まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

姫騎士はオークにつかまりました。

ストーリー
不景気真っ只中のモリタニア王国にて、就職活動に失敗し派遣オークとして働く、里中・オーク・弥太郎。
倉庫襲撃の業務中、同僚の似非魔法使いの佐々木、エルフの遥香と一緒に、特別ボーナス目当てで姫騎士・杏樹の捕縛に成功する。
ところが弥太郎のオークらしからぬ言動と、ドラゴンから命を救ってくれたことがきっかけで、杏樹は弥太郎に恋をしてしまい……。



第28回ファンタジア大賞<審査員特別賞>受賞作品。
派遣でブラックな現場にやってきたオークと、国を治める若き姫騎士(ちょっと行き遅れ気味)が織り成す、今ドキの若者の悲哀に満ちた(?)ファンタジーコメディ。
やたら弱気で内定のことばかり気にかける主人公のオークらしくなさ! そしてそんな主人公がなぜか人間やエルフのヒロインたちにモテてしまうという異常事態……。
そのズレが笑いを生む、かなり独特なノリのギャグでしたが、上手く乗ることができれば妙な楽しさのある作品でした。


就職に失敗したオークの弥太郎が行き着いたのは、ブラック極まる派遣会社。
企業どころか盗賊団や犯罪者集団にまで社員を派遣する会社が指定した次の現場は、王都の倉庫街を襲って物品を奪うというもの。
さらに警備の陣頭指揮を取るであろう姫騎士・杏樹を捕らえたものには特別ボーナス百万エン!
ということで、偶然ながらその目標を捕らえてしまったオークと、捕らわれてしまった姫騎士……というところから歪なボーイ・ミーツ・ガールが始まるのでした。
派遣で弥太郎の同僚として働くのは、職場のアイドルのエルフの美少女・遥香と、イケイケの新人で元ホストのおバカな魔法使い・佐々木。
この4人が、ひょんなことからドラゴンの巣に連れ込まれ、誘拐犯3人と被害者1人という構図ではありながら、脱出のために冒険するハメになるわけですが……。


弥太郎はオークではあるものの、色欲が強いわけでもなく、暴力的でもない、わりとまっとうな感性を持ったオークらしからぬオーク。
一方の杏樹は、国王だった父の仕事を受け継いだもののその激務に追われて行き遅れかけ、結婚願望ばかりが募っている姫騎士らしからぬ姫騎士。
確かに変な出会い方をした変なふたりではありますが、まさかこうも簡単に姫騎士がオークに恋をするとは思いませんでしたよ……。なんてこったい。
しかも、エルフの遥香まで弥太郎に好意を抱いているようで、いやほんと、オークであることを差し引いても、弥太郎がそんなにいい奴には見えないんですが、人間モテる時はモテるもんなんだな……あ、人間じゃなくてオークでしたね……。
とにかく内定、内定のことばかりしか頭になかった弥太郎が、まあ最後には少し、新しくできた「仲間」たちのことを考えられるようになってよかったです。
今の弥太郎を見るに、とても恋愛方面に期待できそうにはありませんけど……なんてったって朴念仁ですから……オークなのに……次巻ではそのあたりも深めていってくれるといいなと思います。


イラストは霜月えいとさん。弥太郎さん、かなりガチな勢いでオークだ……。
口絵といい、たくし上げといい、下着がとてもエロく描きこまれていてGOOD!


佐々木は嫌いになれないタイプ。アホだけど。すっごいアホだけど。