まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

その10文字を、僕は忘れない

その10文字を、僕は忘れない (ダッシュエックス文庫)

その10文字を、僕は忘れない (ダッシュエックス文庫)

ストーリー
一日に10文字しかしゃべれない女の子・宮崎菫。
スケッチブックで筆談をする彼女は教室で浮いた存在だった。
島崎蒼はそんな菫と偶然一緒に雨宿りをしたことがきっかけで、次第に彼女に心惹かれていく……。



1日に10文字しか喋ることのできない女の子との運命的な恋を描く青春学園恋愛ストーリー。
スケッチブックで筆談する女の子とのゆったりとした恋愛模様にきゅんとする!
障害を抱えた相手との恋における思春期の少年の悩みや苦しみ、すれ違いも切実に描いていて、ぐっと胸に刺さるものがあります。


主人公・蒼が雨宿りのために飛び込んだ公園のベンチで出会ったのは、声が出ないために喋ることのできないクラスメイトの女の子・菫。
しかし彼女には、1日に10文字だけなら話せるという秘密があったのです……。
いやー、菫、可愛いですね。筆談だから自然と彼女との会話はスローペースになるのだけれど、一生懸命に思いを伝えようとするその姿にぐっと来ちゃいます。
筆談の相手とお喋りするのが大変だから、クラスメイトは彼女に寄りつかないということでしたが、それが気になる女の子となると、ふたりだけでゆったりと過ごすその時間がまた特別に思えたりして。
また、1日に10文字という貴重な言葉を、自分のために使ってくれたりするんだからもうたまりません。


晴れて想いを伝え合い、いつも一緒に過ごしながらも、蒼の心につきまとうやりどころのない不安。
自分の気持ちは、恋人へ向ける愛情なのか? もしかして、庇護欲やボランティア精神から来るものではないのか?
さらには菫の蒼への気持ちも、たまたま自分があのベンチで出会ったから、自分を選んでくれただけではないのか?
こういうバカみたいな考え、バカみたいだと分かっていてもやめられない思い、なんとなく理解できてしまいますね……。今、蒼が菫のことを好きで、菫も蒼のことを好きだということに、間違いはないのにね。
思えば最初から、幸せで楽しい日々の中に、少しずつ歪な関係が見え隠れしていたような気もします。全て終わってから本当のことに気付くというのも、まったくバカな話ですけどね。青春してるなあ……。
もちろん、最後はこういった形になりますよね。菫のラストの10文字は、ストレートだけれどそれだけに染みました。ああ、いいもん読んだ。


イラストははねことさん。この表紙力の高さよ!
なんていい匂いがしそうな女の子なんだ……。


お手製のタマゴサンドを無理矢理食べさせてくるクラスメイトの女の子が欲しかった。