まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『キングメイカー! ―戦野の隅の大英雄―』感想

キングメイカー!  ―戦野の隅の大英雄― (GA文庫)

ストーリー
「やめてくれ! た、助けぇえぇ!」観客の盛り上がりが選手の力に変換されるバトルスポーツ・ヨルムンガンド。その日、六道昴哉は“命乞いの演技”によって『ピンチに駆けつける味方の登場』を演出。チームを勝利に導いた。だが彼は――(俺は駆けつける側がやりたい!)内心ブスブスくすぶっていた。そんな彼はある日、軍事の名門・長舟家から家出してきた剣豪少女すばると出会う。無一文で出てきたすばるは、お金を稼ぐために昴哉のチームに入ることになり――!? 《歩兵》の少年が、少女を助け真の《英雄》へと翔け上がる!! 劇場型バトルアクション、開幕!

第9回GA文庫大賞<優秀賞>受賞作品。観客の盛り上がりによって戦闘力が上がるバトルスポーツで雑魚の一兵卒として伸び悩んでいた主人公が、真の剣豪の少女と出会い英雄への道を切り開いてゆくバトルアクション。
他人を引き立てることは上手いのに自分が目立つことは苦手……そんな不器用な主人公が、仲間に背中を押され、ライバルに叱咤され、何度も転びながらも上を向いて走っていくのが熱いお話でした。
ヒロイン候補が多くてわりとガチで絞りきれないな……なお聖さん推しです。


観客の声援が選手たちの魔力に変換されるチーム戦バトルスポーツ・ヨルムンガンド。いかなる強者であってもドラマチックに盛り立てられた弱者の前に膝をつくこともある、ただの力勝負ではない、そんな独特の競技感覚が面白いですね。
主人公の昴哉は、そんなヨルムンガンドで万年一兵卒の雑魚キャラ少年。目立ってナンボの競技なのに他人を目立たせる作戦を練ることばかり上手いという我の弱さと人の良さが、長所でもあり短所でもあるというか。
ともに故郷から出てきた相棒の少女・サキはすでにチームの要たる「英雄」の役目を担っているというのに、いつまで経っても昴哉の方は歩兵のまま。せっかくの機会もチームのため、他のメンバーのためにフイにしてしまうあたり、いい奴ではあるんだけどなんだか惜しいなあ……と思わせられる主人公です。


そんな彼の前に現れた、現代まで残る武家の名門の令嬢にして本当の剣豪少女・すばる。無邪気でとても愛らしい少女ながらその剣の腕は抜群。こういう天真爛漫な最強少女って大好きなんです。ロマンがあるよね。
ヨルムンガンド最強と名高い剣士にして昴哉の憧れの存在・聖もそのタイプで、個人的にはこのヒロインが特に好きでした! 圧倒的強者でありながら決して驕らず、すばるとの一騎打ちをハンデなしで始めちゃうようなバトルマニアっぷりに痺れます。
それから、昴哉の帰りを下宿先で待ち続ける第一正妻候補の綾も捨てがたい。きょうだいみたいな感覚なのに実は昴哉にベタ惚れなあたりにストレートな萌えを感じるー! これはズルいヒロインだぜ……。
もちろん、長年の相棒でありライバルでもあるサキだって強力なヒロインだし、本当にこの中の誰とくっついてもおかしくないくらい。
そんなヒロインたちと、もちろん他のチームメイトに支えられ、次第に演出家としての才能を開花させてゆく昴哉。
誰かを輝かせるのもいい。でも一緒に自分が輝くのだって目指してもいいんだ。弱くて情けない主人公が、「主人公」になっていくストーリー。王道ながら、だからこそ燃えますなあ。


イラストは柴乃櫂人さん。聖さんめっちゃ格好良い! お前が一番だ!
しかし綾の笑顔も破壊力高いな……うーんやっぱ迷う(笑)。


九章までで綺麗に終わっていたと思うのだけど、終章の内容はこの巻に入れなければならなかったんだろうか……?