まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『ぼくたちのリメイク3 共通ルート終了のお知らせ』感想

ストーリー
同居人同回生の貫之を退学にさせないため同人ノベルゲーム制作をすることになったチームきたやま。そして奇しくも十年後の自分と向き合うことになった僕、橋場恭也。ケーコさんの協力を得ながら、制作の立場として未来の有名クリエイターたちの指揮を取ることに。僕は未来で何度も見てきた。才能あふれる人たちが、何かしらの理由で去っていくのを。今回ばかりは絶対に失敗しない。突然の訪問者、貫之の婚約者も交え、ゲーム制作を進めていくうちに少しずつ、僕らの関係も変わっていって――。いま何かを頑張っているあなたの為にある青春リメイクストーリー、分岐点の第3巻。

シノアキとナナコ。2人のヒロインとの関係の変化にニヤニヤしつつも、どこか不穏な予感を募らせていたら、最後に爆弾が待っていました。
完成させるために妥協すること。クリエイターが直面する理想と現実と。3巻にして非常に切実な部分に切り込んできたなと感じます。
また、過去をリメイクする上で避けられない事態にも遂に直面。恭也の選択や如何に。


貫之の窮地を救うためにゲーム制作をすることになったチームきたやまのメンバー。
慣れない作業に戸惑いつつ、全員でそれぞれの才能を活かしてひとつのものを作り上げる。このワクワク感、やっぱり憧れますね。
そんな中でヒロインズとの関係にも変化が。前回シノアキとの距離が大きく縮まったわけですが、ナナコも参戦してきましたか!
いや、アレを目撃していたので、てっきり諦めるか逃げるかする方向に行くと思っていたんですけど、なかなかどうして強いですね……僕ならあの時点でハートブレイクしてそうですけどね……。
シノアキもナナコもめちゃくちゃに魅力的なヒロインなんで、これは本当に困りますわ! しかも今は期限までにゲームを作らなければならないという修羅場でもあるし。そもそも4人の共同生活の中に三角関係があるってかなりの問題なのでは……「音楽性の違いで解散」しそう……(笑)。


今回の目的は貫之の困窮を救うこと。一番大事なのは期限までに完成させ、売り上げを出すこと。
だから、切り捨てる必要がある部分があれば、そうする。それはきっと恭也が元の世界でゲームを作る中で学んでいたことで、商業的なことを考えれば当然のこと。
でも今、彼らは若くて時間に満ち溢れた大学生であり、また才能を秘めたクリエイターの卵でもある。そんな皆に、完成させるための妥協を強いることは果たして正しいことなのか。
たっぷりの時間と予算があればきっと最高のものが作れるのに、制約がそれを許してくれない。僕はクリエイターではないので、想像しかできないんですけれども。世の中のクリエイターたちは、きっとみんなこれと戦っているんだろうなあと思わせる、なかなか胸にくる内容でした。
これでいいんだと、自分に言い聞かせるように何度も繰り返す恭也のモノローグが、終盤の展開への不安を煽り……そして。
ああ、ここでもう。「リメイク」のジレンマが、こんな形で。出てしまうのですか……。そうだよなあ。そうなっちゃうよなあ。
個人的にはもっともっと、あかるくたのしいラブコメディに浸っていたかったという思いもありますが、ここからはそうもいかないかもしれません。でも、恭也の選択を、決断を、それがもたらす運命を、しっかりと見届けていきたいですね。とりあえず、とんでもないところで終わっているので次巻を早く!


無垢の塊みたいなシノアキにエロゲのシーンを解説する背徳感よ(とてもいい)。