まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『死呪の大陸』感想

死呪の大陸 (MF文庫J)

ストーリー
毎日が平穏だった。温かくて、優しくて……でも刺激が、足りなくて。何者かになりたかった。自分にしか出来ないことをしたかった。だから願った。その結果、何が起こるかも知らないで。
《死道標》と《死予言》二つは対となり死呪を完成させる。憧れていた大陸は、そんな死呪に満たされていたのだ。
かつて神の罠に嵌り、全てを奪われた少年・シキ。暗殺者として影の世界に生きるシキの日常は、外見だけは可憐な美少女・エヴィルとの出会いによって変わってゆく。破天荒な彼女と目指すは《立体城塞都市レジナリオ》――この地に待つ、約束された悲劇を覆すために。

少年と少女は出会い、そして呪いは死す
抜群のオーラを放つ表紙に一目惚れして購入、読了。神から死の呪いを受けた少年が英雄の末裔である少女と出逢い、破滅の未来を突き崩すため奮戦するダークファンタジー
なかなか読み応えがあって燃える作品でした! 過酷な運命に翻弄された登場人物たちの悲しい生き様が切ない一方、底抜けに明るく破茶滅茶な美少女・エヴィルの戦いぶりは痛快で、主人公・シキとの凸凹バディっぷりが楽しくも熱い。二度三度とどんでん返しのあるストーリー展開もお見事。
しかし困ったことに、ネタバレを避けて感想を書こうとすると大きめの問題がいくつか発生するんだ……なんなら既に発生しているけど……。もう開き直って書くしかないですねこれは。


かつて滅ぼされた悪神ノル、神によって生み出される死道標と死予言、世界を荒らす死獣、人類に残された対抗策たる祝素と死素と祝素体。溢れ出す設定の数々にちょっと気後れしてしまいそうになるけれど、いざ読み出すとぐいぐい進んでいきます。なぜならそこにロマンがあるから。
神を崇拝する狂信者たちの国や、世界の中心の無法者どもで満ちた立体城塞都市、湖に沈む巨大図書館。うーんこれぞファンタジー。ファンタジーはロマン。ロマンこそファンタジー。単純に世界が楽しい。世界が楽しいファンタジーはいいファンタジーだ。
一方でストーリーは序盤からいきなりどシリアス。なんせ主人公・シキの目的は、呪いの樹となってしまった弟を殺して開放してあげることなのだから……。
さぞ暗い話が続くんだろうと思いきや、もう一人の主人公・エヴィルときたら底抜けに明るい破茶滅茶少女。彼女の存在は大きくて、このお話がシリアス一辺倒にならずにいられる大部分がエヴィルのおかげといっても過言ではないですね。突然バニーちゃんたちのえっちなお店に入ったときには「え、この流れで?」と唖然としましたけど……でもそこでの出会いが後の伏線につながったりしてくるから油断ならないな……。


シキとエヴィルを筆頭に登場人物それぞれに秘密や謎があり。思い込みの裏を突かれて「やられた!」と思ったことも二度三度。
そして主人公コンビがいい。それぞれ相手に隠していることはあっても、互いが互いの命を救おうとする気持ちは同じ。出会ったばかりの二人だけれど確かな信頼が次第に刻まれてゆくのがわかる。
毒と薬草の知識で戦う冷静な頭脳派のシキ、大きな旗をぶん回して戦う脳筋のエヴィル。まるっきりタイプが違うからこそ映えるバディ感。
この呪われた世界を、この二人が今後どんな風にぶち壊してくれるのか。大いに楽しみにしております。


イラストはNaOさん。表紙といいキャラ紹介といい、カラーページがマジで良くてヤバい(語彙力)。
可愛くて格好いいエヴィルの姿をもっともっと見せてください……。


結局お前、どっちなんだよォォォーーーーーーッ!!!!!(絶叫)