まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

やがて恋するヴィヴィ・レイン1

ストーリー
空から落ちてきた少女の遺志を胸に旅に出たスラム街育ちの少年・ルカ。
傭兵となったルカは、王女付き近衛連隊の機械兵乗りに抜擢される。
才知溢れる王女・ファニアに率いられた軍は、王国の命運を決する戦役に臨むのだが……。



謎の人物「ヴィヴィ・レイン」を探す旅に出た貧民上がりの少年が、傭兵として王女を救う恋と戦争の物語。
戦争や機械兵の重厚な印象とは裏腹に、ロマン溢れるストーリー展開と美しい情景描写はさすがの犬村小六といったところ。
今回のお話は世界のごく一部での出来事ということで、巻末の世界地図を見ていると、これからのお話がどう広がっていくのかワクワクが止まりません。


今回は「壁」で三段に分断された世界が舞台。上段のエデン、下段のジュデッカに挟まれた人間たちの土地グレイスランド。
物語は、先進文明を持つエデンの輸送機から落ちてきた少女と、主人公・ルカとの出会いによって始まります。なんと見事な「空から女の子が!」。でも、普通ならここからロマンスが始まるところ、そう簡単にはいかないのがひねくれているというかなんというか。
少女の言葉を胸に、傭兵として旅に出たルカは、5年の歳月を経ていっぱしの傭兵として成長を遂げ、なんと王女が直々に乗る機械兵の操縦士に!
再会した幼なじみにして天才操縦士のミズキとともに、王女を守る近衛として戦争へ赴くことになるのでした。


グレイスランドの戦争を左右するのは、エデンから「下賜」される先進兵器・アーク。
敵国が自国よりも多くを支払い、より強力なアークを手にしたならば、それだけで戦況がひっくり返ってしまう可能性すらあるのです。
そのようにして、一夜で崩壊した王国軍。敵国内に取り残された王女と近衛連隊。執拗に迫る敵同盟軍。
仲間も散り散りになり、残ったのはルカと王女のふたりきり。貧民の少年が、手負いの王女とともに敵国からの脱出を図る……。うーん、ロマンだ!
とっさの機転で敵兵を欺き、幾度となく窮地をしのぎ、最後は全員の命を懸けたギャンブルに出る。ギリギリのところで命をつなぐ緊張感と、この盛り上がり。たいへん興奮させられました。
ルカ、ファニア、ミズキ、そして限られた命を持つエデン産の人造人間・アステル。4人で起こした奇跡が、どのような未来を描き出していくのか。
何やら不穏な予告もされているのですが……どうやらもう1人、主要キャラクターがいるようですし、ともかく続巻が楽しみでなりません。


イラストは岩崎美奈子さん。透明感があってどこか儚い、印象的なイラストでした。
機械兵のイラストも見てみたいですね。


ルカさん、潜在的妹萌えお兄ちゃんだ……(友達になれそう)。