まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『理想の娘なら世界最強でも可愛がってくれますか?』感想

理想の娘なら世界最強でも可愛がってくれますか? (MF文庫J)

ストーリー
白銀冬真は救世主である。――今はありふれた専業主夫だが。人類再生機構・凰花。そこは胞子獣との戦いに敗北し、地下へと追われた人類に残された最強の生存圏であり、最下層の《学園都市》では人々の唯一の希望たる《魔法騎士》が育成されていた。中でも特にエリートが集まる《第一魔法騎士学園》に冬真の娘・白銀雪奈は試験で史上最高のステータス値を記録し、最強のSランクとして入学する。戦場を離れた後、静かに成長を見守ってきた愛娘の姿に涙する冬真だったが、ある日彼に極秘の指令が下る。「娘とともに学園に通え。これは、特務指令だ」世界最強の娘と、表向き一般人の父。二人の尊い絆と、波乱の物語が始まる!

地上に追われた人類が地上を取り戻すべく果てのない戦いを繰り広げる終末世界。人類最強クラスの力を持つ魔法騎士の少女が、その彼女をも遥かに超える最強の父とともに戦いの世界へと足を踏み入れる熱くて切ないバトルアクション。
よく練られた世界設定と魅力的なキャラクター、そしてドラマチックな物語展開。さすがは三河ごーすと先生といったところか。
しかし序盤のワクワク感とは裏腹に終盤のストーリーの重さたるや……。正直続きを読むのが辛いレベルでちょっと困ってしまった。


「胞子獣」の地球の汚染によって1千万にまで数を減らしてしまった人類。地下世界に統一国家を作り上げた人類は、いつか地上を取り戻すべく終わりのない戦いに励んでいた……。
かなりシビアな世界設定の一方で、主人公の「娘」である雪奈の鮮烈な魔法騎士学園デビュー、そして初めてできた友人たちとの交流と、序盤は明るく朗らかな日常が描かれました。
人類最強レベルのSランク騎士である雪奈ですが、その一方、今まで「父」である冬真とだけ深く関わりを持ってきたために世間がよく分かっていないファザコン娘でした。
そんな彼女に初めてできた友達とライバル。孤高かつ孤独な存在だった彼女が少しずつ周囲の人々と打ち解けていく展開に、思わず冬真と同じ父親目線でほっこりしてしまう。娘っていいもんだな……。
主人公はもう立派な大人ということで(親世代、というほど年は行ってないけれども)、格好良くて魅力的な大人たちも何人か登場。
中でも、学園の理事長として登場するカチュア嬢はとてもいいヒロイン役でした! よき母親代わりであり、よき教育者であり、また恋する乙女でもある……。冬真が朴念仁すぎて空回りまくってるのが不憫なんだけれど、カチュアの方もそんな風にツンデレってないでまっすぐ気持ちをぶつけちゃえばいいのに、いい年なんだから……と思ってしまった(笑)。


友人たちと過ごす初めての放課後。初めてのお出かけ。楽しい楽しい日々。でもそんな日常は、ある時突然、粉々に破壊されてしまう。
いやあ、まあそりゃあね、こういう世界ですから、こういう出来事も起こってしまうのでしょうけれども、それにしたって不意打ちすぎるでしょ……!
や、もうほんと辛い。前半で描かれていたのがとても素敵な毎日だっただけに、余計にキツい。最初から殺伐とした雰囲気ならばまだ覚悟ができたのに、ほんとやってられない。
ドラマの仕立てとしては本当に王道展開で、まやかしの日常からシビアな戦いの世界への移り変わりを見事に描き、ストーリーを盛り上げてくれている……というのは分かる。分かるけれども、申し訳ないけれども僕はこの展開は好きではない。迫力あるバトルとか中二溢れる武装とかもはやどうでもいい。まったく好きではない。
しかし、冬真や雪奈やカチュアの決意を見届けなくてはならないという気持ちも大いにあるので、悩ましいところですが次巻も手に取ってみようと思います。願わくば全ての登場人物に幸あれ。


イラストは茨乃さん。無防備な雪奈が微笑ましくて可愛らしいですなあ。
バトルのイラストももっと見てみたいですね。


グラン・マリア様には何らかの裏の顔があってほしいよね。ね。