まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ユリシーズ ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士III

ストーリー
劇的なオルレアン奪回を果たした、モンモランシ率いるフランス軍勢。
シャルロットの女王戴冠のため、司教座都市ランスへの進軍を画策する。
そんな彼らを、イングランド軍のガーター騎士団、そしてユリス・ノワール率いる金羊毛騎士団が追撃するのだった……。



百年戦争末期を、様々な魔法や伝説といった要素を取り入れながら描ききる壮大な歴史戦記ファンタジー第3弾。
わりと、歴史戦記としてのストーリー重視で読み進めていたのですが、ここにきて各国首脳の女性陣とモンモランシとのアムール(愛)が強くお話に関わってきました。
なぜこの男がそんなにモテるのか、正直少し不思議ではありますが、ともかくその全てが、文字通り国を転覆させる恋なのです……恐ろしいものだ。


ともかくこのズッシリくる読み応えよ! 今回も非常に中身の詰まった1冊になっていましたね。
前回奇跡のオルレアン奪還を果たしたジャンヌ&モンモランシ軍。次はいよいよ、シャルロットの戴冠のために司教座都市ランスへ……。
しかし当然、イングランドはそれをよしとするはずもなく、誉れ高きガーター騎士団と姫騎士ファストルフを差し向けてきます。そしてイングランドと密約を交わしたブルゴーニュも、ユリス・ノワールとなったフィリップが新興の金羊毛騎士団を率いて援軍に。
決戦の地はパテー。こちらのユリスはジャンヌとラ・イルのみ。そして敵側にはユリス・ノワールと、聖杯の加護を受けた騎士団31人という圧倒的戦力。
ジャンヌたちも奮戦するものの、この状況を引っくり返すことができるのはもはやただひとり……追放処分を受けた最強の騎士・リッシュモンその人だけ!
ということで、ジャンヌとモンモランシを救うため、ある伝説の剣を引っさげて戦場に彼女が舞い降りた時は、思わずゾクッときてしまいました。何かと不遇な人生を送ってきた彼女ですが、こういうところで出てきてくれるんだなあ。ヒーローだなあ。
ところで、読み終わった後で「パテーの戦い」を調べてみたら、予想以上に史実に基づいている部分が多くて驚きます。賢者の石だの伝説の剣だのをさんざん出しておいて、よくもここまで忠実に描けるものだ……相変わらずの力技っぷりに感心してしまいますね。


ジャンヌを筆頭に、リッシュモン、フィリップ、そしてシャルロットの胸にあるアムールの相手は、他ならぬモンモランシでした。
思えばフィリップがジャンヌを狙うのも、リッシュモンが暴走してしまうのも、全てはこのアムールのせいだった……。
ああまったく、恋というものはどこまでも人を狂わせる。アルチュール王と騎士ランスロの伝説のように。
何より、モンモランシとの絆を何より大事にしてきたジャンヌが、どんどん精神を病んでいくようなのが見ていて大変に辛い。。
挙句の果てには、遅れてきたシャルロットの参戦を機に、このようなことに……。史実では、この後ジャンヌは悲劇的な運命を辿ることになるのですが、このまま史実の通りに、どこまでも彼女が落ちていきそうで……。
表面上では、ハッピーエンドでもよいくらいのフランス軍の快進撃だけれど、今後の展開が不安で仕方ない。早く続きが読みたい……けれど、先生、お身体だけはくれぐれもお大事になさってください。いくらでも待ちますから。


ラ・トレムイユがどんどん憎たらしさを増してゆく。