まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱くI』感想

死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱く I (オーバーラップ文庫)

死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱く I (オーバーラップ文庫)

ストーリー
銀の髪をなびかせ、漆黒の瞳を宿した少女は戦場を疾駆する。漆黒の剣を携え、無邪気な笑みを湛えながら数多の敵を屠る少女の名はオリビア。幅広い知識と戦闘技術を、自らを死神と称する存在に叩き込まれた少女であった。オリビアが15歳を迎える日、死神は忽然と姿を消す。手掛かりを求め、オリビアは王国軍の志願兵として戦火へと身を投じていくことを決意したのだった。
時は光陰歴九九八年。王国は大陸に覇を唱える帝国に対し、苦戦を余儀なくされていた。次第に苛烈さを増す戦場で、常識知らずの無垢な少女は“最強の駒”として、英雄の道を歩み出す――!

第4回オーバーラップWEB小説大賞<銀賞>受賞作品。死神に育てられた世間知らずの少女が誰も敵わぬ最強の剣技を武器に戦場を荒らし回る痛快戦記ファンタジー
これは楽しかったー! 人の営みや常識を知らない無垢で無邪気な少女、でもひとたび剣を握れば誰もが一瞬で斬り捨てられる戦場の支配者と化す……もうこの主人公の設定がすっごい好き。性癖ぶっ刺さりまくり。
強大な帝国に対して為す術もなかった王国の運命が少女の出現によって変わっていく物語展開は燃えるし、敵味方問わず魅力的な登場人物も揃っており、戦記ものとしても楽しい作品でした。ほんと楽しすぎて一気に読んでしまった。


生まれてすぐに死神に拾われ、他の人間との接点を全く持たずに森の中で育て上げられた少女オリビア
ずっと森の中にいたために、人間に関する知識はあっても人の常識や世間というものを全く知らない彼女。そんなオリビアが森を出てたまたま出会ってしまったのは、帝国の兵士たちと、帝国でも有名な武人の隊長。彼女はその隊長の「首」を手土産に王国の志願兵となる……。
いやあ、サイコーですね。いつも言ってるような気がしますけど、美少女が剣を振り回して無双するのが本当に好きなんですよ。リアリティがないってのはわかる。わかるけどやっぱりロマン優先というか、中二心が抜群にくすぐられちゃうんだよなあ。
リビアは本当にバグみたいな強さの少女です。彼女の存在を抜かせば世界設定はかなりきちんとしており、将軍が武を示せば参謀は策を巡らし、と、帝国の勢いに打ち負けそうな斜陽の王国を描く戦記ものとしても十二分に楽しめるのですが、そんな武や策を一蹴してしまうほどの圧倒的な駒がオリビアなのです。
笑いながら戦場を駆け抜け、誰も彼もを一振りの下に沈めてしまう狂気の存在。敵も味方も驚き畏怖するその最強ぶりがただただ気持ちいい。


イレギュラーな待遇で王国軍に入ったオリビアは、次々に破格の戦果を打ち立てていきます。
でも当然彼女には、名誉欲とか金銭欲とかいうものは存在しません。欲しいのはおいしいパン、ケーキ、それから本。戦場での戦いぶりからはかけ離れた無垢な愛らしさについ頬が緩んでしまいますね。パウルおじいちゃん(※中将である)の気持ちもわかるわー。
人を寄せ付けないのかなと思いきや別にそういうこともなく、むしろ人懐っこいところがあってそこがまた可愛いんですね。アシュトンやクラウディアとの友人のようなやりとりにはほっこりしちゃいます。常識はずれなオリビアに付き合わされるアシュトンたちにしてみれば大変でしょうが……。
ただ、根っこのところではまだ、人間をただの生き物としてしか見ていないような部分もあるんですよね。アシュトンたちとの日々の中でそれに変化が訪れるのかどうかは、今後の注目ポイントでしょうか。
いっそ最後まで誰にも理解できない最強の剣士として行ってほしいような気もしつつ、一方で人の心を知ったオリビアの姿も見たいし、悩ましいね! ともあれ続巻が楽しみです!


イラストはシエラさん。いやーオリビアさんめっちゃカッコいいですわー。
血まみれの姿で冷たく笑うオリビア、最高です。


先をWeb版で読んでしまおうか本気で悩んでいる。