まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『僕は君に爆弾を仕掛けたい。』感想

僕は君に爆弾を仕掛けたい。 (角川スニーカー文庫)

ストーリー
小手毬さんはとても可愛い。でもそれは見た目だけ。本性は身勝手で強引で偉そうで、ホントにろくでもない。僕の敵、だったのに。よりにもよって彼女が僕の仕掛けた爆弾を見つけるものだから、さぁ困った。きっとものすごく面倒くさいことを言い出すぞ。「犯人を引きずり出せるかどうか、賭けをしない? 私が勝ったら笹子くん、キミ私の下僕になること!」……ほらね。そのまま二人仲良く、文化祭を控えた学内で起こる怪事件に次々巻き込まれるハメに――。かまってほしい彼女と彼の、学園謎解きラブコメディ。

横暴少女と下僕の謎解きな日常
高木敦史先生がスニーカー文庫に帰ってきた! あとがきによれば前作から5年半ぶりですって。嘘だろ時の流れ早すぎ……。
未だデビュー作の衝撃が脳裏に浮かぶ中で刊行された今作は「学園謎解きラブコメディ」! しかも舞台は中学校! そうそう、まさにこういうのが読みたかったんじゃー!
はっきりとミステリーとまではいかない、わりとふんわりした謎解きものではある(ただし起きる事件は意外と殺伐としていたりする)けれども、やりたい放題のヒロインの下僕として主人公が振り回されていく構図が楽しい1作でした。小手毬さん面倒くさ可愛すぎる。


憧れの先生に対する義憤の思いから、彼女を脅迫していると思われる体育教師の車にちょっとした爆弾を仕掛けた主人公の笹子。しかしその爆弾は保健室登校の謎の少女・小手毬によって排除され、さらには絶対に犯人をおびき出すと宣言されてしまう……。
さらっと書いたけれどもこの主人公、わりととんでもない奴である。そこそこ頭が切れて実行力もある、それでいて思い込みの激しい男子中学生怖い。
まさにその「犯人」である笹子が、保健室で出会った不思議な少女のロジックによってその思い込みを打ち壊され、そして追い詰められていく第1話のゾクゾクする展開が最高でした。何考えてるか分からない女の子の手の平で転がされるのって最高に熱いシチュですよね……なんだか似たようなことを前にも思った気がするな……と考えてみたら『“菜々子”さんの戯曲』の時でした(笑)。


笹子と保健室の先生の前でだけその横暴で無茶苦茶な本性を見せるけれども、他の人の前では極端な人見知りで壁を作ってしまう小手毬。その理由のひとつに、彼女だけに見える「悪意」の怪物の存在があった。
そんな、学校に蔓延る悪意の怪物たちを抹消するため、下僕となった笹子を引き連れて夜の学校に侵入したり、生徒会の秘密を暴いたり、文化祭でとんでもない暴挙に打って出たりする小手毬。
笹子から見れば厄介ごとばかり運んでくる自分勝手な女の子……かもしれませんが、その実彼女が願っているのは笹子と一緒にいること。笹子の気を引くために事件に首を突っ込んんでいくどころか、時には自分で事件を起こしたりしているフシさえあって、まったく回りくどくて面倒くさくてはた迷惑な女の子だけれどもそんな不器用なところがめちゃくちゃ可愛いのだ! 暴走特急みたいにやりたい放題やってるようで結構失敗もするし落ち込んじゃう、そんなダメダメな面も含めて魅力的なヒロインでした。
笹子は笹子で、そんな彼女のことを言いたい放題いいつつもなんだかんだで毎日のように保健室に通っているし、口では悪口ばかりだけれど本音では小手毬のことを大切に思っている風で、こっちはこっちで不器用すぎて微笑ましい。
このニヤニヤをもっと楽しみたいのはもちろん、日常の裏に隠れた意外にも強い「悪意」に時折ゾクッとさせられる謎解きパートももっと見たいし、ぜひとも続刊を! よろしくお願いします!!


イラストは遠坂あさぎさん。毎度ながら大変魅惑的なイラストでした!
小手毬の太ももが眩しいぜ……。


ぶっちゃけますと胤森先生みたいなキャラクターが結構好きです。