まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

フェオーリア魔法戦記 死想転生

ストーリー
死者の魂を呼び出して無限の兵器として運用する死世学者の少女、クレッシェンド・イマジナル。
彼女は死から喚び起こした最愛の幼馴染みにして最強の傭兵・トトポンとともに戦場を駆ける。
黒曜都市共和国の首都防衛戦にて、二人は一般兵から疎まれながらも一騎当千の活躍を果たすのだが……。



死者の魂を呼び戻す少女と、彼女によって不滅の死霊器兵となった少年が織りなす、死を超えて愛を叫ぶ魔法戦記ファンタジー。
いやはや、さすが旭蓑雄さん……今回も戦記ものの皮を被った別の何かを見せてくれましたね……。
あまりにも死を軽々しく扱う敵味方の中で渦巻く生と死の哲学。そして複雑怪奇な愛の姿に胸を打たれる物語でした。


死世学とは、死者の魂を呼び戻して兵士の死体や器械人形の体へと宿し、死人兵を作り上げる技術。
そして今作のヒロイン・クレスは、その死世学者たちの中でも世界最高の「死世魔法」を極めた女の子です。
自ら蘇らせた、愛する幼馴染みの少年・トトポンをはじめとした、他とは段違いの性能を誇る死霊器兵たちとともに、都市を脅かそうとする敵軍をばったばったとなぎ倒していく恐るべき少女なのです。
……とまあ、序盤こそそんな感じで、天才ヒロインと無敵主人公の無双っぷりに痺れつつ、なかなかクレスの力量を理解しようとしない軍上層部にムカムカする、正統派戦記ものとして楽しめるのですが……。
案の定といいますか、途中からお話の雰囲気は一変。生と死と愛の哲学が、次第に物語の中心に据えられていくのです……。


きっかけは、襲いくる敵軍の中にも強力な死人兵が存在するという情報。当然調査に駆りだされるクレスたち。そして明らかとなる、トトポンの過去に隠された秘密。
なんといっても、主人公・トトポンの立場が最高に切ない! 詳しくは書けませんが、この器械の体に秘められたクレスへの大きな大きな愛に圧倒されました。
自らの存在を揺るがす事実を知って、クレスの罪を知って、それでいて自分の想いよりも彼女の幸せを一番に願うことのできる彼の強さたるや。これが生も死も飲み込んだ愛の姿か……。
正直、作中の死や霊といった概念は相変わらず難解すぎ、また観念的すぎてよく分かりませんでしたが、この作品が摩訶不思議な愛の形を描いたものであるのは確かです。
クレスと「彼」のことはもちろんですが、私は何よりこれからのトトポンに、誰よりも幸あれと願わずにはいられません。
クレスから渡された贈り物が、どうか彼の世界をもっともっと広げてくれますように。彼の未来に乾杯。


イラストはニリツさん。いつもながら本当にクールかつキュートで素晴らしいイラストだ!
キャラデザではパルが一番好みです。斧をぶん回す美少女はロマン。


それにしてもクレスの服装はえっちすぎませんか。