まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

バカとテストと召喚獣12

ストーリー
劣勢の中、雄二の策により首の皮一枚繋がって試召戦争の一日目を終えた二年生。
依然戦力差が開いたまま突入した二日目だったが、雄二の指揮の下勢いを取り戻す。
そんな激戦の最中、作戦行動中の明久の前に三年生代表の郄城が立ちはだかり……。



遂に……ああ、遂に、この時がやってきてしまいました。本編最終巻です!!
前巻から引き続き三年生との全面対決が描かれ、そして何より、明久を巡る恋のバトルにもようやく(ひとまずの)終止符が打たれました。
FクラスもAクラスも三年生たちも、どのキャラクターも過去最高に熱く、バカになって戦い抜けた、最終巻にふさわしい大盛り上がりの1冊だったと思います。


前回一度やる気を失い、明久に発破をかけられて開き直った雄二。
思いが通じ合った翔子さんとのやりとりがもうなんか辛い! そんなに変わってないはずなのに、やっぱりどこか違う! こんなの目に毒だよ!
雄二・翔子カップルは基本応援し続けてきた私ですが、初めてFクラスの連中の、こう、くすぶる闇の気持ちが、少し分かったような気がします。いやほんとに可愛いな翔子さん……。


すっかり本来の活気を取り戻した雄二の作戦に乗って起死回生の策に打って出る明久たちですが、そこで待ち受ける郄城先輩。やはり彼こそがラスボス。風格が違いますね。
何より彼は姫路さんを奪い合う相手で、しかも明久が知らない姫路さんの秘密を知っている。どうあっても負けるわけにはいかない相手なのですが……。
今まで姫路さんのために戦い続けてきた明久が、郄城先輩から明かされた秘密によってすっかり牙を失ってしまう姿は、見ていて辛かったです。どんな逆境でもまっしぐらに突き進むのが、吉井明久という最高のバカの、最高の長所だったはずなのに。
姫路さんからあんなに直接的なことを言われてもまだだめなんだから、もう相当なものです。明久と対峙した夏川先輩や、福村君の様子が印象的でした。やっぱりなんだかんだで、みんないつもの明久が好きだったんですよね。


雄二を立ち直らせたのは明久でした。そして明久を立ち直らせたのは、いつも彼の隣にいた、優しい帰国子女の女の子。
いやあ、いいですね。清々しいですね。青春ですね。うだうだ思い悩んでいることがアホらしくなってくる、竹を割ったような気持ちのよさ。ここにきて彼女のことがもっと好きになりました。
追い詰められた明久が胸の内を明かすことができたのも、彼女のことを心から信頼していたからこそなんだろうなと思います。


最後の戦いはまさにオールスターバトルでした。遅れてやってくるヒーローのために戦線をつなぐFクラスとAクラスのメインメンバーたち。
美波もそうですが、誰よりもムッツリーニですよ。ちょっと格好良すぎるでしょ。やめろよ惚れちゃうだろ。
二年生全員の思いを受けて、明久は再び戦いの場へと赴きます。
自分の思いをしっかりと受け止めて、郄城先輩とラストバトルを繰り広げる明久。もうもうもう、最高に格好良いヒーローでした。バトルの前にあんなことやっちゃうのがまたニクいですね。なんだよどこでそんなイケメンスキル身につけたんだよ! 明久のくせにー!


今回は、章の分かれ目に挟まれるバカテストが実にいい味を出してくれていました。どれも妙に見覚えのある問題だと思ったら、全部過去のバカテストと同じ問題だったんですね!
明久と姫路さんの解答にはグッと来てしまいました。この演出はずるすぎるでしょ、もう……。いつの間に小ネタで笑いを取る場所から小ネタで感動させる場所に変わっちゃったんだよ! ……なんて思っていたら、最後のバカテストではしっかり笑わせてくれるんだから二重にずるい。
まあですね、シリアス強めの展開も大好きだけれど、やっぱり最後はこうでなくちゃいけませんよね。最後にちゃんとバカな笑いが待っているからこそ、シリアスなドラマも輝くというものです。
一種気の抜けるオチでもありましたが、それもまたこの作品らしさだと思います。まったく文句のつけようのない、素晴らしい終わり方でした。


あー……面白かったなあ……。
ライトノベルを読み始めた当初からずっと追いかけてきた作品が、またひとつ終わりを迎えることになり、とても淋しいです。
でも、大好きな作品を大好きなまま、最後まで読み終えることができるというのは、間違いなく幸せなことなんですよね。
明久、姫路さん、雄二、美波、秀吉、ムッツリーニ、翔子さん、工藤さん、久保君、木下さん。そして他のキャラクターたちも、みんなみんな大好きでした。
笑いと感動で最高のエンターテイメントをくれた井上先生、最後まで神がかったイラストで物語を彩ってくれた葉賀ユイさん。本当にありがとうございました。この作品に出会うことができて幸せです。
本編は終わったとはいえ短編集が残っているということで、まだちょっとお別れには気が早いですね。首を長くして、楽しみに待つこととしましょうか。


11巻と12巻の表紙を並べて眺めて溢れる多幸感。