呪術法律家ミカヤ
- 作者: 大桑康博,テルミン
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2016/02/25
- メディア: 文庫
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十七歳で呪術法律家の資格を取った天才少女ミカヤの初仕事は、史上最悪の暗殺者・アイスフェルドの弁護だった。
精霊呪術を通さない“精霊殺しの箱”の中で死んでいた人権活動家のサラサンテ殺害容疑で捕まったアイスフェルドだが、ミカヤには冤罪を主張するのだった。
初めは半信半疑のミカヤだったが、調査をすすめる内に思わぬ事実が明らかになっていき……。
第2回集英社ライトノベル新人賞<特別賞>受賞作品。
最凶の暗殺者にして最強の魔導師に掛けられた殺人容疑を無罪にできるのか? 密室殺人の謎を解き、巨悪の陰謀を明るみに出す裁判ファンタジー。
おお、面白かった! ファンタジーミステリーかつ裁判モノという難しい題材ながら、エンタメ度高くぐいぐい読ませてくれました。
自分の信じた道をとことん突き進む主人公がとにかく魅力的です。
ある人権活動家が、呪術を通さない、いわば対魔法シェルターの中で殺害されていた事件。その容疑者として逮捕されたのは、大陸でも最悪の暗殺者として名を馳せる男・アイスフェルドでした。
若き天才呪術法律家ミカヤは、法曹界デビューの案件に、敗北確定とまで言われたアイスフェルドの弁護を敢えてチョイス!
皮肉屋でなかなか本心を掴ませないアイスフェルドの態度にやきもきしながらも、冤罪だという彼の主張を信じ、事件を調査していくわけですが……。
なんといっても、ミカヤというキャラクターが素晴らしいですね。史上最年少で呪術法律家になった天才少女。でももちろん、デビューしたての新米だから、色々な意味で「若い」。
自分が信じた相手を信じる。そのためにはどんな努力も惜しまない。当然失敗も多いんですが、めげずに何度でも立ち上がる。どこまでもまっすぐに突き抜けていくけれど、それで結果を出す能力がある、そこがいい。
なぜか差別されている「赤毛」で、しかも新米と侮られていた彼女が、経験豊かな検事や判事を前に堂々たる言説を披露していく姿は、実に格好良かったです。
初めは心を開いてくれなかったアイスフェルドが、次第にミカヤに対して柔らかく接してくれるようになったのも、彼女の純粋さが胸のどこかに響いたから……かもしれません。
裁判所がメインの舞台ですが、それ以前に、ファンタジー世界としての物語全体の舞台設定もユニークでよかったですね。
“左へ細長い街”だとか“テラミスの鉄槌”だとか精霊呪術法だとか、妙に惹かれるワードがいっぱいで、それだけで楽しくなってきます。
そんなファンタジー世界で起きた密室殺人。対魔法シェルターの中で殺害されたのだから、シェルターを壊せるほどの魔導師が犯人だ、というのが検察側の主張であり、その主張をどう崩していくのかがミカヤの仕事。
アイスフェルドが犯人でないのなら、真犯人はどうやって被害者を殺害したのか。そしてその真犯人とは。
調べを進めるうちに次々に出てくる新事実、そしてそこから浮かび上がる大いなる真実が、何度もドキドキさせてくれました。
この1冊だけでも見事にまとまっていましたが、アイスフェルドの過去がまだ明かされていないし、何よりミカヤとアイスフェルドの今後がもっと見たくてたまらない! 続きに大期待です!
イラストはテルミンさん。漫画家さんとのことで、キャラの動きが感じられる素晴らしいイラストでした。
くるくる巻き毛のミカヤが最高に可愛い!
信さんとアンジーの過去が気になる。