まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

楽聖少女2

楽聖少女2 (電撃文庫)

楽聖少女2 (電撃文庫)

ストーリー
交響曲の初演成功から数ヶ月、ルゥはスランプに陥っていた。
それは、新作の曲が革新的すぎて既存のピアノでは弾けず、新楽器の開発も行き詰っていたからだった。
そんな折、フランス軍がウィーンへと侵攻し、ユキはついに魔王ナポレオンと相まみえる……。



音楽、悪魔、そしてハイドン師(違う)のゴシックファンタジー第2弾。1巻が素晴らしかっただけに、かなり緊張しながら読みましたが、変わらぬ面白さにひと安心。
前回のテーマソングはとある交響曲でしたが、今回のお話の中心は、ある特別なピアノソナタです。
音楽に詳しくない私も名前くらいは聞いたことのある超有名曲だけに、知らずわくわくしてきます。詳しい人だったらもっとわくわくするんでしょうね。羨ましい。
さて、そんな偉大な新曲作成の中でルゥの前に立ちはだかったのは、ピアノの性能という壁でした。
今でこそ完成されているピアノという楽器ですが、当時はまだまだ発展途上の楽器だったのですね。
作曲家が楽器の限界を超えた曲を作り、楽器職人が作曲家の要望を満たす楽器を作る。お互いが切磋琢磨し、どんどん高いレベルの音楽が生まれていくこの興奮。
ベートーヴェンが生きていたのは、まさにこんな音楽激動の時代だったのだろうなあと、たいした知識もないのにやたらテンションが高まってしまうのでした。


新キャラも何人か登場。イラスト込みでなかなかに素敵なキャラが揃っております。
まずは楽器職人のナネッテさんですね。ピアノのこととルゥのことになると目の色を変えてしまうつっこみどころ満載のお姉さまです。今回のキーパーソンその1。
それから、未来に偉大なオペラを残すことになる若き音楽家・カール。どこかで見たことのあるようなトンチンカンキャラの楽団員たちをまとめているイケメンさん。キーパーソンその2。
ナネッテさんは出てくるとひたすらボケ倒してくれるので、会話がさらに楽しくなりました。同時にルゥやメフィにもつっこまなきゃいけないユキは大変そうですけれど。もはやつっこみの鬼と化してますねこの人。
まあ、ルゥとメフィの間で意思疎通ができるようになってしまったから、それだけでも十分つっこみの忙しさが増してると思います。
さらっと悪魔の姿を見られるようになってしまうあたり、さすがはベートーヴェンといったところですかね。メフィやナネッテに猫可愛がりされてますが、この性格でこのビジュアルでしかも偉大な作曲家ときたら、そりゃそうなるわなと。
メフィに迫られて顔を真っ赤にするルゥのイラストが凄まじい破壊力だったのでもうずっと迫られていればいいんじゃないかな。
一方のカールは貴重なつっこみサイドでした。楽団員が全員ボケですからね。
何もかもひとりで何とかしようというのは、この世界の芸術家の性か何かなんでしょうか? カールの場合、本人の性格も大きいような気がしますけれど。
ただ、誰も寄せ付けないような雰囲気を出しておいて、作中でも屈指の常識人ですし、実はルゥの曲に惚れ込んでいるファンっぷりなんかを見ていると、なかなかどうして、にくめないキャラだと思います。


いよいよもってぶっ飛んだ内容になってきましたが、冷静に考えてみれば1巻からぶっ飛んでいたから問題ありませんでした。
ルゥをはじめとした音楽家たちはもちろん、これからは、ゲーテたるユキの創作活動にも期待が高まるところです。
ユキも、ようやく手がかりの一端を見つけられたようですから、作家として、そして魔術師として、どんどん昇華していってくれるのではないかと思います。
それから、ユキの知る歴史から、この世界の歴史がどう変わっていってしまうのかという点にも注目ですね。
揺れ動く時代の波の中で、ルゥとユキの関係は、そしてユキとメフィの関係はどう変化していくのでしょうか。ううん楽しみ。次の巻も待ち遠しいです。


しかしどう見ても楽団員はあの男たちにしか見えない。これもまたスターシステムの一環なのか。