まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

2018年面白かった新作ライトノベル10選

 皆さまお久しぶりです。いつの間にやら世間は大晦日! 今年読んだ新作の中で特に面白かった10作品! 書いていっちゃうよー!




【上半期】
エートスの窓から見上げる空 老人と女子高生』(ファミ通文庫
エートスの窓から見上げる空 老人と女子高生 (ファミ通文庫)


『西野 ~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~』(MF文庫J
西野 ~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~ (MF文庫J)


『三角の距離は限りないゼロ』(電撃文庫
三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)


『オミサワさんは次元がちがう』(ファミ通文庫
オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)


『オタギャルの相原さんは誰にでも優しい』(MF文庫J
オタギャルの相原さんは誰にでも優しい (MF文庫J)


 2018年上半期からはこの5作品! それぞれへのコメントはこちら(『好きラノ』2018年上期に投票します - まだまだペンキぬりたて)で書いているので割愛。『西野』は順調に出続けている上に最新巻の4巻も面白くてよかったなあ。『オタギャルの相原さん』、続き出てくれないかなあ……。




【下半期】
『死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱く』(オーバーラップ文庫
死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱くI (オーバーラップ文庫)
感想→『死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱くI』感想 - まだまだペンキぬりたて
 とにかく抜群に痛快な私TUEEE戦記ファンタジー。か弱げな美少女が剣を振り回して無双するのが本当に好きなんです。すみません。敵味方の軍師や将軍が緻密な作戦を立てて攻防する中、ただひとりイレギュラーとして戦場を駆ける主人公の姿が目を見張るほど格好良く、そして恐ろしい。2巻も素晴らしかったです……そのうち感想書きます。


『彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~』(ファミ通文庫
彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)
感想→『彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~』感想 - まだまだペンキぬりたて
 3人の少年少女と「嘘」を通して、とある少女の死の真相を解き明かしていくミステリアス青春ストーリー。「自殺」という重いものをテーマに挙げつつも決して暗くなりすぎず、胸を打つ切なさと優しさに満ちた結末へと導いていく、これぞ三田千恵マジック。もはやファミ通文庫を代表する青春ラノベの旗手になった感すらあります。


『異セカイ系』(講談社タイガ
異セカイ系 (講談社タイガ)
感想→『異セカイ系』感想 - まだまだペンキぬりたて
 講談社タイガをこういうラノベベスト系記事に入れていいものかどうか毎回迷うんだけれどもこればっかりは入れざるを得ないなあ! 異世界転生系っぽい出だしから、作者、物語、読者、キャラクター、現実、フィクションが目まぐるしく入り乱れる怒涛のメタフィクショナルワールドへ。「なろう」読みで未読の方がもしもいたら! 騙されたと思って読んでほしいです。とんでもないよ。マジで。その際はぜひ紙の本で!


『公園で高校生達が遊ぶだけ』(講談社ラノベ文庫
公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)
感想→『公園で高校生達が遊ぶだけ』感想 - まだまだペンキぬりたて
 名は体を表す、タイトル通りの、「公園で高校生達が遊ぶだけ」な日常コメディなのだけど、その辺にいそうな高校生達がただどうでもいい会話をしているだけでこんなにも面白く仕上がるのかと驚愕。あたかも、良くできたミニコント集を読んでいるかのような気分に浸ってしまう。あと幼馴染スキーは必読です。


『七つの魔剣が支配する』(電撃文庫
七つの魔剣が支配する (電撃文庫)
感想→『七つの魔剣が支配する』感想 - まだまだペンキぬりたて
 たぶん100万人が同じこと言ってると思うけど、これぞ和製『ハリー・ポッター』。魔法学校×侍少女のチャンバラなんて力技、よくもやってのけたなあ! 宇野朴人先生らしいダークさや、これから効いてくるだろう伏線も散りばめられていて、今後の展開が大いに楽しみな一作。




