まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『魔弾の王と凍漣の雪姫』感想

魔弾の王と凍漣の雪姫 (ダッシュエックス文庫)

ストーリー
弓は臆病者の武器。祖国でそういわれ続けてきた少年は、少女の言葉によって己の進むべき道を見いだし、守るべきものを得た。二年後、ブリューヌ王国はジスタートと同盟を組み、大国ムオジネルと開戦する。ティグルは病に伏せた父ウルスに代わり、初めての戦場へと向かった。戦争は順調に進んでいるかのように見えたが、奇襲を受けブリューヌ軍は戦線崩壊する。敗足するティグルの部隊。その窮地を救ったのはオルミュッツ公国の戦姫、リュドミラだった。二年ぶりの再会を喜ぶ二人。しかし、その行く手には新たなる戦いが待ち受けていた。戦乱の世を舞台に、伝説の時代より続く闇の勢力との戦いが、今はじまる!!

魔弾の王と戦姫』の世界を舞台に、リュドミラをメインヒロインに据えて前作とは異なるストーリーを描いていくリスタート戦記ファンタジー
これは面白い試み! 前作も(途中で止まっちゃっているけれども)かなり好きな作品だったのですが、ただひとつ「リュドミラがヒロインだったらなあ!」とは常に思っていたのです……。でもまさか本当にリュドミラ推し救済の新作が出るとはね!
ティグルとミラ、序盤からかなりイチャイチャしていてニヤニヤが捗りました。色々と前作とは違う部分も多いのでストーリーの変遷に期待ですね。


ブリュームとジスタートの連合軍 vs ムオジネル軍との大戦の中、かつて想いを伝えあった戦姫の少女との再会を果たす青年ティグル。
いきなりずいぶんと大規模な戦から始まりました。まあティグルは数万の軍の端っこで50人を指揮するだけの地方貴族に過ぎないんですが。
この人数ではさすがに計略どうこうでどうにかなるものでもないので、そこはお預けとして。冴えわたるティグルの弓の腕はこちらの歴史でも健在でございました。ムオジネルが誇る戦象を矢2本で倒してしまう鮮やかな手腕とか、誰がどう見ても凄まじいのだけれど、これが評価されないブリュームの価値観は本当に理解に苦しむな……。


物語開始当初からすでに相思相愛のティグルとミラ。長髪のミラは前作とはだいぶ雰囲気が違いますが、中身はあまり変わっていませんね。お澄まししているようで急な攻めに弱くすぐに赤面しちゃうあたりが可愛いんだ。一方のティグルはだいぶナンパ野郎感が増している気がします(笑)。
気持ちとしてはどちらも相手のことを一番に想っていて、それは揺るぎないんだけれども、オルミュッツ公国を治める戦姫と一地方アルサスの領主とではとても釣り合いがとれていないのも確か。だからこそティグルはかつてミラに誓った。その矢を願い星まで届けることを。
ティグルがこれからどのような戦果を挙げ、ミラに並び立つまでの存在にまで成り上がっていくのか。おそらく前作とはかなり異なるストーリー展開になっていくことと思いますが、比較しつつもまた別世界のお話として楽しんでいきたいですね。


イラストは美弥月いつかさん。凛々しくて可愛いリュドミラ姉様が素敵!
カラーページかなり攻めてるな……いいぞもっとやれ。


戦記ものなのに地図がないとは何事か!

『おまえ本当に俺のカノジョなの?』感想

おまえ本当に俺のカノジョなの? (MF文庫J)

ストーリー
計算打算を駆使し高校デビューを成功させた俺・優哉は、誰もが羨む美少女三人との「理想の青春」を満喫していた。なのに、突然カノジョを自称する幼なじみ・望海が現われて崩壊の危機に! って、あれ? なんでみんな急に恋のやる気スイッチ押しちゃったの? 俺らの関係は、なぜか俺争奪のアピール合戦へと急展開でドキドキさせられっぱなし! マズい……俺には、絶対に修羅場を避けたい事情があるんだ。こうなったら俺の計算打算でアピールを華麗にかわしてみせる! ん、なんだよ望海。「優ちゃん、計算高いクズに成り下がったんだね」だって? 辛辣すぎ! しかも、なんでお前が修羅場をけしかけてくるの!?

美少女3人との青春を楽しんでいた主人公の日常が、突如来襲した幼馴染みの一方的なカノジョ宣言によって一気に修羅場化していくドタバタ学園ラブコメディ。
自らの青春を守るため、女の子から好意を寄せられても決して恋愛関係には進もうとしない八方美人で打算的な主人公にはイライラさせられたけれども、そんな彼が敵意バチバチのヒロインズにどんどん追い詰められていく展開が痛快で良かったです。
思いっきりお話の途中でぶった切られているので続いてくれないと困るぞ。


念願の高校デビューを果たした主人公・小野瀬。クラスメイトの遙香、生徒会長の月原先輩、部活のマネージャーの未央という3人の美少女と恋人未満な関係を育み、明るい青春を謳歌していた……のだけれど、そんな彼と再会を果たした幼馴染み・望海が突如カノジョ宣言をしたことによりその日常は一変していく!
誰にでも分け隔てなく優しい、気のいいヤツ。そんな姿を演じて計算高く自らの望む「青春」を作り上げてきた小野瀬。
まあその努力は買うけれども、青春を堅持することに躍起になって、女の子たちの気持ちなど何も考えてないように見えるあたり、本当に計算高くて嫌な奴って感じがする。端的に言って……ゴミクズ……だよね……(辛辣)。中学時代の黒歴史? 知らんわそんなもん!
だいぶヘイト値高めな主人公だからこそ、その青春がどんどん崩れていくのは見ていて楽しいんだけれども、結局小野瀬がラブコメ的においしい思いをしていることには変わりなく、なんだか釈然としないものを感じる!


