まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

ゴブリンスレイヤー

ストーリー
冒険者になってはじめて組んだパーティで死の危険にさらされた女神官。
それを助けたのは、ゴブリンスレイヤーと呼ばれる男だった。
手段を選ばず、手間を惜しまずゴブリンだけを退治していく彼と、なりゆきで行動を共にする女神官だったが……。



愚直で不器用な男がただひたすらにゴブリンを狩り続けるダークファンタジー。
面白かったです。冒険者達からはバカにされていてもいざ敵に回すと残忍で危険なゴブリンたち……そんなゴブリンに対して研究を重ねて高みへと上った、決して強くはない男の戦いぶりに目を見張ります。
ゴブリン以外には基本的に無頓着な男が、少しずつ知り合いや仲間を増やしていく展開には胸が温かくなりました。


冒険者の登録を済ませたばかりの新米・女神官は、新米たちの例にもれずゴブリンを侮って4人だけで挑んだ依頼で、パーティー全滅の憂き目に遭ってしまいます。
最後の1人となり、追い詰められた彼女を救ったのが、ゴブリンスレイヤーと呼ばれている男。
銀等級……十段階中三位という上級冒険者でありながら、高い鎧や武器を揃えるでもなく、安物でボロっちい革鎧とゴブリンどもから奪った武器でゴブリンたちを蹂躙していく彼の姿は、ゴブリンを倒しているだけなんですけど、妙に格好良く見えるから不思議です。
そもそもゴブリンといえば、多くのファンタジー作品で雑魚扱いされている雑魚モンスターの代表格。この世界でも例にもれずなのですが、実際にゴブリンがどのようにして冒険者を罠にはめるのかや、捕虜の女をどんな風に扱うのか、といった場面をこうして思い切り陰惨に描かれると、この雑魚モンスターが一気に恐ろしいものに思えてきます。
新米たちには荷が重い。かといって上位冒険者たちは、悪魔やドラゴンを狩りに行ってしまう。そんな中でただただゴブリンだけを狙い、ゴブリンだけを倒すゴブリンスレイヤーという存在が、よく知らぬ者からは際立って異質に、そして彼を真に知る者からは実に頼りになる人間に見えるのです。


その特殊すぎる冒険っぷりから基本ソロでゴブリンを狩ってきた彼ですが、物語最初の出来事をきっかけに女神官とパーティーを組むことに。
彼女はド新人ですが、ゴブリンスレイヤーの横で戦い続けるうちに、いつの間にかいっぱしの冒険者らしく成長していましたね。彼のゴブリン狩りに付き合うことがどれだけハードなのか、容易に想像できます(笑)。
言葉少なで、ユーモアのひとつも解さず、それどころか鉄兜の下の素顔さえ見せてくれない男ではありますが、そんな彼とまともに付き合っていける女神官の器の大きさたるや。
まあ彼も、心根は真面目で純真なやつですからね、女神官や受付嬢をはじめ、分かる人には分かっちゃうんですわ。だから、エルフとドワーフリザードマンという異様なパーティーから誘われちゃったりもするわけです。
ゴブリンスレイヤーも、別に他人と関わるのが嫌いというわけではなさそうですし、仲間との冒険は存外に楽しそうでした。こうやって、友人や仲間と呼べる相手が少しずつ増えていってくれるといいですね。
もちろん、彼が誰よりも守りたい特別な相手は、恐らく変わることがないのでしょうが……。続刊での冒険にも期待しています。


イラストは神無月昇さん。全身鎧の主人公が日常に溶け込んでいる姿が凄く……シュールです……。
ビジュアル的には受付嬢さんが好き。妖精弓手さんもいい。


キャラクターの名前を一切出さないこだわりは強く評価したい。