まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ダメ魔騎士の英雄煌路

ストーリー
騎士国家センタリアの下級魔騎士アルフは、仕事には毎日遅刻&サボり、模擬試合でも全敗するなど、ダメ魔騎士として名を馳せていた。
そんな中、亡き両親の思い出の詰まった自宅が出火したことで、家の再建のために武闘大会『騎士祭典』での優勝を目指す。
ところが、アルフの戦い方は騎士の風上にも置けないような卑怯なものばかりで……。



第11回MF文庫J新人賞<佳作>受賞作品。サボり魔、やる気なし、ぐうたら騎士の主人公と、彼を更生しようと奮闘する幼なじみのお姫様が織りなすバトルファンタジー。
面白かったです。ダメダメ主人公がやっとやる気を出したかと思ったら、今度は真正面から卑怯な道に走っていくんだから驚きました。あれ、わりと本気でダメな主人公かもしれない……。
苦言を呈しつつなんだかんだで世話を焼いてしまうお姫様が可愛かったです。あとブラコン妹!


主人公のアルフは、人々を守るべき魔騎士であり。国を救った英雄の息子でありながら、仕事はサボり、家では妹に介護され、とどこまでもぐうたらな生活を送るダメ青年。
そんなダメっぷりの一方で、街の人々とは親しみをもって接するなど、それなりにいいところも見せていたのですが……今はなき父と母の思い出が詰まった家が燃えてしまったことで、彼のスタンスは一変します。
優勝すれば近衛魔騎士になれる「騎士祭典」での戦いぶりときたら、ルールのギリギリの穴を突いた卑怯すぎるものでした。てっきり、実は隠し持っていた力とかを発揮して格好良く決めてくれるものと思っていたのに、まともに剣を振らずに勝ち続けるんだから唖然ですよ!
まあ、体質的に魔術も使えず、訓練をしていないから剣も下手ときたら、こういうやり方しか残っていないのは分かりますけどね。それに、これだけのことをやってでも、自分にできる最強の方法で目的を達成しようとするあたりには、彼なりの熱さを感じました。
現に勝てているわけですから、真正面から卑怯に突き進む……そんなやり方さえも、だんだん格好良く見えてきた、かも? ダメなことには違いありませんが!


メインヒロインのフィリーネは、お姫様にしてアルフとは幼なじみの少女です。「騎士祭典」でのアルフの姿に怒りまくって、姫様直々に彼を更生しようとしては、ひとりで空回りする姿が愛らしくてたまりません。
とっても真面目で素直ないい子なんですけど、アルフや国王である兄などと比べてまっすぐすぎるから、ちょっと幼稚な面なんかも結構あって、そこがまた可愛い。
それから、兄・アルフを介護することを至上の幸せと感じている超ブラコンな妹・アンリに、アルフの師匠となるミステリアスな「法術」の使い手・ウィン、厳格な魔騎士隊隊長のガイスト、きっぷの良いパン屋の女店主・エルゼなど、脇を固めるキャラクター陣も個性豊かで魅力的な面々ばかりでした。
ときに、彼女らのような人々の力を借り、ときに、その人々の裏をかき、とても正統派とはいえない戦い方ながら、国の危機に立ち向かっていくアルフ。
まっとうな英雄像ではないかもしれませんが、彼なりに演じられる精一杯の英雄の道を行き始めたダメ魔騎士の今後を見守っていきたいものです。とりあえずは、既に公認になりつつあるフィリーネとの愛をたっぷり育んでいただく方向で! 期待しています!


イラストは山本ケイジさん。雰囲気のある表紙イラストに一目惚れしました。
四コマ漫画はぜひ継続してほしいです!


父親世代の外伝も読んでみたいかも。