まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『婚約者を奪われた伯爵令嬢、そろそろ好きに生きてみようと思います』感想

婚約者を奪われた伯爵令嬢、そろそろ好きに生きてみようと思います (レジーナブックス)

ストーリー
幼い頃から良い子を演じ続けてきた、伯爵令嬢のメアリー。姉が婚約破棄されたことをきっかけに、突如、自分の婚約者が彼女を守るナイト役となってしまった。毎日、姉と自分の婚約者の親密すぎる光景を見せつけられ、周りからは「見向きもされない可哀想な妹」と心ない噂をされてしまう。さらに両親は、落胆するメアリーにお構いなし。孤独に苦しみ、全てを諦めていた日々だったけれど……。無神経な婚約者と愚かすぎる家族には、もううんざり! メアリーは全てを捨てて、自分自身で幸せを掴むと決心して――!? どん底人生からの爽快サクセスストーリー、いよいよ開幕!

家族から良い子であることを押し付けられて我慢の人生を送ってきた主人公が、我慢を捨てて自分らしく生きることを選ぶ学園ファンタジー
「理想的な家族」という檻に閉じ込められた主人公メアリーの姿はなんとも息苦しそうで、だからこそ彼女の勇気ある決断に拍手したくなるお話でしたね。
ただ、物語としては全体的に薄味かな。めっちゃ時間すっ飛ばしていくし。あとヒーロー役がどうにも好きになれないのが残念でした。


家族の面々のエゴを陰ながら全部引き受けて、都合の良い子で居続けることを強制されてきた伯爵令嬢メアリー。そんな彼女の人生は、平民出身の生徒会副会長エリックとの出会いによって劇的に変わっていきます。
両親も兄も姉も弟も婚約者も、表立ってメアリーを虐げているわけではなく、あくまで表面的には笑顔の溢れるいい家族風ではあるのだけれど、その実我慢をしているのはメアリーばかりという歪さが辛い。家族の方もメアリーのことを愛していると思い込んでいるから、どうにもならないやるせなさを感じます。
溜まりに溜まったものがあるからこそ、メアリーの宣言が気持ちよく響きました。頑張ったね。
結果的に家族とは疎遠になってしまったけれども、弟カイルとの後日談は良かったですね。あの家族の中にも彼のような救いがあって少しほっとしました。


メアリーというキャラクター造形や彼女の生き様自体は格好良かったのだけれど、ストーリーは全体に薄かったなあ。特に中盤以降、どんどん時間を飛ばしていった印象で、振り返ってみれば学園内のエピソードもお祭りと卒業式くらいしかなかったような。せっかく生徒会の一員なんておいしいポジションなのに、まともに名前が出てくるのもエリックとアトナ殿下くらいだし、色々ともったいない感じがしました。
エリックもなあ。面白キャラで銘打って出てきたわりにはセリフがダダ滑りしてるし、言動の全てが軽いし、そのわりに謎の評価を受けているあたりがどうも好きじゃなかったです。こいつそんなに面白いか? お調子者なだけでは? メアリーはなんかめっちゃ笑ってたけど。どうもメアリーとは笑いのツボが合わないようです。メアリーの人生を変えてしまうヒーローなら、もう少し格好良くあって欲しかったっていうのが本音ですね。


カサンドラくらい救いようのない愚かさが徹底してると逆に結構好き。