まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『公園で高校生達が遊ぶだけ』感想

公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

ストーリー
瀬川エリカと俺、吾妻千里は小学校3年生からの幼馴染みだ。小学校でも中学でも、そして高校でも、瀬川と俺は、公園で遊ぶ。ダベったり、野球をしたり、走り回ったり、ちょっと喧嘩したり。「とりあえず吾妻の中で、わたしを可愛さピラミッドの頂点に設定するといいよ。そうすればわたしを通して“可愛い”がわかる」「瀬川を可愛さピラミッドの頂点に設定すると、具体的にどうなるんだ?」「わたしに似てれば似てるものほど、吾妻は可愛いと認識しだすよ」「じゃあ、電卓とかも可愛く見えんのかな」「ちょっと待って。吾妻の中でわたし、電卓なわけ?」そして今日も公園で、高校生の何気ない日常が紡ぎ出される――。

会話ギャグの魔術師
ゆきともさん(ゆきとも@永遠の17歳ラノベ読み (@yuki_tomo624) | Twitter)が発売前からガン推ししていたので読んでみたらめっちゃ面白かったー! ありがとう!
名は体を表す。お話の内容は本当に「公園で高校生達が遊ぶだけ」なのだけど、その辺にいそうな、でも個性豊かな登場人物たちが、何気なく駄弁っているだけでやたら楽しいのだ!
中身もなにもあったもんじゃないんだけれどもやたら満足感があるんだなあ。いいもん読みました。


主人公の高校生・吾妻。その幼馴染にしてヒロインの瀬川。それから吾妻の悪友のガンちゃんや前島や、瀬川の親友の茶茂や岡本や、ああそれと忘れちゃいけない吾妻のドSな妹・美咲。
そういった面々がわちゃわちゃと公園に集まって、ベンチでどうでもいい話をしたり遊具の上でどうでもいい話をしたり、雨宿りをしながらどうでもいい話をしたりする。
ほぼ全ての出来事が公園の中で完結しているのに、それぞれのキャラクターや日常のことが少しずつ垣間見えていくのが面白い。傍から見ればどうでもいい話でも、現役青春まっさかりな彼ら彼女らにとっては意外と大事な話だったりするんだろうな。
そして単純に会話が楽しいんだ! テンション高いツッコミでドカンと爆笑を取るタイプの笑いじゃなくて、掛け合いの可笑しみでずっとクスクスさせるタイプの笑いで、それが1冊ずっと続くもんだからもう最高。短い章立ての各章それぞれが、まるでひとつのコントのようである。
やたらストイックな伏線回収にもこだわりを感じました。「昔なぜか筆箱の中の消しゴムが増えた事件があった」みたいなどうでもいい雑談エピソードの真相が、後の章での別の人物との会話の中で明かされたりする。どんなにささいなことでも疑問を残さないという気概が見えるぜ……。


吾妻と瀬川。家もお隣さんで、小さな頃からずっと一緒で、別に恋愛対象というわけでもないんだけれども常に相手のことを気にしていて、会えば冗談と軽口を飛ばしあう気のおけない間柄。いやあ、いいなあ幼馴染。久しぶりに心からいいなあと思う幼馴染を見た気がする。
他の誰かから付き合えばいいのにと言われたりすると全力で否定する(吾妻も瀬川も)のに、相手に異性の影が見えたりすると途端に不機嫌になっちゃったりする(吾妻も瀬川も)。友人以上恋人未満な関係ってたぶんこういうことを言うんだ。きゅんきゅんしちゃう! しかもなに、お前ら交換日記とかやってんの。半端ねえな。これはガンちゃんも激おこですよ。殴る。ガンちゃんが殴らなくても僕が泣きながら殴ってやる。もーそんな青春送ってみたかったー!!!
とにかく最初から最後まで楽しくて仕方のない作品だったのでぜひシリーズ化してほしいです。続いてくれー!


イラストはトコビさん。雰囲気抜群の表紙イラストが素敵です。
瀬川も美咲も、どことは言いませんが、特定の部位の迫力が凄いですね。どことは言いませんが。おっぱい。


恋愛脳茶茂さんの幼馴染ーズいじりが好きすぎる。