ハルヒ世代だけど「ライトノベル個人史」書いてみた
「ライトノベル個人史」みたいなものを書きたくなったりすることもあるのだけど(そして同時に、そういうものを聞きたいし読みたいぞ、と頻繁に思ったりもしているのだけど、あまり「順を追うように」書いてくれてる文章って、巡り逢えてなくて、常に飢えている、ところがあったりもする……)
最初に買ったライトノベルを思い出してみるだけ - 世界は称賛に値する
「ライトノベル個人史」を書くのが一部で流行っているらしい。私はラノベ読みの友達ができると欠かさず「初めて読んだライトノベルは?」と聞くくらい、他人のラノベ遍歴を知るのが好きである。この流れがもっと広まってくれることを願っている。
ところで、この流れに乗っかっている人を見ると、やれ『スレイヤーズ』がどうだ、『魔術士オーフェン』がどうだ、というところから話が始まっている。おお、90年代からのラノベ読みだ……大先輩だ……。もちろんそれはそれで興味深いのだが、ラノベ歴10年に満たない私のような者からすると、いささか、なんだ、同じラノベ読みのはずなのに、だいぶ距離がある。だって、読んだことのある作品にほとんど触れられていなかったりするのだ。大抵、記事の終盤で【そして電撃文庫の時代がやってくる】的な流れになって、それで終わってたりする。マジかよ。ボク、その時ですらまだラノベ読んでないんですけど。
まあ、自分語りはある程度年経た者の特権とはいえ、この手の記事を書く人には新参者が少なすぎる。私は、『SAO』で初めてラノベを読みました!とか、『俺ガイル』からです!みたいな、そういうのが読みたいのである。学校の図書室にラノベを置くことの是非なんかが話題になっている昨今、そういった若い世代のライトノベル個人史こそ、今の状況を知る貴重な情報になり得ると思う。というわけで、『SAO』まで最近とはいかないものの、『ハルヒ』世代(しかも後発)であるところの私もいっちょ書いてみるかと思い立ったのであった。
●ライトノベル以前
小中学校の頃読んでいたのは、もっぱら海外ファンタジーであった。幼稚園の頃からそれなりに子供向けの本を読んでいた(『十五少年漂流記』とか)のだけど、小学2年生の時に『ハリー・ポッターと賢者の石』が出て父親に読み聞かせてもらって以来、海外作家の描く魔法と冒険の世界に夢中になった。作中のハリーとほぼ同じ年齢でこの本に出会うことができたのは本当に幸せだった。それから、父親が持ってくる『指輪物語』や『ゲド戦記』や『ナルニア国物語』を読んだり、自分で本屋で探した『ネシャン・サーガ』や『リンの谷のローワン』や『サークル・オブ・マジック』に熱中した。一方日本の作家の本はどうかというと、これがどうしてか、全く読んでいなかった。たぶん、漢字のキャラクター名に興味が持てなかったのだ(そのわりに『三国志』は読んでいたのだけど)。
ではオタク的な方面ではどうだったのかというと、小学生のときから間違いなくその気はあって、『ドラえもん』を全巻くまなく読み込んでカルトクイズを作ったりしていた。藤子・F・不二雄の他の作品もできる限り集めたし、『らんま1/2』にハマったら高橋留美子の作品を全部揃えたし、あだち充もそうした。萌えという概念を知ったのは、たぶん『ハヤテのごとく!』だと思う。当時の多くの男子中学生の例に漏れず、桂ヒナギクに骨抜きにされたのである。ちなみに後にナギ派に鞍替えした(知らんがな)。
●『涼宮ハルヒ』に出会う
ライトノベルとの出会いは明確に覚えていて、きっかけは2007年のアニメ『らき☆すた』だった。当時新潟の片田舎に住んでいた私は最先端のアニメを見る方法もなく(何しろテレ東系さえないのだ)、そういった存在も知らなかったのだが、ある時友人から「こんなアニメがあるよ」と教えられたのだった。関東圏の2週遅れではあったが、U局の深夜アニメが新潟で放送するなんて、当時からすれば相当異例のことだったはずである。で、平野綾さんにハマり、『涼宮ハルヒ』を知った。今思えば、柊かがみが好きだったので『フルメタル・パニック』(彼女の愛読書である)に行ってもおかしくなかったのだけど、結局選んだのは『ハルヒ』だった。結果、私が『フルメタル・パニック』を初めて読むのは2014年のことになる。まあどっちを選んでいても、ラノベにはハマったと思うけれど。
