まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

四百二十連敗ガール

四百二十連敗ガール (ファミ通文庫)

四百二十連敗ガール (ファミ通文庫)

ストーリー
全国から超絶美少女が集められた『聖シンデレラ学園』に、希少な男子として合格を果たした石蕗ハル。
しかし、入学早々『蟯虫齧り虫』という蔑称を付けられたハルは、全校の女子生徒の嫌われ者となってしまう。
そんなある日、手紙で呼び出され、最上級の美少女からいきなり告白されるハルだったが……。



第14回えんため大賞<大賞>受賞作品。
美少女だらけの学園で、ゴミのように嫌われている少年が、凶暴ヒロインに脅されながらとにかく女の子にフラれまくるラブコメディです。
面白かった! 最初から最後まで、ゲラゲラ笑いながら読みました。
『一ページ、一笑い』が公約とのことですが、いやいや、本当にそれに近いペースで笑ったかもしれません。はあ、顎が疲れた。
なんというか、お上品な笑いではないということは分かっているのですけれど、それでも笑わずにはいられないのです。ジャンクフード大好きなもんで。


何が凄いってまずこのメインヒロインですよね。毒空木美也子なるこの少女。もの凄いぶっ飛びっぷり。
殴る蹴る罵倒するは基本、好きな男をどこまでも振り回して、めちゃくちゃな結末を運んでくる凶悪さ。
毒空木の協力を得ながらハルが次々にフラれていくというこのお話においては、彼女こそがストーリーの全てを握っているといっても過言ではありません。もはや、毒空木というキャラクターを生み出した時点で大勝利ですよね。
しかし、これだけ嫌われそうなことをやっているのに、ところどころで思わぬ可愛さを見せてくるもんだから、ずるい。
最初からハルに好きだと告げているのにも関わらず、(フラれること前提とはいえ)他の女の子への告白に協力しようとする健気さがいいですよね。
ハルからの不意打ちでデレデレになってしまうところも最高。誰が何と言おうと可愛いは正義なのだなあということを改めて感じさせてくれる女の子だと思います。


可愛い女の子が出てきては、毒空木が暴走して、ハルの恋が散ってゆく。
あまりにあっさりと女の子が退場していくもんですから、もったいないという気持ちも多少ながらあるのですが、毒空木がいるならそれでいいかとも。愛結のようなパターンもあるようですし。
それにしてもハルは、少なくとも鯉川さんや吹子さんの回に関しては、なかなかに不憫ですね。本人に問題がないかといえば決してそんなことはないので、あまり同情はできないのですけどね。もう少しこう、欲望を抑えこむ努力とかできないもんでしょうかね。無理か。男の子だもんな。
愛結に関しては、ハルよりもむしろ、毒空木とのやりとりにほっこりしました。目立った特徴がないとか言われていましたが、学園中から嫌われているハルや毒空木と普通に会話ができて、友達にまでなれてしまえる彼女は、人間的な魅力に満ちた女の子ですよね。
まあ少し、いやだいぶ、かなり、下手したら毒空木並に、ぶっ飛んでいることも確かですけれども……。


「デレ園全告ツアー」はまだ始まったばかり。さあ、次はどんな女の子が出てくるのでしょうか。
今回はとにかくギャグで飛ばしてくれたという印象だけれど、これからはだんだん恋愛の方も絡んでくるのかな?
ハルが毒空木に落とされる日はまだまだ先のような気もしますが、少しくらいは、ニヤニヤさせてくれる場面なんか期待しちゃってもいいんじゃないかと思います。
ともあれ、次巻もこの勢いで突き抜けていってもらいたいですね。楽しみです。


イラストは七桃りおさん。ふわふわの、柔らかそうな絵柄が女の子の可愛さを引き立ててくれるイラストでした。
でもあの見開きは怖かったです! ギャグなのにホラーすぎる!


むしろ入学式のハルが退学にならなかったのが不思議。