まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『私が死んで満足ですか? ~疎まれた令嬢の死と、残された人々の破滅について~』感想

私が死んで満足ですか? 疎まれた令嬢の死と、残された人々の破滅について (レジーナブックス)

ストーリー
伯爵令嬢ロロナ・リュースが事故死した。その知らせが舞い込んだのは、彼女が婚約者である王太子に婚約破棄を告げられた翌日のことだった。妹を虐げたなどといわれなき罪で糾弾されながら、その咎めをあっさり受け入れたロロナ。彼女は郊外の街道で横転した馬車の中、痛ましくも顔の潰れた遺体となって発見されたという。その死を知ったロロナの妹は喜んだ。「これで王太子は自分のもの」と。王太子は笑った。「もっと早く死んでくれればよかったのに」と。しかし、彼らは知らなかった。ロロナの死がもたらすものは、幸運だけではないということを……。

令嬢の死、そして人々は破滅へと至った
王太子から婚約破棄された直後の伯爵令嬢の死によって、それを喜ぶ人々に次々と破滅がもたらされていくサスペンスファンタジー
これは新感覚で面白い! 一人の伯爵令嬢がどれだけ家族や関わる人々のことを陰で救っていたのか、彼女がいなくなって初めて気づく愚かな人たちの姿を見ていると、暗い快感が押し寄せてきますね……。
一方で、調べが進むにつれて次第に大きくなっていく彼女の事故死への違和感。すごく凝ったミステリーというわけではないけれど、勝手に想像がかきたてられていくミステリー風の味わいが堪能できました。


「心を持たぬ紫水晶」と揶揄された伯爵令嬢ロロナは、婚約者の王太子から婚約破棄を一方的に告げられた当日に馬車で謎の事故死を遂げてしまいます。
当の王太子、その後釜に座ったロロナの妹、ロロナの父である伯爵、義母の伯爵夫人、そしてロロナが陰で共同経営していた商会の商人。ロロナの死の知らせに喜ぶ人たち。しかし彼らは、まるでロロナの呪いかのように、次第に窮地へと立たされてゆくのです……。
伯爵と伯爵夫人の使い込みによってガタガタになっていた伯爵家の経済状況を実は一人で支えていたロロナ。破滅していく王太子や伯爵家の面々にはざまあみろという思いしか湧いてきませんが、ロロナがどれだけ素晴らしい人物だったかということが死んで初めて知られるということにはたまらない切なさを感じます。


数少ないロロナの理解者たちによって謎めいた事故のことが調べられていき、その中で少しずつ引っかかる部分が。
ロロナがしてきたことは人々の視点で描かれても、ロロナ自身の視点が描かれていないので、事故の顛末はもとより、彼女の内心がどのようだったのか、どんどん想像がふくらんでゆきました。事故は誰かに仕組まれたことだったのか、とか、もしかしてロロナ自身が……? なんて風にも思ったりとか。そんな想像がまた楽しい。
全てが終わってからの後日談も良かったです。痒いところに手が届くなあ。今度こそ彼らが幸せな日々を送ってくれますようにと願わずにはいられません。


ルミナはなんだか嫌いになれないね。