『ミニチュア緒花は毒がある。』感想
- 作者: 岩田洋季,鈴城敦
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/02/10
- メディア: 文庫
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ストーリー
とある事件で友達ゼロの俺が入部させられたのは、変人の巣窟「きょうがく部」。こんな部にいたら、さらに友達作りとは無縁になる、と焦る俺だったが――
「好きです、俺と付き合ってください」
「い、いい、いきなりなに言ってんの、会ってすぐ発情とかあんた下半身に脳みそついてるわけ――!?」
目つきも言葉も凶悪な、毒舌美少女、“ミニチュア毒花”こと毒嶋緒花と出会った瞬間、俺は雷に撃たれていた。
愛のささやきVS罵詈雑言。照れさせるか、心をへし折るか――。これは、一目惚れした毒舌少女に殺されながらも、全身全霊をかけて、恋に落とす戦いの記録である。
地味に初めて岩田洋季先生の作品を読んだ気がする……『護くん』のアニメ、見てたなあ。
ということで岩田先生の新作は、毒舌を撒き散らす美少女に一目惚れした少年が浴びせられる罵詈雑言にもめげずに好き好き言いまくる、毒舌とラブコールの正面衝突学園ラブコメ。
毒舌が過ぎて学園中から恐れられる猛毒美少女を前にして、相手を照れされるべく言葉の限りを尽くす愛に全力な主人公がこっ恥ずかしくも清々しくていい!
終盤の展開は少々予想外の方向に胸が痛みましたが、小出しにしてきた伏線を綺麗に回収していてお見事。
昨年ある事件を起こしてぼっちになった主人公・薫が入部させられたのは、学園の特級問題児たちが揃う「きょうがく部」こと協調性獲得部。そこで彼は電撃的な一目惚れに落ちる……!
お相手は、目が合った人間には毒舌をかます狂犬のような美少女・緒花。まあ美少女ですからね、好きになるのはいいとして、他の部員や先生もいるその場ですぐに告白しちゃう猪突猛進ぶりがすごい。でもいいなあ。これくらい直感で「好き!」ってなるような恋。青春まっしぐらだなあ。
普段は学園中の生徒たちから避けられている彼女がこんな直球ストレートデッドボールみたいな告白をまともに受け止められるはずもなく、ご自慢の毒舌マシンガンで返そうとするのだけれど、薫はめげないどころか更なるラブコールで畳み掛けてくる。メンタルつえーなこの主人公!
挙げ句の果てには緒花をちょっとだけ照れさせることに成功しちゃうんだから大したもんですよ。押しまくるってやっぱり大事なんだな……むしろ意外と緒花がチョロかったということもありますが。毒舌チョロヒロインかわいい……毒舌チョロヒロインかわいくない?
薫は緒花を照れさせまくって落とすために。緒花は薫のハートを打ち砕くために。毒舌とラブコールの応酬を交わしつつの日常の中で、なんだかんだちゃんと親睦を深めていく「きょうがく部」の面々。
というか学人も姫子も、確かに扱いづらいかもしれないけれども結構いいやつで、薫と緒花の丁々発止のやりとりを生暖かく見守る学人と姫子、という構図が様式美になっていて面白いですね。それどころかだんだんと他の生徒たちにまで噂が広がっていって、順調に緒花の外堀が埋まっていくのが見える……(笑)。
このまま押されまくった緒花が愛を受け入れてハッピーエンド……という順風満帆な展開には、しかしならなくて。
思わぬところから発せられた悪意の噴出が、緒花のことを襲います。
愛する緒花のために無茶をするのはもちろん我らが主人公。過去に秘められた悲劇。起こした事件の真相。あっけらかんと愛を語ってばかりいた薫の中には実は予想外に重いものがうずくまっていて、そんな全てを赤裸々に語る彼の姿にぐっとくるものがありました。
正直なこと言いますと、僕がラブコメというものに求めているものではなかったけれども……なんか色々考えさせられちゃうし……ただ、薫と緒花の出会いがより運命的なものだったということを改めて強く感じさせられる出来事でした。
大きな壁を乗り越えて、関係性はちょっとだけ進んで、さあ、また毒舌とラブコールの戦いの日々へ。薫と緒花のやりとりだけでも本当に楽しいので、ぜひ続きが読みたいですね。
イラストは鈴城敦さん。表紙の緒花、小悪魔的かわいさでいいですなあ。
学人のイラストがなかったのが惜しい。あとエリカ先生の噂のおっぱいもぜひ(欲望に忠実)。
やっぱり自分をあだ名で呼ぶJKは地雷だったんだ……。