日常が楽しかったです。ずっとライバルだったふたりの満を持しての協力プレイとか、お話としてはベタだけれどやっぱり燃えるよね。
恋愛方面に関していうと、わりと紗雪からのアプローチが多くて押せ押せに見えるのが面白い。ラストで思わぬ展開が待っていたので、次巻以降での関係の変化に期待です。ってもう次の巻出てるやんけ! 読まなきゃ!


イラストは橘由宇さん。もふもふと戯れる紗雪お嬢様かわいい。
あとわりと出番あるのにイラスト化されてない樋沢がすごい不憫なので描いてあげてほしい(笑)。


上記のきっかけで読み始めた作品のあとがきの書き出しがこれ、すごいエモみを感じた。