まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

灼眼のシャナⅩⅩⅡ

灼眼のシャナ〈22〉 (電撃文庫)

灼眼のシャナ〈22〉 (電撃文庫)

  • ストーリー

“徒”の理想郷『無何有鏡』創造を巡り、刃を交える“祭礼の蛇”の代行体・坂井悠二と、フレイムヘイズ『炎髪灼眼の討ち手』シャナ。
その渦中、吉田一美が宝具『ヒラルダ』へ願った想いを受け、“彩飄”フィレスが戦場に現れる。
御崎市に吹いた琥珀色の風は、それぞれの思惑を振り回し、どこへ向かわせるのか……。


私がライトノベルと出会った頃からずっと読み続けてきたこの作品も、遂に最終巻を迎えました。
これまでにもそれなりの数の作品の完結を見てきましたが、その中でもやっぱり、なにやら、特別な感慨があるような気がします。
相変わらずの難解な単語の羅列と、けれん味に満ちた文章。毎巻毎巻、出だしは読みづらくて仕方がないのだけれど、いつの間にか目が離せなくなってしまっている。不思議なものです。
一行に一度は作中の固有名詞が出てくるようなこの文章に呆れつつ、忘れてしまった単語が出てくるたびにwikiさんで調べて、そのまま記事にのめり込んでしまって、何十分も経ってから「あ、続き読まなきゃ」と思い出すこともなくなるのかと思うと、いよいよ淋しくなってきますね。


フレイムヘイズと紅世の徒の戦い。兵団と仮装舞踏会の戦いと言っても、シャナと坂井悠二の戦いと言ってもいいけれど、そんな戦いもクライマックスへ。
ここへ来るまでに、たくさんのフレイムヘイズと徒がいなくなりました。
そんな死闘の中を戦い抜いてきたキャラクターたちは、最後の巻でもそれぞれ思いっきり暴れ回ってくれています。
たとえば、古き友と教え子の間で揺れ動きながらも、新たな一歩を踏み出すヴィルヘルミナ・カルメル
いやあ、やっぱり私はこの人が一番好きなんですね。戦い方も生き様も、実はちょっと弱いところのあるメンタルも、全部ひっくるめて格好良いと思います。
シャナとの信頼溢れるやりとりや、フィレスとのすれ違いにもぐっと来るけれど、個人的にはマージョリーさんとのひねくれた友人関係を推したいところ。
ああ、もちろんティアマトーを忘れてはいけませんね。あの台詞は不意を突かれました。ちくしょう、いいコンビだなあ。
ヴィルヘルミナさんの他にも、キアラとサーレのいちゃいちゃカップル(末永く爆発しろ)に、圧倒的な力を見せつける『大地の三神』(勝てる気がしない)に、破壊屋じいさんカムシン翁(格好良かったぞ)にと、もう書き切れない。みんな最高。


フレイムヘイズだけではなくて、敵であったはずの徒たちまでが魅力的なのだから困ってしまう。
なんだかんだで最後まで戦い続けたダンタリオン教授とドミノ、正々堂々と兵を指揮し続けたハボリム、キアラを苦しませ続けたマモン。
そして、最強の参謀・ベルペオルと、最強の将軍・シュドナイ。このふたりこそ、真にチートクラスの化け物でしたね。敵の幹部にこんなのがふたりもいていいんですか。今更だけど。
特にシュドナイ。あまりに多くのフレイムヘイズを殺しすぎたこともあって、あまり好きなキャラではなかったのですが、ラストはとても良かったです。
悪役のトップスターとして、引き際まで完璧でした。ヘカテーのことばがまた、ね。たった2ページではありますが、イラストも合わせて大好きなシーンですね。


リャナンシーの願い、『約束の二人』が残したもの、そして坂井悠二の最後の計画。
今まで詰め込まれてきた伏線が一気に花開いて、驚きや切なさを運んできてくれました。
正直、存在ごと忘れてしまっている伏線もたくさんありましたが(苦笑)、とりあえず悠二が、ここであの人の名前を出してくるのはずるいと思います。やられた。
今でも悠二は好きになれません。決して好きにはなれないけれど、やっぱり悠二も主人公だったのだなあと実感しました。
そしてもうひとりの主人公、シャナは、そう、その想いを彼へと届けます。
まったく、ここまでこぎつけるのに一体何巻かかっているんですか。不器用なヒロインを持つと大変だ。まあこの作品の場合、ヒーローの方はもっと不器用だったかもしれませんけど。


少々予想外ではありましたが、見事に華麗に、この大きな物語終結させてくれました。
まだ外伝が1冊残っているそうですが、本編はこれで終わりになります。
いやあ、改めて振り返ってみると、本当に面白い作品でした。愛着を抜きにしても、やっぱり大好きです。
この作品と出会えて良かったと心から思えます。高橋弥七郎先生、いとうのいぢさん、ありがとうございました。最後の外伝も楽しみにしています。


忘れてる部分を補完するためにも最初から一気に読みたいけれど、しかしまあ、長いよなあ……。