『涼宮ハルヒ』の存在を知っても、すぐに実際に読もうという風にはならなかった。それくらい、日本の作家が書いた本というものに興味がなかったのだ。でも忘れもしない、家族と買い物に行ったイオンの中の書店で陳列されていた「角川夏の100冊」の一角に、ちょっと気になっていたその本が置いてあるのを見つけた。ふと思い立ってページをめくってみると、朝比奈みくるが裸に剥かれかけているカラーイラストが目に飛び込んできた。即決で買った。ということでうちの『涼宮ハルヒの憂鬱』には、だっせぇ「夏の100冊」の黄緑色の帯が未だについている。「これがライトノベル!」と、自慢げにデカデカと書かれている思い出の一品である。だっせぇけど。
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●ライトノベルの世界へ
『涼宮ハルヒ』は衝撃だった。と思う。初見での感想はもはや記憶の彼方にあるが、何度も何度も読み返したのは確かだ。そもそも、キャラクター同士の恋愛模様を本で読むということ自体が、かなり新鮮だった。今まで読んでいた海外ファンタジーには、ほとんどそういった要素がなかった。それから、ヒロインを可愛く描くということ。漫画じゃないのに、そういうことができるのか! と思った(たぶん)。好きになったのは長門有希……ではなく、涼宮ハルヒだった。ちなみに、当時もう既に『涼宮ハルヒの分裂』が刊行されていたので、最新巻まで読んだあと、私のハルヒへの想いは4年間凍結されることになった。
次に読んだライトノベルは、記憶が正しければ、友人から借りた『灼眼のシャナ』だった。私は図書室でラノベを借りるということをしなかったので(そもそも置いてなかったと思うが)、もっぱら友人から借りることが多かったように思う。後に読む『バカとテストと召喚獣』や『文学少女』や『生徒会の一存』も、初めはそうだったし、未だに私のバイブルのひとつになっている『さよならピアノソナタ』だってそうだった。もちろん後から全部自分で買った。『灼眼のシャナ』なんて、修学旅行先の京都のアニメイトで、小遣いをもらったのを良いことに全巻買い漁って(当時たぶん17〜18冊くらい)、めちゃくちゃ重たい青い袋を両手に死にそうになりながらホテルに帰った。何やってるんだろう。
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●MF文庫Jの時代
初めてジャケ買いしたライトノベルは『魔女ルミカの赤い糸』だった。理由は明確で、エロかったからである。表紙をめくったカラー扉が、表紙の女の子のキャストオフバージョンなのだ。肝心のお話はなかなか小難しいストーリーで、確かにエロさはサイコーだったのだが、『ハルヒ』や『シャナ』や『ゼロ使』ほどにはハマらなかった。でも、たぶんこの作品がきっかけで、本屋の棚にズラリと並んで異様な雰囲気を放っている緑色のレーベルに手当たり次第に手を出すようになった。もちろん電撃文庫やファンタジア文庫も読んだと思うのだけど、MF文庫Jは群を抜いて多かった。好きなヒロインが多かったのだと思う。『ぷいぷい!』も『きゅーきゅーキュート!』も『かぐや魔王式!』も、みんなヒロインを好きになった。『緋弾のアリア』や『えむえむっ!』は特に格別だった。『もて?モテ!』に『丸鍋ねこ』、『ギャルゴ!!!!!』、『オウガにズームUP!』、『乙女革命アヤメの!』……とにかく、目についたラブコメディというものを片っ端から読んでいたような気がする。
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●上京、そしてラノベ読みたちとの遭遇
Twitterを始めたのが2009年12月、そして大学に入学して上京したのが2010年4月。すぐに開催されたライトノベルフェスティバルでたくさんのラノベ読みに出会い、ブログを立ち上げたのが5月。実はそれまでにもこぢんまりとした携帯ブログをやっていたのだが、本格的にラノベ感想ブログをすることになって、読む本のジャンルも、手に取るレーベルも、明確に増えた。当ブログの初期の記事を眺めると、『空色パンデミック』や『クロノ×セクス×コンプレックス』、『ダンタリアンの書架』などは恐らく周囲のラノベ読みたちの影響で読んだ本だろうし、『イリヤの空、UFOの夏』などそれまでだったら絶対に手を出さなかっただろう作品も読む機会を得た(結局好きにはなれなかったけど)。その年に創刊されたこのラノ文庫を全部読んでやろう、なんて思ったのも、ブログをやっていたからだと思う。『僕たちは監視されている』、好きだったなあ。
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