まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『親しい君との見知らぬ記憶』感想

ストーリー
夢の中で見知らぬ少女と出会い、共に過ごすようになっていた幸成は、ある日、初めて訪れた場所に既視感を覚え、そこで夢の中の少女・優羽子と出会う。そして何と彼女もまた夢で幸成と出会っていたと言う。それから二人はその現象を確かめ合うため、一緒に出かけるようになり、やがて恋に落ちる。しかし全てが順調に思えたある日、突然優羽子が倒れ、意識不明の状態に陥ってしまい……。同じ夢を共有する二人の、ある奇跡を辿る物語――。

現実ではない夢の記憶をなぜか共有する男子と女子が運命的に出会うボーイミーツガール。
不思議な奇跡で出会ったふたりが少しずつ歩んでいく淡い恋模様……を期待していたら、話は思わぬ方向に。
正直読みたかった話とはだいぶ違ったんだけれど、これはこれで。切なさと温かさのあるSF恋愛ストーリーでよかったです。


小学生の頃に学習塾で出会った友達みんなと楽しく遊んでいる記憶。その中のとある女の子と、特に仲がよかった記憶。
おお、まさかの幼馴染ものかな、と思って読んでいたら、なんとこの序章は全部夢の中の話だったという!
実際にはそんな出来事はなかったのに、なぜかとてもリアルに描写される夢。そんな夢を繰り返し見ていた主人公・幸成は、ある時その夢の舞台となった場所で、夢の中身を共有する少女と出会うのです……。
名前まで夢の中のあの子と同じだという彼女・優羽子とともに、「記憶のかけら集め」をすることになるわけですが……なんだこれ、凄くドキドキする!
使い古された表現で言わせてもらうと、もう絵に描いたような「運命の出会い」っていう感じ! かなりクラシカルな出会い方だと思うんですけど、それが逆に新鮮でいいんですわ。久遠先生の瑞々しい描写も相まって、非常に魅力的な出会いの場面でした。


さて、出会って少しずつ仲良くなってきて、そろそろお互いの中に気持ちが芽生えてゆくのかな……? なんてニヤニヤしていたら、フッと時間が飛んで大学生編へ。しかももう付き合っちゃってんのかよ! なんてこった、リア充という人種はこれだからさ……。大学生の恋愛描写って非リア充のハートにやたら突き刺さりますよね。どうでもいいんですけど。
幸せな毎日の中、突然巻き起こる事件。そして次第に解明されるあの夢の謎。
さっきは「運命の出会い」なんて書いたけれど、あの夢、何やらめっちゃ科学的なサムシングだったー! なんじゃそれー!
しかし考えてみればね、世界を越えても同じように出会う男女っていうのはとてもロマンチックだし、愛する人のために奔走する主人公はなんだかんだで格好良かったですよ。何かとやたらデキる奴なんで、無性にムカつくけどね。ただの僻みですね。
ハッピーエンドではありつつも、ちょっぴり切なさも残り、それでいて未来を感じさせてくれるラストが良かったです。


イラストはTivさん。毎度ながら抜群に素敵なイラストでした。
この表紙とか、ほんとたまらんね。


美彌子はいいキャラクターですわ。胸をざわつかせてくれる。