『オミサワさんは次元がちがう』感想
- 作者: 桐山なると,ヤマウチシズ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/03/30
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (3件) を見る
ストーリー
大学二年の雪斗には気になる女性がいた。芸術科の小海澤有紗。無表情、無感情で人と関わろうとせず、そこかしこに絵を書き散らすも、その落書きが数百万の価値を生む百年に一度の天才。人とのコミュニケーションが断絶してしまっているそんな小海澤さんが気になり、なんとかお友達にこぎつけた雪斗。しかし天才との変わった交流を楽しむはずが、彼女の重大な秘密を共有することになり――。次元が違う彼女との、もどかしくピュアなキャンパスラブストーリー。
桐山なると先生の新刊だー! と喜び勇んで買ったはいいもののジャンル的に期待していたラブコメじゃないようなので(それくらいにデビュー作が鮮烈だったのだ、許して)ちょっと置いといたんですが、もっと早く読めばよかったと後悔! 面白かったです。
天才画家のヒロインに秘められた謎。そんな彼女と会話しようと必死になる内に自然と惹かれていく主人公。
一緒にいてはいけない理由と、一緒にいたい想いと。切なさともどかしさが爆発する素敵な恋愛ストーリーでした。この落ちはちょっと完璧すぎるぜ……。未読の人は絶対にあとがきを先に読もうとしてはいけないんだぜ……。
主人公・雪斗が所属する大学の芸術科きっての天才・小海澤さん。彼女が描いた絵を見るために芸術学部まで通っているほどのファンである雪斗は、なぜか誰ともコミュニケーションを取ろうとしない彼女のことが気になってしまう。
小海澤さんのもとに連日通う中で時々会話をしてくれるようにもなって、だんだん可愛らしい一面も顔を覗かせるようになって。少し距離が縮まったかなと思った矢先に起こる異変。
ただ単純に芸術家らしい変わり者というだけなのかと思っていたのに、まさか小海澤さんにこんな秘密が隠されていようとは! 次元がちがうってそういう意味か! いやぶっちゃけめちゃくちゃ怖い描写でしたけど。ホラーかと思った。
しかし一度この秘密が明かされると、小海澤さんに対する見方がガラッと変わるというか、一気に彼女のことが愛おしくなってきます。どうにもできない理由から孤独になって、誰にも相談できずに、ただ一人で絵を描くだけの日々。どうにかして彼女のことを理解して、一緒にいてあげたくなってしまう……。
小海澤さんには、雪斗のことを避ける立派な理由があって。でも雪斗の方にも、小海澤さんに会いにいくだけの大きな想いがあって。
お互いにお互いのことが大切だからこそどうしようもなくすれ違う切なさ。でも小海澤さんの唯一の誤算は、雪斗の思いもかけない押しの強さでした。
いやめっちゃグイグイ行きますやん! 優男に見えてやるときゃやるんだなあ。でもこれくらい押していかないとね、小海澤さんの心の殻をこじ開けることはできないよね。
気持ちが伝わるようにはなっても、どうしても会話ができない時間は生まれてしまう。それはやっぱり切ないし悲しい。でも雪斗は小海澤さんのことを分かっているし、小海澤さんは雪斗のことを分かっている。それだけのことがひどく嬉しいし、ずっと一人だった小海澤さんにとっては奇跡みたいなことであるはず。
だからこそ。雪斗のことを大切に思うからこその決断。誰よりも一緒にいたい人だからこそ一緒にいられないって、運命ってなんて残酷なの……。
切なすぎる別れからの、ラストまでの展開は素晴らしかったです。最後の最後に明かされた小海澤さんの絵に込められた謎には完全にやられた。だめだ小海澤さん可愛すぎる。にやけちゃう。まだまだハードルも多いけれど、この微笑ましい二人の行く末に幸せな未来が待っているといい。そう願います。
イラストはヤマウチシズさん。髪の毛ばっさばさの小海澤さんがとても可愛い。
第六章扉の小海澤さんが特に可愛い。
ごんごんじー(やっぱり怖い)。
『好きラノ』2018年上期に投票します
lightnovel.jp
投票します。
いつも通り新作優先なんですがどうしても入れたい完結作品があったので新作:既存=9:1で。
【新作】
『オタギャルの相原さんは誰にでも優しい』(MF文庫J)
【18上期ラノベ投票/9784040699547】
- 作者: 葉村哲,あゆま紗由
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/06/25
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る
感想↓
『オタギャルの相原さんは誰にでも優しい』感想 - まだまだペンキぬりたて
『西野 〜学内カースト最下位にして異能世界最強の少年〜』(MF文庫J)
【18上期ラノベ投票/9784040698595】
西野 ~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~ (MF文庫J)
- 作者: ぶんころり,またのんき▼
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/04/25
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (2件) を見る
感想↓
『西野 ~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~』感想 - まだまだペンキぬりたて
『西野 ~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~ 2』感想 - まだまだペンキぬりたて
『三角の距離は限りないゼロ』(電撃文庫)
【18上期ラノベ投票/9784048938297】
- 作者: 岬鷺宮,Hiten
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/05/10
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (4件) を見る
感想↓
『三角の距離は限りないゼロ』感想 - まだまだペンキぬりたて
『錆喰いビスコ』(電撃文庫)
【18上期ラノベ投票/9784048936163】
- 作者: 瘤久保慎司,赤岸K,mocha
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/03/10
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (2件) を見る
感想↓
『錆喰いビスコ』感想 - まだまだペンキぬりたて
『恋してるひまがあるならガチャ回せ!』(電撃文庫)
【18上期ラノベ投票/9784048936859】
- 作者: 杉井光,橘由宇
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/03/10
