まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

踊り場姫コンチェルト

ストーリー
全国大会を目指して、県立伊佐美高校吹奏楽部に入部した梶浦康規。
真面目な演奏しか取りえがない康規は、なぜか一年先輩の女子生徒・藤野楡の指導を命じられる。
「踊り場姫」の異名を持つ彼女は、天才的な音楽の才能を持ちながらも破滅的な指揮を振り続ける問題児で……。



高校の吹奏楽部に入学した主人公が、天才なのに指揮者としては壊滅的なひとつ先輩の女の子を生まれ変わらせていく青春音楽ストーリー。
高校生ながら天才的な作曲家、でも指揮が自由すぎて誰もついていけない、そんな自由人な先輩ヒロインが、あることをきっかけにして主人公だけに妙に懐いてくるのが実に可愛い!
指揮者と演奏者、ステージの上では離れていても、目と目で伝え合う気持ちがある……きゅんきゅんしちゃうね。


高校に入学した主人公・康規は、今年は全国大会を目指すという吹奏楽部に入部。しかしその吹奏楽部は、ひとりの天才によって振り回されまくっていた!
高校生ながら作曲家として天才的な才能を見せる二年生・藤野楡。彼女の作った曲を自由曲に据えたはいいけれど、指揮者になった楡が自由すぎて全く演奏にならない。
そこで、演奏が安定しすぎて堅いと言われる康規が、楡の自由さに影響を与えるようにと指導係に大抜擢されるのです……。
楡は天才肌の自由人を地で行くヒロインですね。別に他人を遠ざけたりしているわけではないのだけれど、自分の才能が発揮される音楽の場においてだけは、どこまでも自分勝手で孤高です。
それなら別の指揮者を立てればいいんじゃないかと思うけれど、本気で全国大会を目指すならばこの才能を眠らせておく道理はない。コンクールへの練習期間も無限ではない中、吹奏楽部員たちの苦悩がしのばれます。


楡の才能には遠く及ばないものの、実は同じく作曲をしていた康規。それを楡に知られたことがきっかけとなり、彼女から一気に興味を持たれる存在になりました。
気まぐれな猫が急に懐きだすみたいですけど、しかし可愛いですねこの先輩! 先輩ってのがまたいいんだなあ。年上なのに頭を撫でたくなる感じ。
家にやってきて未熟な曲を好きだと言ってくれたり、自分のお気に入りの場所を特別に教えてくれたり。先輩の美少女からいきなりこんなに親密にこられたら、思春期男子なんてイチコロですよ!
そしてそんな近い関係になったからこそ、彼女が変われることを信じたいという思いも人一倍強くなる。
もうギリギリだ、時間がない、指揮者を変えよう……そんな意見が部内で噴出する中、楡を変えてみせると言い放った康規はなかなか格好良かったです。
自分が無理矢理矯正することで、楡の才能を潰してしまうんじゃないかという不安もある。それでも、一度ぶつかってみなければ何も始まらない。
楡の音楽をもっと人々に広めたいという康規の強い思いが、彼女を変えます。音楽を愛し、音楽に愛された楡。でもそれは、楡には音楽しかなかったということでもあって……。その音楽への大切な思いも、ふたり一緒なら。君のためになら。
ラストの演奏シーンは、互いに目と目を合わせるふたりの姿がまるで恋人同士のようで、ドキドキしてしまいました。お話は綺麗に終わっているのですが、ここまできたら、せっかくなら続編も読みたいです! 幼なじみヒロイン・伽耶を交えた三角関係なんかにも期待しちゃう!


無表情系ヒロインの「ばか」ってどうしてこんなに破壊力高いの。