まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『昔勇者で今は骨』感想

昔勇者で今は骨 (電撃文庫)

昔勇者で今は骨 (電撃文庫)

ストーリー
世界を滅ぼす魔王との、最後の戦い。どうしても負けられぬその戦いで瀕死の重症を負った勇者アルヴィスは、最後の手段・死霊術までも使って戦いきって……スケルトンになっちゃった!? それから三年後。魔王討伐後の処理を仲間へ丸投げした勇者改めスケルトン・アルは、平和になった世界でニート生活をエンジョイしていたのだが……
『い・つ・ま・で・遊び惚けとんじゃアルヴィスー!』
――世界が彼を放っておくはずもなく。魔王が倒された後の世界で、それでも助けを求めている人はいる。骨になっても心は勇者! コツコツ世界を救っちゃう(※骨だけに)、お気楽異世界ファンタジー

それなりに長いこと感想ブログなんてやってると次に読むラノベを選ぶときにブログの方に影響されちゃうことが結構あって、新作の方がアクセス数の伸びがいいから去年の作品は後回しにしようとか、発売日当日にこの作品の感想を書けばあのブログが取り上げてくれるぞとか、そういうアレコレを考えるのが面倒くさくなったので最近は純粋に読みたいやつを読むようにしてます(まあそれでも新作優先ですけど)。
すると結構選択肢が増えて、積みっぱなしだった新人賞作だとかTwitterでオススメを見た作品だとかに手を出すことができてとても良い流れが来ています。読みたいラノベを読めば感想を書くモチベーションも上がるってもんです。
つまり何が言いたいかというと今回のチョイスは別に本山らのさんに忖度したとかそういうんじゃなくてたまたま気になっただけなんだからね! 勘違いしないでよね! ってことです。
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閑話休題
自らがスケルトンと化すことと引き替えに魔王を倒してのけた勇者が、魔王なき世界で再度の旅に出る人助け冒険譚。
骨になっちゃった元勇者が、行く先々で怖がられながらも持ち前の戦闘スキルでオークやらゴブリンやらグールやらをばったばったとなぎ倒し、人々に感謝されていく。コミカルで人情味溢れるお手軽ファンタジーという具合で非常に読みやすい作品でした。


主人公のアルは元勇者といえども別に正義感や使命感に満ちているわけでもなく、一仕事終わったし遊んで暮らそうかなー、骨だし、くらいのあっけらかんとしたキャラクター。
まあそれももっともというか、命を失ってまで魔王を倒してのけたのは事実なわけで、別にもう働かなくていいんじゃないかとも思うんですけどねぶっちゃけ。でも昔の仲間がいなくなったと聞いたらしょうがねえなっつって腰を上げる程度にはしっかりいい奴なんですよね。根っこはちゃんと善人だし理由なしに他人を救おうとするところなんか見るとやっぱり勇者なんだよなこの人(骨)って思います。
いかんせん骨なもんで、町の人々にもなかなか受け入れられないんだけれども、なんだかんだで毎回いい出会いに恵まれるのも人柄の為せる技なんだろうな。
戦いの場ではもちろん強いんだけれど、勇者の頃の強さそのままではないからある程度苦戦もするし、逆にスケルトンならではの戦い方なんかも見せてくれたりするので飽きが来ません。そこかしこに散りばめられた骨ギャグといい、スケルトン主人公を存分に活かそうという作者の意気込みを感じます。「骨 慣用句」「人体 ことわざ」とかでめっちゃ調べてるんだろうなー(邪推)。


今作の大きな魅力のひとつは各章ごとに登場してくるゲストキャラクターたち。どのキャラクターにも物語があり、思いがあり、知らず愛着が湧いてしまいますね。
アルに助けられてハッピーエンドでさようなら、ではなく、後の章でしっかり再登場してくれるのも嬉しい。少しずつアルのことを知る仲間たちが世界に増えていくこの感じ、ワクワクする。
お気に入りはやっぱりミクトラでしょうか。元貴族の女冒険者で勇者の大ファン(アルが当の勇者とは気付いていない)という実においしいキャラクターですね! 自分にやれることを精一杯頑張ろうとする姿や思わぬ成長ぶりを見ていると応援したくなってきます。
それから、とある過酷な運命の下にある村娘ハルベルちゃんも推せるし、プーチには癒されるしレヴァも頼れる相棒感があるし、うーんやっぱりみんないいぜ。それどころか敵のゴブリンやボスキャラさえも好きになっちゃう。キャラクター愛に溢れた世界である。
さて次はどんな町で、どんな人を、どんな風に助けてみせるのかな。2巻も出ているので早めに読もうっと。


イラストは白狼さん。アニメタッチのガイコツに妙に愛嬌があって楽しいイラストでした。
ハルベルちゃん、ヒロインとしてその顔はアカンで……。


なんだかんだでフブルさん萌えなところあるよね。