まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

花冠の王国の花嫌い姫

花冠の王国の花嫌い姫 (ビーズログ文庫)

花冠の王国の花嫌い姫 (ビーズログ文庫)

ストーリー
『花冠の王国』と称される大国エスカ・トロネアの王女として生まれながら、重度の花アレルギーを持つフローレンス。
常にくしゃみ鼻水が止まらない彼女だったが、北の辺境国ラハ・マドマとの結婚話が持ち上がったことで人生の転機が訪れる。
花のない国に行けると喜び勇むフローレンスだが、相手側にとっては、なぜ大国の姫がと不審でしかなく……。



第17回えんため大賞<奨励賞>受賞作品。
花に囲まれた王国に生まれたのに花粉症の王女が、花のない生活を求めて辺境国の王子と婚約!
もちろん初めこそ恋も何もない婚約なのだけれど、お互いの人柄を知るうちにだんだんドキッとすることが増えていくふたりの姿がとても微笑ましくてよかったです。
陰謀に慣れた大国の姫と、腹黒そうに見えて純朴な小国の王子という、外見とは裏腹のキャラクター設定も面白いですね。


大国エスカ・トロネアの王女フローレンスは、花で溢れる国の姫でありながら重度の花アレルギー!
結婚するなら花のない国に! ということで、寒すぎて花も咲かない北の辺境国ラハ・マドマの王子・イスカに猛アタックを続けた結果、ついに婚約の運びとなります。
しかしイスカ王子としてみれば、豊かな大国の王女がなぜ貧しい小国の王子の嫁に……と怪しくて仕方ない様子。
イスカはイスカで、エスカ・トロネアからの持参金を目当てに求婚したものだから、為政者としては素直すぎる彼には後ろめたさもあり……。
花粉症のことを隠したいフローレンスと、その秘密を探りたいイスカ。お互いに相手側のことを不審がる、疑心暗鬼の婚約生活が始まるのでした。


とまあ、本人同士は大真面目なんでしょうけど、ハタから見ている分には、なんというかすごい平和!(笑)
べつだん深い陰謀があるわけでもなく、少し話せばすぐにお互い納得できるような状況だったし、何よりフローレンスもイスカも人格者なので、意外とすぐに和解しちゃいました。
一見ふわふわした王女様といった風情のフローレンスですが、さすがは大国の姫君というべきか、見た目クール系腹黒王子なイスカよりもずっと、陰謀を巡らせたり他国の思惑をはかったりすることが得意だったり。
そもそも、ラハ・マドマの人々がみんな純粋すぎるんです。フローレンスに対してろくに隠し事をできない侍女のジゼルも、笑っちゃうほど素直なキャラクターだったし、
ということで、貿易の利権を巡った隣国シェイル・コーレスとの折衝では、主人を差し置いてもっぱら活躍するお姫様という面白い構図が見られました。姫といえば知的な王子様にいいようにやられるというのが鉄板かなと思っていたのですが、こういうのも新鮮でいいですね!
お互いのことを知り、国のピンチを救うために協力しあい、心を少し通じあわせた王女と王子。半年後の結婚に向けて、ここからふたりがどう恋に落ちていくのか、続きが楽しみでなりません。


イラストはまちさん。華やかな絵柄がぐっと目を惹く素晴らしいイラストでした。
SDキャラがとても可愛い! 特に花粉でぐじゅぐじゅのフローレンス!


花粉症持ちとしては身に沁みて共感するところが多々……。