 以上、2018年の新作ライトノベル10選でしたー。
 今年はラノベを読めた時期と読めなかった時期の差が大いに激しかったのですが、たぶん150冊以上は読んだんじゃないかな……読んだ気がするな……200はワンチャン読めて……ないかもな……と、そんな程度の偏差値のひくーいラノベ読みな1年でした。まあたくさん読んだら偉いってわけでもないんですけども。
 ブログもね、全然更新しない時期があったかと思いきや100日連続更新をやってみたりもして、なんだか落ち着きのない1年でした。本当はもう少し更新するつもりだったんですけど。
 あ、あと地味ーに今年も『このライトノベルがすごい!』にラノベ紹介記事を何本か書かせてもらいました。ダンまちとか書いてるよ!
 Twitterをご覧の方ならばご存知の通り、特に10月以降は完全に他コンテンツにうつつを抜かしてしまっておりまして、まあ、あちらはあちらで僕は本気なんですが*1、2019年は本職の方も忘れずに頑張っていきたいなと思う所存であります。
 こんな節操のないブログに付き合ってくださった皆さま、1年間ありがとうございました! 来年もよろしくお願いいたします。よいお年を!

*1:3月8日空いている方はぜひ僕と一緒にSSAへ!

『ミウ -skeleton in the closet-』感想

ミウ -skeleton in the closet- (講談社タイガ)

ストーリー
就職を前に何も変わらない灰色の日々。あたしは何気なく中学の卒業文集を開き、『母校のとある教室にいじめの告発ノートが隠されている』という作文を見つける。それを書いた元同級生が自殺したと知ったあたしは、その子のSNSのパスワードを暴いてログインし、その子の名でSNSを再開した。数日後、別の元同級生が謎の死を遂げる。灰色の日々に、何かが始まった――。

その2人、危険。
自殺した元同級生のSNSアカウントを生き返らせてみた……そんなイタズラが思わぬ事件へと発展していくロジカルサスペンス。
面白かった! 短いページ数の中に幾度もの驚きと背すじがゾクッとする展開があって、のめり込むようにして読まされました。
乙野先生の作品は何冊か読んで、巧い作家さんだとは思っていましたけど、中でもかなり洗練された1冊ではないかと思います。


大学を卒業し、就職も決まっているものの特に華があるわけでもない人生を送ろうとしている語り手の千弦。彼女はある日たまたま見つけた卒業文集で元同級生・田中奈美子の作文を読み、その内容が気になってしまい、その子のことを調べる途中で彼女が自殺してしまっていることを知る……。
発見した田中奈美子のSNSアカウント。気付いてしまったそのパスワード。自殺した元同級生のアカウントを乗っ取って「生き返らせる」……。ただの興味本位でやってしまうには、なんというか少々危なすぎるイタズラに、読んでいるこちらとしては気が気でない。
やがておかしなダイレクトメッセージが届いてから事態は急展開、読んでいて手が震えちゃってもう! 背中がゾクゾクさせられっぱなしでしたわ!


かつて千弦にとあるトラウマを植え付けた元同級生・ミユ。そんな彼女と思わぬ再会を果たした千弦は、彼女と自分の奇妙な関係性に気付く。
初めこそミユの変人っぷりばかりが目立つけれども、実は千弦の方も普通の人の仮面の下にかなりの変わり者の顔を持っていて、そんな変人2人が織りなす奇妙なお話の展開からまたしても目が離せない。
二転三転する予想と、やがて暴き出される真実と、そしてその向こうにあるもうひとつの真実と。うーん、見事見事。完全にしてやられたー!
第五章のオチの付け方と、それから終章で描かれる千弦とミユの関係性がまた格別でしたね。ずっと後を引きそうな舌触りの、素晴らしい読後感でした。満足。


表紙の千弦ちょっと美少女すぎない??

