まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『処刑少女の生きる道 ―そして、彼女は甦る―』感想

処刑少女の生きる道(バージンロード) ―そして、彼女は甦る― (GA文庫)

ストーリー
この世界には、異世界の日本から『迷い人』がやってくる。だが、過去に迷い人の暴走が原因で世界的な大災害が起きたため、彼らは見つけ次第『処刑人』が殺す必要があった。そんななか、処刑人のメノウは、迷い人の少女アカリと出会う。躊躇なく冷徹に任務を遂行するメノウ。しかし、確実に殺したはずのアカリは、なぜか平然と復活してしまう。途方にくれたメノウは、不死身のアカリを殺しきる方法を探すため、彼女を騙してともに旅立つのだが……
「メノウちゃーん。行こ!」
「……はいはい。わかったわよ」
妙に懐いてくるアカリを前に、メノウの心は少しずつ揺らぎはじめる。
GA文庫大賞、7年ぶりの《大賞》作品!
――これは、彼女が彼女を殺すための物語。

殺して殺されて、共に歩む
第11回GA文庫大賞〈大賞〉受賞作品。発売時にリアルタイムで買ってからずっと積んでしまっていたのですが、アニメの放送も始まったということで読みました。
世界を滅ぼす可能性のある異世界人を処刑するために暗躍する少女が、殺しても復活してしまう処刑対象の少女と出会い、彼女を殺すために共に旅をするダークファンタジー
異世界に召喚された時点で処刑の対象とされてしまう殺伐とした世界で、自らを悪人と断じながら淡々と処刑をこなして生きる主人公メノウの生き様が切なくて、どうか救いをと願わずにはいられない物語でした。
底抜けに明るくて距離感が近いだけの少女アカリに隠された秘密が明かされたときのゾクゾク感がすごい! 納得の大賞作です。


日本から召喚された異世界人が得てしまう異能の暴走を防ぐべく、教会の暗部の処刑執行人として働く少女メノウ。そんな彼女があるとき処刑しそこねたのは、【時】の能力をその身に宿した少女アカリ。処刑対象に入れ込まないよう、普段はできるだけ相手との接触を抑えて暗殺するメノウだけれど、アカリを殺すことができる場所へ連れていくために彼女としばらく旅をすることに。
アカリに疑いを持たせないように表面上は友好的な顔をしつつも裏では彼女の命を奪うために行動しているメノウと、純粋にメノウのことを信頼して彼女と仲良くしようと積極的なアカリのコンビがとてもいい!
純粋に処刑の対象として見ているはずなのに無意識の内に友人みたいなことをしてしまって困惑するメノウの姿を見ていると、もしかして本当の友人関係になれるんじゃなんてことを期待してしまいそうになるのだけれどそんな簡単な話でもなくて。アカリと一緒に過ごせば過ごすほどいざ殺すときにメノウがどれだけ苦しむのかと思うと胸が痛くなってきます。片方が片方を殺すための出会い……なんて切ないんだ。
メノウとの関係性で言うと、後輩の処刑人補佐モモもいいですね。かなり一方的にかつ重い愛をメノウに捧げる女の子なんですが、メノウ以外の世界は全部壊れてもいいという厄介なくらいの思いの強さを、先輩らしい包容力で包み込むメノウのお姉ちゃん感が好きです。


アカリを殺すために彼女を連れていくメノウ。何も知らずに付いていくアカリ。そしてメノウへの心配とアカリへの敵意を抱きつつ離れたところから二人に同道するモモ。テロリストに列車をジャックされてバトったりしつつも目的地に辿り着いた一行は衝撃の事実に直面することに。
いやあ、なんといってもアカリの真実が最高です。小動物みたいで可愛いけれど正直そんなに魅力的ではないヒロインだな、と思っていたところでこう来られたので頭を抱えました。めっちゃ好き。
結局、一番何も分かっていないのはメノウなのかもしれません。この先も続く旅の中で、メノウは自分の生きる道を見つけられるのか。そしてアカリは秘めた目的を達成することができるのか。続きも早めに読みたいです。


イラストはニリツさん。妖しくて危険な少女たちを描かせたらもはや無敵に近いのでは。
お気に入りはやっぱり例の発動シーンのアカリです。


モモへのイジワル、マジで意地が悪すぎて好きすぎる。