まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『名もなき竜に戦場を、穢れなき姫に楽園を』感想

名もなき竜に戦場を、穢れなき姫に楽園を (ファンタジア文庫)

ストーリー
名前のない荒野。魔導王国と機械帝国の果てなき戦争により、命が無価値に失われ続ける戦場には、二人の“最強”がいる。魔導王国の獣騎兵<屍喰竜>として戦場を蹂躙するクロト。帝国最新鋭の兵器を駆るために生み出された姫、ロア。「俺たちは相容れない。戦争の終結は屍喰竜による殲滅だけだ」「戦争を終わらせて、わたしの名を栄光と共に刻むんだから」無惨に死んだ少年兵たちの命を背負うクロトと、勝利という理想を求めるロア。戦場以外で邂逅するはずのなかった宿敵同士が出会い、彼らは知る。互いの胸に抱く願いと決意を――。銃と咆哮、存在すべてをかけて戦う少年と少女の激戦の物語。

魔導王国と機械帝国の終わらない戦争。両軍の最強の戦力である少年と少女が異界で思わぬ出会いを果たすボーイミーツガール。
宿敵である少年少女の運命の出会い……いいじゃないですか! ロマンだね!
魔導と科学、国家体系が全く異なる両国の異種格闘技戦じみた戦争描写もユニークで読み応えがありました。


百年以上に渡って戦争を繰り広げてきた魔導王国と機械帝国。そしてその両国には、それぞれ「最強」が存在していた!
強大な竜の姿に变化する王国の少年・クロト。科学の粋を極めた人形兵器を駆る帝国の少女・ロア。戦場でも幾度となく戦いあった両者は、運命のイタズラにより思わぬ形で顔を合わせることに……。
魔法や呪詛といったオカルト満載の王国と、メカや兵器の数で押す科学国家の帝国。ファンタジーとSFの世界が間違って繋がってしまったような戦場でありながら、どちらが優勢ということもなく戦況は膠着し続けているという不思議な戦争が興味深いです。


そんな中出会う、王国最強の少年と帝国最強の少女。お互いの正体は知らないままに迷い込んでしまった異界から脱出するため一時休戦する両者は、見ていて気が気でない。
ファンタジー世界とSF世界。お互いのことを理解するには常識がかけ離れすぎている両者だけれど、何度かそうした出会いを重ねる内にいつの間にか心の距離は近くなっていく……という王道展開にニヤリ。敵味方に分かれたロマンス、いいものですなあ。
しかしクロトもロアも、戦場に出なければならないそれぞれの理由を抱えている。たとえ多少仲が縮まったとしても、簡単に戦いをやめられるような立場にはなく、またそんなつもりもない。ただ、戦いの中で相手の顔がよぎる……そんな葛藤の中で戦う二人の姿が苦しく切ない。
戦争をやめられないのは両国家も同じ。もはや止められないところまで来てしまっている。国を挙げて敵国を潰そうとする人々の意志の中、クロトとロアが見出す起死回生の挑戦。最強同士の最初で最後の共闘。うーん、熱いね!
物語は綺麗に幕を閉じているんだけれども(そしてここから続けようがないような気もするんだけれども)クロトとロアの今後も見てみたいなあ。どうにか続いてくれないかなあ。


イラストは切符さん。可愛らしさとシリアスとがマッチしたイラスト。さすが。
アマリネさんのいい女感がすごい。


怪物とメカが飛び交う戦場をビジュアル的に見たいんだけれども、コミカライズとかどうですかね……?