『キングメイカー! ―戦野の隅の大英雄―』感想

キングメイカー!  ―戦野の隅の大英雄― (GA文庫)

ストーリー
「やめてくれ! た、助けぇえぇ!」観客の盛り上がりが選手の力に変換されるバトルスポーツ・ヨルムンガンド。その日、六道昴哉は“命乞いの演技”によって『ピンチに駆けつける味方の登場』を演出。チームを勝利に導いた。だが彼は――(俺は駆けつける側がやりたい!)内心ブスブスくすぶっていた。そんな彼はある日、軍事の名門・長舟家から家出してきた剣豪少女すばると出会う。無一文で出てきたすばるは、お金を稼ぐために昴哉のチームに入ることになり――!? 《歩兵》の少年が、少女を助け真の《英雄》へと翔け上がる!! 劇場型バトルアクション、開幕!

第9回GA文庫大賞<優秀賞>受賞作品。観客の盛り上がりによって戦闘力が上がるバトルスポーツで雑魚の一兵卒として伸び悩んでいた主人公が、真の剣豪の少女と出会い英雄への道を切り開いてゆくバトルアクション。
他人を引き立てることは上手いのに自分が目立つことは苦手……そんな不器用な主人公が、仲間に背中を押され、ライバルに叱咤され、何度も転びながらも上を向いて走っていくのが熱いお話でした。
ヒロイン候補が多くてわりとガチで絞りきれないな……なお聖さん推しです。


観客の声援が選手たちの魔力に変換されるチーム戦バトルスポーツ・ヨルムンガンド。いかなる強者であってもドラマチックに盛り立てられた弱者の前に膝をつくこともある、ただの力勝負ではない、そんな独特の競技感覚が面白いですね。
主人公の昴哉は、そんなヨルムンガンドで万年一兵卒の雑魚キャラ少年。目立ってナンボの競技なのに他人を目立たせる作戦を練ることばかり上手いという我の弱さと人の良さが、長所でもあり短所でもあるというか。
ともに故郷から出てきた相棒の少女・サキはすでにチームの要たる「英雄」の役目を担っているというのに、いつまで経っても昴哉の方は歩兵のまま。せっかくの機会もチームのため、他のメンバーのためにフイにしてしまうあたり、いい奴ではあるんだけどなんだか惜しいなあ……と思わせられる主人公です。


そんな彼の前に現れた、現代まで残る武家の名門の令嬢にして本当の剣豪少女・すばる。無邪気でとても愛らしい少女ながらその剣の腕は抜群。こういう天真爛漫な最強少女って大好きなんです。ロマンがあるよね。
ヨルムンガンド最強と名高い剣士にして昴哉の憧れの存在・聖もそのタイプで、個人的にはこのヒロインが特に好きでした! 圧倒的強者でありながら決して驕らず、すばるとの一騎打ちをハンデなしで始めちゃうようなバトルマニアっぷりに痺れます。
それから、昴哉の帰りを下宿先で待ち続ける第一正妻候補の綾も捨てがたい。きょうだいみたいな感覚なのに実は昴哉にベタ惚れなあたりにストレートな萌えを感じるー! これはズルいヒロインだぜ……。
もちろん、長年の相棒でありライバルでもあるサキだって強力なヒロインだし、本当にこの中の誰とくっついてもおかしくないくらい。
そんなヒロインたちと、もちろん他のチームメイトに支えられ、次第に演出家としての才能を開花させてゆく昴哉。
誰かを輝かせるのもいい。でも一緒に自分が輝くのだって目指してもいいんだ。弱くて情けない主人公が、「主人公」になっていくストーリー。王道ながら、だからこそ燃えますなあ。


イラストは柴乃櫂人さん。聖さんめっちゃ格好良い! お前が一番だ!
しかし綾の笑顔も破壊力高いな……うーんやっぱ迷う(笑)。


九章までで綺麗に終わっていたと思うのだけど、終章の内容はこの巻に入れなければならなかったんだろうか……?