そんなクズに惚れてしまった4人のヒロインはみんなそれぞれ魅力的で甲乙つけがたい。まあ4人もいるので、まだ各々の浅い部分しか描かれていないということもありますが。
明るくてテンション高く接してくれる遙香も、ちょっとエロくからかってくる月原先輩も、どこまでも健気な未央ちゃんも、みんないい子なんですわ。や、本当に小野瀬がいいの? 正直目を覚ましてほしい(笑)。
そんな中、唯一小野瀬の八方美人ぶりを見抜いているのが6年間離れ離れだった幼馴染みの望海。6年間ずっと小野瀬と付き合っていたと思い込んじゃっているあたりとか、だいぶ妄想癖の激しい子ではあるけれども、小野瀬のいい部分も悪い部分も全部ひっくるめて好きって言ってくれるめちゃくちゃ一途で可愛い子なんですよ! もう望海でいいじゃん……望海とくっついてハッピーエンドを迎えてあとはズブズブのイチャイチャ劇を繰り広げてほしいぞ……だめかな?
4人のヒロインとの修羅場な日々はまだ始まったばかり。ぜひちゃんと決着がつくところまで描ききってほしいですね。次巻を待ってます。


イラストはろうかさん。某ページの小野瀬アップはちょっとビビりました(笑)。
キャラデザでは望海と未央の後輩組が好きですね!


あとがきの出だしのエピソードに心当たりがありすぎて「お前は僕か」って突っ込んでしまった。

『ファイフステル・サーガ2 再臨の魔王と公国の動乱』感想

ファイフステル・サーガ2 再臨の魔王と公国の動乱 (ファンタジア文庫)

ストーリー
「許せないわ。わたしたちの結婚式であなたを殺すなんて」フライスラント軍の撃退に成功したカレルだが、その武勲とセシリアとの結婚を快く思わない何者かの暗殺が計画される。「こうなったら未来を変えるべく行動するしかない」犯人の手がかりを求めてカレルはドワーフの国へ向かうが、黒幕の策略はすでに二重三重に仕掛けられていた! そして公国に広がる動乱は、二人の英雄を引き合わせることに! 「カレル、おまえにはせいぜい苦労してもらうとしよう。なに、少しぐらいなら手伝ってやる」カレルとヴェッセルの邂逅は歴史を大きく動かす――!

自らの死を夢見るという聖女の力を用いて、何者かが仕掛けてきた暗殺計画に対抗していく、気鋭の戦記ファンタジーシリーズ第2弾。
今回も順調に面白かったです。何かと敵の多い苦しい立場の中、ヒロインをはじめとした仲間たちの助けと自身の知略とでギリギリ生き抜いていく主人公の姿が熱い。
次期公爵という責任があるからというだけでなく、こんなに素敵な婚約者を奪われてなるものかという卑近な執着心なんかもちゃんとあって、そんな主人公に好感が持てます。


前回に引き続き隣国フライスラントとの戦争が描かれる……のだけれども、敵は外だけでなく内にも迫っていた!
最強の傭兵団の団長とはいえ、いきなり平民が公爵になろうとしているのだから、そりゃ快く思わない人間もいるわけで。想定内といえば想定内なのかもしれないけれども、しかしそれはそれとしてむかっ腹は立つよね(苦笑)。
まあカレルのやり方も、人質に取った王姉の妊娠の噂を流すとか、決して綺麗なやり口ばかりではないんですが、かといって主家を裏切るほどでもあるまいに……。あちらを立てればこちらが立たずという具合で、フライスラントの侵攻を防ぎつつ周囲に納得してもらうというのはなかなか難しい。つくづく、カレルの置かれた立場の難しさが思いやられる。
そんなカレルの最大の武器はやはりアレンヘムの聖女たるセシリアの夢見の力。未来の毒殺を防ぐべく、果断な決断力で物事を推し進めていくカレルは、未だ成長の途上ながらなかなかに格好良く思えました。


思わぬ大物の裏切りと卑劣な罠。窮地に立たされるカレルとセシリア、そしてアレンヘム公国。
そんな中、もう1人の主役・ヴェッセルとカレルが遂に対面を果たしました。いやあ、ヴェッセルは一見冷酷な貴族然としつつも、実はかなり人間臭いところがあって面白いキャラクターですわ。抱えている謎も多いし、出番は少なくても2人目の主役にふさわしいだけの魅力がある。
今はまだカレルの方が立場としても器としても足りていないかもしれないけれども、これからきっと長く競い合い並び立っていくのだろう2人の英雄の邂逅と思うと、なかなか燃えるものを感じました。負けるなカレル。がんばれカレル。
ヴェッセルの助言もあり、追い詰められた状況から一気呵成に反撃に打って出るカレルと《狂嗤の団》は、見ていて大変に痛快でしたね! 特にやっぱり「歴代最強」コルネリウスが群を抜いてクールでした。この強さとこの顔で唯一の弱点がこれとか、ちょっとズルいのでは? いやーこいつ好きですわー。
次はまた新たな戦いが待ち受けているようで、ファンタジー世界がどんどん広がっていくのがとても楽しみ。あとミーリエルのさらなる活躍を期待してます!


早く! 「具体的なシーン」の続報を早く! ください!!(血眼)