まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『幼馴染の山吹さん』感想

幼馴染の山吹さん (電撃文庫)

幼馴染の山吹さん (電撃文庫)

ストーリー
「ねぇ、あかりちゃん。ぼく、やくそくするよ」
それは幼い頃に幼馴染の山吹灯里と交わした約束。けれども、今ではきっと青葉喜一郎しか覚えていない約束。それから時は流れ、二人は自然と疎遠になり気付けば高校生になっていた。地味な喜一郎とは違い、すっかり誰もが認める美人になった灯里だったが――
『今から貴様は呪いを受ける』
突然ふりかかった“青春の呪い”によって、彼女の存在は徐々に消されていき!? 彼女を救うためには、数々の青春(試練)をこなすこと!? 再び動き出した二人の時間。一度しかない高校生活を、少年少女が全力で駆ける青春ラブコメディ。

いつのまにか話す機会さえなくなっていた幼馴染の少女を呪いから救うため、ふたり一緒にミッションをこなしていく青春ラブコメディ。
いやー良かったです。一度疎遠になった幼馴染(でも本当はお互いを想いあっていた)パターンほんと好き。
そしてミッションという名のもとにふたりで青春ラブイベントをこなしていくパターンもほんと好き。よってこの作品、好きなやつである!


小さい頃はいつも一緒に遊んでいたのに、あまりにも少女が可愛らしく成長しすぎてしまったから、いつか自分から身を引くことを選んでしまった主人公の青葉。
周りの目とか色々あったとはいえ、そんなに大切にしていた相手から離れちゃうか普通……と呆れかえってしまうけれど、何しろ相手の山吹さんったら「世界一かわいい」から仕方ないかもしれない。何しろ自分で「世界一かわいい」って言ってるのに嫌味にならないんだからよっぽどですよね。
で、勝手に友達をやめておきながら、自分は子どもの頃の約束をずっと覚えていて、遠くから彼女を守ろうとするあたりがまた絶妙に気持ち悪いんですわ青葉くん。おいおい、盛大に鬱屈してんな少年! 青春が悪い方に空回っている!
そんな歪んだ幼馴染の関係は、山吹さんが「青春の呪い」にかかってしまったことによって再度急接近していくのです……。


呪いを解くためにふたりに課されるミッションは、手を繋いで放課後の廊下を一緒に歩くことだったり、夜の学校のプールに忍び込んではしゃいでみせることだったり。
こんな微笑ましいミッションでさえ既にニヤニヤ度が半端じゃなくって、っていうかもうこれ絶対、山吹さん青葉のこと好きじゃん……完全に「私はずっと好きだったのに」のやつじゃん……ってなりました。
それにしても山吹さん本当にかわいいな? 自分がかわいいことを分かっていて「今わたし可愛くない?」ってアピールしてくる女の子かわいすぎない? 僕はかわいいと思います(真顔)
しかしこの期に及んで青葉のヤローときたら、山吹さんは特別な女の子だから、彼女のためには自分が離れることだけが正解なんだと思い込んでいて、山吹さんの気持ちには全然気付くことができないで、もう本当にアホなのかと。いい加減にしろよと。
「そんなものは青春ではない」と呪いの精霊・小春が言い放ったこの台詞が、(ずいぶんと強い言葉ではあるけれど)結局は全てだったかなと思います。
そう、自分の中だけで溜め込んで押し付けて、相手の気持ちを考えないで、自分だけ我慢した気になって満足する。そんなの嫌なんですよ。叫べよ少年、走れよ少年。そしたらほら、きっと奇跡が起きるから。
ラストはとても綺麗に終わっているのですが、こういう終わり方をされると、やっぱり続きが気になってしまいますね。続刊期待しちゃだめかなあ。ぜひお願いします。


イラストはかにビームさん。とにかく山吹さんがかわいい。それに尽きる。
あと森園さんのキャラデザがすごく好きなのに出番がほとんどないの悲しいぞ!


贅沢は言わない。小春にジト目で「すけべ」って言われたい。ぼくはそれだけでいい。