まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『魔女と猟犬』感想

魔女と猟犬 (ガガガ文庫)

ストーリー
魔術師たちを独占し超常の力をもって領土を拡大する王国アメリア。その脅威に曝された小国キャンパスフェローの領主バドは、前代未聞の奇策に出る。それは、大陸に散らばる凶悪な魔女たちを集めて対抗するというものだった――。機を同じくして、隣国レーヴェにて“鏡の魔女”が拘束されたとの報せが入る。バドは魔女の身柄を譲り受けるべく、従者を連れてレーヴェへと発つ。その中にロロはいた。通称“黒犬”と呼ばれる彼は、暗殺者として育てられた少年だった……。誰も見たことのない壮大で凶悪なダークファンタジーが幕を開ける。

守ったものと、失ったもの
カミツキレイニー先生の新作であること、ラノベ読み界隈で最近話題になっていたこと、中世魔女ものらしきあらすじ、そして何より表紙の引力に釣られて読みました。いやほんとこの表紙良すぎるな……。
そして期待どおり面白かったです! 腹に一物抱えた国のトップ同士の騙しあい、未だ殺しを知らない猟犬の少年に突きつけられる選択と覚悟、そして危険な魔女の正体と、「そう来たか!」という驚きがいくつも用意されたストーリー展開が見事。
理不尽な悪に立ち向かう高揚感があり、何より魅力あるキャラクター陣がおり、楽しく読める要素満載で満足の1冊でした。


宗教的に保護された「魔術師」を多く擁する敵国に対抗するため、絶対悪として名高い「魔女」たちを集めていく……このコンセプトにまず燃える!
主人公ロロの主バドが治めるキャンパスフェローは精強な騎士団こそ抱えているものの小国であり、魔術師たちも存在せず、他に国を守る方策がないとはいえ、禁じ手ともいえるやり方をすぐに実行に移すことのできるあたり、バドはなかなかのやり手の模様。隣国レーヴェが囚えたという魔女を譲り受けるため国の幹部陣揃って自ら赴いていく……わけですが、そう簡単にはいかないのが外交というもの。
キャンパスフェローに目的があるように、レーヴェにも彼らの目的があり。どちらが相手を騙して自分たちの目的を達成するのか、表では笑顔で、裏ではジリジリと何度も刃を交えていく……この緊張感のある戦いが楽しい。


暗殺者の家系に生まれながら人を殺めたことがないロロ。天真爛漫な姫君デリリウム。やや頭の固い騎士団長ハートランド。領主バドと、彼を取り巻く幹部たち。
個性バラバラだけれど楽しげな彼らにいきなり襲いかかる悲劇。奪われていく命。そして魔女との邂逅。
この魔女がまた、たいへんに魅力的なキャラクターで素晴らしい。悪名を馳せた魔女としての確かな力量と、それとは裏腹な一人の人間としての顔。深い悲しみを抱えながらも、奇天烈な魔術師どもを血祭りに上げていくこの不安定さがたまらない。まさに魔女だ……魔女って最高だな……。
そしてロロ。運命の岐路に立たされた彼が選ぶ自らの道のり。少年はそして真の猟犬となる。うーんアツい! これから「魔女と猟犬」がどのように世界を蹂躙してくれるのか、楽しみで仕方ありません。全ての魔女と出会うまで、どうかシリーズが続いてくれますように。


イラストはLAMさん。何度も言うけれども表紙がマジで素晴らしいですね……。この魔女の表情。エクセレント。
第三章の表題イラストも好きです。かっこいいなあ。


スノーホワイトちゃんのイラスト待ってます。