まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

魔法剣士のエクストラ

ストーリー
魔法が世界を満たし、大空に浮かぶ【天空母島】が人々の新たな大地となって幾年。
かつての大戦で活躍した《英雄》竜城零人は、女王の依頼で新設学園の魔導教官をすることに。
学園で勝利への意志をみなぎらせる3人の少女と出逢った零人は、彼女たちを【大魔決戦祭】の頂点へ導くことを決意するが……。



世界最強クラスの魔導士である主人公が、才能はあるものの伸び悩んでいる3人の少女の教官となって、魔導の大会での優勝を目指す育成魔法バトルファンタジー。
めちゃくちゃ面白かったです! なんとなくあらすじに惹かれて手に取ったのですが、素晴らしい掘り出し物でした。
育成・指導ものとしての熱さもさることながら、主人公の「最強」を丁寧に、かつダイナミックに描いてくれているのがとても良かったです。


主人公・零人は、魔導士等級「八芒星」を持つ超一流魔導士です。こういうクラス分けって、なんだかんだ言ってもやっぱりハートをくすぐられちゃいます。
物語の最初から一貫して描かれるのは、彼の圧倒的な才能。八芒星の魔導士というものがいかに破格の戦力を秘めているのか、すなわちこの主人公がどれだけ特別なのかということが、しっかりと伝わってきます。
そんな零人が指導教官として付くことになるのは、各々目を見張る長所を持ちながら、それを持て余している3人の少女、紗奈美、イルマ、エリサ。
零人の指導のもとでぐんぐんと成長して、お互いの長所を活かし、短所を補い、しまいには格上の魔導士と熱いバトルを繰り広げることになります。
弟子たちが戦力差を工夫と絆で乗り越えていく熱さ、これぞ育成もの、そしてチームバトルアクションの真骨頂といえるでしょう。
ちなみに今のところ零人といい感じになりそうなのは旧交のある紗奈美ですけれども、お嬢様風のイルマも、ちょっと天然っぽいエリサも、それぞれ可愛らしいところを見せてくれているので、なかなか甲乙つけがたいですね。


さて、学園の代表となる紗奈美たちは五芒星。3人のライバルとなる騎士団の次期主力候補・ジークリンデは六芒星
彼女たちの戦いもそれはもう大いに盛り上がって、物語中盤の山を作っていましたが、そこからさらに終盤に向かって大きな山を築いたのはやはり主人公。
紗奈美たちやジークリンデの視点を通して、改めて零人の凄さを見せるあたりが上手いですね。ちょっと、ひとりだけ次元が違いすぎる。
あまりに段違いな力は、ともするとドラマを単調にしかねないのですが、もったいぶって我慢して我慢して、ここぞというところでドン! という展開の作り方が見事で、飽きさせることなく一気に読ませてくれました。
いやあ、本当に好みのお話でした。発展途上の少女たちと最強の零人と、両面から楽しめる豪華な作品でしたね。
紗奈美たちのさらなる成長、零人に秘められた謎、女王の思惑などなど、気になることもまだまだ残っているし、ううん、次巻が待ち遠しい!


イラストは橘由宇さん。頬を染めるヒロインズの顔が色っぽくていいですね。
ラストバトルの零人さんはイケメンすぎてちょっと別人みたい!


巻頭の用語解説が地味に嬉しい。でも本編読後に見る方がいいような気もする。