まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『ロメリア戦記 ~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~ 2』感想

ロメリア戦記 ~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~ 2 (ガガガブックス)

ストーリー
魔王ゼルギスを倒して三年後。ロメリア達は戦いを続け、たくましく成長していた。ロメリアが戦場を駆け、アルが炎の槍を振るい、レイが空を舞う。ロメリア騎士団は次々に魔王軍を打ち倒し、国内に残っていた敵を一掃していく。だが魔王軍が拠点を置くローバーンでは、特務参謀のギャミが魔王の実弟ガリオスと共に、新たに策謀を開始する……。一方、アンリ王と結婚し、王妃となり二児の母となった聖女エリザベートだったが心の休まる日はなかった。政敵であるザリア将軍がアンリ王の政務を妨害し、エリザベートの養父であるファーマイン枢機卿長は利権を貪り、王国の財政を圧迫させているのだ。彼女は二人の子供のためにも、夫であるアンリ王を全力でサポートする日々を送っていた。そんなある日、王国に新たな魔王軍襲来の急報が入る。南と東に現れた魔王軍に対処するため、アンリ王が南へ、エリザベートが東へ向かう。エリザベートが向かった東ではロメリアが魔王軍と交戦しており、二人は三年ぶりに再会する。過去の遺恨もあって再会に戸惑う二人だったが、そこへ魔王の実弟ガリオスと特務参謀ギャミの残虐な罠が襲い掛かる……!

旗を掲げよ
1巻ラストで資金調達のための港を設置するべく一歩を踏み出したロメリア。さてどのように魔族を排除し、港を作ってゆくのかなと思いきや、知らぬ間に3年経ってるー!!
いちから軍を作っていく成り上がりっぷりを楽しみにしていたので、すでにロメリア騎士団やロメリア同盟が成り立ってしまっているのには少し拍子抜けしましたが、しかしこれはこれで。魔王軍との激戦をじっくり魅せてくれて、王国軍との思わぬ共闘や、かつてロメリアを追放したパーティメンバーとの再会も描いてくれたので、期待とは違う方向で楽しく読ませてもらいました。
特にエリザベートには驚かされましたね……こんな風に魅力的なキャラクターになるとは思いませんでしたわ。


1巻でのロメリアはほんの数十人をまとめる指揮官に過ぎませんでしたが、3年経った彼女は王国内でも有数の騎士団を率いる女傑に成長。戦記ものらしい、軍と軍との戦いをいきなり見せてくれました。
田舎の新米兵士だったアルとレイは最強の騎士になっちゃってるし、彼らを含む最初の20人がロメリア二十騎士などと呼ばれて伝説化しているのには少し笑ってしまったけれど、正直こういうのは大好きなのでめっちゃアガりました!
それにしてもロメリア。軍師的な采配で後方から敵を翻弄するタイプの将かと思いきや、最前線で旗を振って自軍の指揮を上げるジャンヌ・ダルク系だったとは。そりゃ聖女とも呼ばれますわ。ケレン味溢れる格好で軍の先頭に立ち、自軍を手腕のように動かす伯爵令嬢。うーん、あまりにも格好いいな。


突如王国内に湧いた魔王軍によって窮地に立たされたロメリア騎士団を救ったのは、まさかの王妃エリザベートでした。いやあ、彼女の活躍ぶりはまるで予想外でしたよ。てっきり最終的には、ロメリアがアンリやエリザベートを断罪する流れだと思っていたので、ここでまた一緒に戦うことになるとはね。
しかもエリザベートさん、王となった夫アンリの拙い政治を裏で調整したり、ロメリアの思惑を正しく言い当ててみせたり、意外すぎるほどに知的かつ有能でした。やればできるやんけ!
魔女エカテリーナと剣士呂姫も駆けつけ、王を除いたかつてのパーティが揃って、ロメリア騎士団のアルやレイたちと共に魔王軍最強の王弟と激突する戦いぶりは展開的にも描写的にも熱くて良かったです。
もちろん、激しい戦いの中で失ったものも多かったけれど……軍の柱となるロメリアと軍旗を守り抜くため、命を賭けた彼らの姿は実に立派で、ロメリアたちにも劣らず輝いていたと思います。


さて残すはアンリ王がどう出るかというところが問題だったけれど、ここでまたしても予想を裏切られました。いやはや、どこまでもお決まりの展開の裏を突いてくるものですね。作者のあとがきを読んで、少し納得してしまいましたが……。
アンリやエリザベートのことは好きではなかったけれど、終わりよければ全てよしというか、少なくとも愚かなだけの人物ではなかったなと思います。
一気にお話のスケールが大きくなったので、次巻がどうなるのか全く読めません。楽しみだ。