まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『ロメリア戦記 ~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~』感想

ロメリア戦記 ~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~ (ガガガブックス)

ストーリー
「ロメリア伯爵令嬢。君との婚約を破棄する」
アンリ王子がそう宣言したのは、魔王を倒した直後だった。王子の側には聖女エリザベート、帰らずの森の賢者エカテリーナ、東方の女剣士呂姫が並び立ち、「役立たず」と弾劾の指を向ける。だが王子達は知らなかった。ロメリアには幸運を授ける『恩寵』と呼ばれる奇跡の力があることを。婚約者を失い、仲間からも見捨てられたロメリアだが、彼女はくじけなかった。祖国にはいまだ魔王軍がはびこり、魔族に囚われ奴隷となった人たちがいたからだ。彼らを救うため、行動を開始したロメリアの前に数々の困難が立ちはだかる。まず軍隊が手元にない。傷を治す癒し手もいない。資金が無い。しかしロメリアは、全ての問題をアグレッシブに解決していく。
「軍隊がない? 地方領主を脅して砦を乗っ取りましょう」
「傷を治す癒し手がいない? 教会と話をつけて融通してもらいましょう」
「お金がない? 商人たちと商談して、資金を出させましょう」
「手に入れた兵隊が新兵ばかりで使い物にならない? 魔物を退治して経験を積ませましょう」
そして――ロメリアは忠誠を誓う者たちとともに、いま出陣する!

魔王討伐直後に王子から婚約破棄されてパーティを追い出された伯爵令嬢が、辺境の地で魔王軍残党を打ち倒すべく軍隊を立ち上げる戦記ファンタジー
なかなかよかった! 『恩寵』なる幸運アップ能力しか持たない主人公が自らの力で軍を立ち上げ、資金繰りをし、人を集め、少しずつ成り上がっていく姿にワクワクします。
まだストーリーは序盤だし、愉快痛快というよりはどちらかといえば泥臭いお話ですが、ここから力を付けたロメリア軍がどのように羽ばたいてくれるのか期待を持たせてくれますね。


魔族の大陸のど真ん中で魔王の暗殺に成功した王子パーティ一行だけれど、それからの彼らの行動を少し見ただけでロメリア以外のメンバーの愚かさが明らかに。絵に描いたようなアホ王子と取り巻き3人という感じで、ロメリアはよくこのパーティについていけたなと呆れてしまうくらい。
特に、王子の考えなしの行動のせいで犠牲になった奴隷の親子には胸が痛みました。魔王討伐直後にいきなり悲劇が挟まれたので驚きましたが、まだ魔族との戦いは終わっていないのだという緊張感と、ロメリアの決意をより際立たせてくれますね。
彼らと袂を分けたことはロメリアにとっても間違いなくプラスだとは思いますが、王子と婚約破棄したことで世間からの目は厳しいものに。そしてロメリアは自ら辺境の地へと赴くことになるのでした。


ロメリアは抜群に賢いわけでも強いわけでもないのだけれど、意志の強さや度胸、交渉力と運営能力があるようです。砦の代官と「交渉」して手駒の兵士を手にしてから、最終的には代官を逮捕し、商会から資金を出してもらい、一方で自ら兵士を率いて魔族を討伐していく。地道ではありつつ、しかし着実にロメリアが求める軍隊のために突き進んでいく若き伯爵令嬢の姿は見ていて気持ちいいですね。
アルやレイといった最初の兵士たちが戦いの中で成長していくのもアツい。アルは将として、レイは参謀として、さらなる飛躍を遂げてくれる予感がします。


とりあえずの目標は金鉱山と港の設営ですが、一方で中央では王国軍と魔族軍の衝突が起きている様子。王子や聖女のことはわりとどうでもいいけれど、その余波がロメリアたちに襲いかかってしまうのかどうかが気がかりなところ。軌道に乗りはじめたところに水を差されなければよいのだけれど。とりあえず続きもすぐに読みます。