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログを見る
感想↓
『恋してるひまがあるならガチャ回せ!』感想 - まだまだペンキぬりたて
『恋してるひまがあるならガチャ回せ!2』感想 - まだまだペンキぬりたて
『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』(スニーカー文庫)
【18上期ラノベ投票/9784041064757】
- 作者: しめさば,ぶーた
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/02/01
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (3件) を見る
感想↓
『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』感想 - まだまだペンキぬりたて
『裏方キャラの青木くんがラブコメを制すまで。』(講談社ラノベ文庫)
【18上期ラノベ投票/9784041068144】
裏方キャラの青木くんがラブコメを制すまで。 (角川スニーカー文庫)
- 作者: うさぎやすぽん,前屋進
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/03/01
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る
感想↓
『裏方キャラの青木くんがラブコメを制すまで。』感想 - まだまだペンキぬりたて
『エートスの窓から見上げる空 老人と女子高生』(ファミ通文庫)
【18上期ラノベ投票/9784047349605】
エートスの窓から見上げる空 老人と女子高生 (ファミ通文庫)
- 作者: かめのまぶた,エナミカツミ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/02/28
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (3件) を見る
感想↓
『エートスの窓から見上げる空 老人と女子高生』感想 - まだまだペンキぬりたて
『オミサワさんは次元がちがう』(ファミ通文庫)
【18上期ラノベ投票/9784047350564】
- 作者: 桐山なると,ヤマウチシズ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/03/30
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (3件) を見る
感想↓
『オミサワさんは次元がちがう』感想 - まだまだペンキぬりたて
【既存】
『変態王子と笑わない猫。12』(MF文庫J)
【18上期ラノベ投票/9784040691824】
- 作者: さがら総,カントク
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/03/24
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (2件) を見る
感想↓
『変態王子と笑わない猫。12』感想 - まだまだペンキぬりたて
以上!
『いずれキミにくれてやるスーパーノヴァ』感想
いずれキミにくれてやるスーパーノヴァ (角川スニーカー文庫)
- 作者: 零真似,Aちき
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/03/01
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログを見る
ストーリー
他星のお姫様を自称する「スピカ」とのトランシーバーを使った会話だけを楽しみに生きる高校生のイズミ。彼の日常はスピカが地球に「墜落」したことで一変した。その日から自転車や人は空を飛び、スピカはイズミの妹だと認識された。改変された世界と甘えてくるスピカを戸惑いつつも受け入れたイズミだったが、今度はスピカを狙う別の宇宙人が現れ――「おまえは『この星』にいていいんだ」宇宙人と「妹」を巡る、青春ファンタジー。
圧倒的オーラのあるタイトルに惹かれて。
空から落ちてきた女の子によって改変された世界で、弱くてだめだめになってしまった「僕」が妹を守るためにまた立ち上がる青春SFストーリー。
台詞や文章のそこかしこからロマンティックが溢れて止まらない……これがポエムライトノベル作家の本気……!
毎日深夜10分だけ、1万光年先のトロイメライ星のお姫様・スピカとトランシーバーで交信するイズミ。
もちろんイズミも高校生なので、本当にそれが宇宙との交信であるはずがなく、相手も銀色の髪のお姫様じゃないことなんて百も承知なんだけれど、そんなつまらない常識なんてどうでもよくなってくるくらいに素敵な場面が描きだされています。
日常に疲れきってしまった少年の、10分間の美しい妄想と逃避の時間。この時間だけはイズミは間違いなくエレメンタル第三惑星地球のイズミで、相手はストラト星雲第七惑星トロイメライのスピカだ。それはこの二人にとっては絶対の現実なんだと、そう思わせてくれる。
でも、そんなスピカがイズミに「会いたい」と言いだしてしまったら。壊れてしまう大切な時間を惜しみつつ待ち合わせ場所に向かったイズミは、スピカが本当に空の上からやってくるのを目にするのです……。
スピカの力・ノヴァによって世界は改変され、自転車は空を飛ぶようになり、スピカはイズミの妹になった。確かなものが何もなくなってしまった世界でただひとつイズミのことを繋ぎとめるのは、スピカの存在だけ。
元々のスピカとはどうも性格も違うようだし、何かと厄介ごとを持ち込んでくる女の子だけれど、スピカにとってもイズミの存在は唯一で、だから当たり前に守ってやらなくてはならなくて。妹が不安げな顔をしていたら、もちろん兄は優しく頭を撫でてやらなきゃいけない。そういうもんなんだ。
幼なじみの小鳥への引け目から、自分の弱さを感じて、誰も守れなくなっていたイズミ。図らずも妹ができて、守るべき相手ができたことで、また前に進むことができるようになりました。まさに運命的な出会いというかね。ずっと彼のことを近くで見守ってきた小鳥からすれば、嬉しいような切ないような、かもしれませんが。
スピカの身に迫る危機。犯人の切実な動機と、イズミとの間にあった思わぬ過去と。
相変わらず弱っちくて助けがなければなんにもできない「僕」かもしれないけれど。自分の意志で決断して、倒れてもまた立ち上がって、キミに手を伸ばす。陳腐で情けなくて、でもちょっぴりカッコいい、まっすぐな主人公像が良かったです。
スピカと小鳥と、それからスミレと。3人の女の子たちとの奇妙に捻れた関係が今後どんな風に移り変わってゆき、そしてイズミはどんな選択をするのか。2巻以降も続いてくれると嬉しいです。
イラストはAちきさん。表紙のスピカの透明感たるや!
それにしてもP224のイラストには驚かされました……!
「渋々わかった」って口癖使っていきたい。