まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『スパイ教室01 《花園》のリリィ』感想

スパイ教室01 《花園》のリリィ (ファンタジア文庫)

ストーリー
陽炎パレス・共同生活のルール。一つ、七人で協力して生活すること。一つ、外出時は本気で遊ぶこと。一つ、あらゆる手段でもって僕を倒すこと。――各国がスパイによる“影の戦争“を繰り広げる世界。任務成功率100%、しかし性格に難ありの凄腕スパイ・クラウスは、死亡率九割を超える“不可能任務”に挑む機関―灯―を創設する。しかし、選出されたメンバーは実践経験のない7人の少女たち。毒殺、トラップ、色仕掛け――任務達成のため、少女たちに残された唯一の手段は、クラウスに騙しあいで打ち勝つことだった!? 一対七のスパイ心理戦! 第32回ファンタジア大賞《大賞》作の痛快スパイファンタジー

そして少女スパイは花開く
第32回ファンタジア大賞〈大賞〉受賞作品。スパイによる「影の戦争」が繰り広げられる世界で、養成学校の落ちこぼればかりを集めた少女スパイチームの成長と挑戦を描くスパイアクション。
楽しかったー! 中二ロマンに満ちた設定の数々、メリハリのあるストーリー展開、魅力的なキャラクター陣、トリッキーな伏線回収と、実に大賞作らしい読み応えのある1冊でした。
最強スパイの教官と戦いながら少しずつ才能を開花させてゆく少女たちの姿から目が離せません。


スパイ養成学校の落ちこぼれ・リリィが突然言い渡されたのは、一流スパイでも死亡率九割超えの「不可能任務」へ挑むスパイチームへの編入。しかし集まったのは全員が落ちこぼれの少女七人。そしてその教官は、指導能力が欠如したスパイだった!
凄腕のスパイなんだけれど教官としてはまるでダメな先生・クラウスがリリィたちを育てるために取った方法は、七人で自分を襲撃させること。
なにかとポンコツなリリィを筆頭に、それぞれピーキーな能力を持ちながらもスパイとしては三流なメンバーたちが、ああでもないこうでもないと試行錯誤しながら四六時中クラウスに挑んでは敗れ去る。その中で少しずつ絆を深めあっていく日常風景は、殺伐としているようで微笑ましくて良かったです。


しかし当然ながら、微笑ましいだけではいけません。1ヶ月後には不可能任務が待ち受けているのだから。
任務達成のポイントは、なんといっても七人が持っている能力にあります。落ちこぼれではあるけれども、得意分野に限っては彼女たちは凄いものを隠し持っていたのでした。
普段はへらへらしているリリィが最初に彼女の本気を見せた瞬間なんか、ちょっと鳥肌が立ってしまいましたね。ケレン味たっぷりで、魅せ方が素晴らしい。
そんな彼女たちが命を懸けて挑む任務。舞台は敵国中枢。別行動のクラウス。七人の前に立ちはだかる最強の敵。そして明かされるトリック。
いやはや、見事の一言。まあ、カラーイラストがあるので、たぶん気づくことはできるんですけど、それにしても大胆かつ綺麗な構成ですよこれは。
全てを投じた乾坤一擲の策が導いた成果はほんのちょっぴりで、でもその少しの差が勝利をもたらすという二段構えの伏線回収劇には、もはや拍手喝采です。
任務を達成したとはいえ、まだスパイとしては未熟な少女たち。彼女らの今後の戦いが楽しみでなりません。


イラストはトマリさん。可愛さとクールが同居した絵柄が作品によくマッチしていました。
特にお気に入りの一枚はやっぱり咲き狂ったリリィ!


なお推しはエルナちゃん。