まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『真面目系クズくんと、真面目にクズやってるクズちゃん #クズ活』感想

ストーリー
『真面目系クズ』――真面目そうに見えながら、実態は怠惰で浅ましく、取るに足らない存在。八卜悠楽を表現する一番ふさわしい言葉。クラスで下に見られも必要以上に注目もされない、そんな立ち位置に満足していたが、ある行為――クラスメイトに貰った手作りクッキーをウサギの餌にしているところ――を黒内人花に見られてしまう! 性格の悪さは折り紙付きの黒内に呼び出され――
「……なにさせる気だよ」「クズ活」「なんだそれ」「クズになるための活動、の略だね」「……なんでそんなことを?」「育成してみたかったんだ、クズを。私の手で、どこに出しても恥ずかしくないクズを」前代未聞、クズを目指す活動――クズ活、スタート!

面白かった! 濃すぎるダブルヒロインに挟まれた僕、という作者のデビュー作を彷彿とさせる構図。魅力的なヒロインたちと淡い恋心。そしてキレキレのギャグ。
クズと聖人君子という正反対の2人に翻弄されるうちに自分の立ち位置を見失ってしまう主人公が、彼女たちと同じステージへ上がっていく終盤の展開。
持崎湯葉先生の巧さがこれでもかとばかりに爆発していて、いちファンとしても大満足の1冊でした。ぜひ続いてほしいシリーズ!


ク、クズうううう! この主人公、まぎれもないクズである! 性根はクズなのに外面は良くしておこうと思っているあたりがさらにクズ! ぶっちゃけちょっとわかるけど!
そんな「真面目系クズ」の八卜(はちうら)、彼とは違って表も裏もクズという正真正銘のクズ子ちゃん・黒内に捕まってしまい、ともに「クズ活」に勤しむことに。クズ活とはクズを育成する活動とのことで、正直身の回りのクズをネタにして遊んでるようにしか見えないんですけど(そのあたりがまたクズっぽい)、とりあえず『クズ召喚デュエル』はめっちゃ楽しそう。うんうん、それもまたクズカツだね。
一方、黒内に対抗する聖人君子として君臨するヒロイン・白庭。白い。純粋と善意と真面目をじっくりコトコト煮込んで作られてそう。そして鬼のようにかわいい。
八卜くんったら何せ表向きは真面目なもんだから、白庭と奇跡的にいい感じになってきちゃうわけなんですが、そこで白庭の白さに耐えられなくなっちゃうあたりがやっぱり真面目系クズ。ああ、なんて残念なの。


ということで、真面目系クズくんは正統派ヒロインではなくクズヒロインを選んでめでたしめでたし!
……とはならないところが、今作の面白み。白庭はそのまま黙って引き下がるような女の子ではなかったのです。
そんな白庭の魅力がフルに発揮されるのが、学校屋上の戦い! 立入禁止の屋上で、隠してたこと全部ぶちまけて、気が済むまで相撲(なぜ)。えーなにこの青春。いいなあ。高校生がアホやるのっていいよなあ。輝いてるよなあ。
そんな青春の中でも、全力でクズに振り切れた黒内と、全力で聖人に振り切れた白庭に比べて、やっぱり中途半端なのが八卜。
あまりに眩しく輝く2人の間で、縮こまってしまうのは仕方のないこと。でもそれで終わっていいのか? つまらない人間だって思われていいのか? そうじゃないだろ?
100%真面目でもないし、100%クズでもない。そんなモブ少年のちっちゃなプライドの叫びを見届けよ!


イラストはいたちさん。黒と白、対比的なダブルヒロインがそれぞれ魅力的に描かれていました。
漫画を手がけているだけあってキャラクターの表情も豊かでよかったです。


第3の少女にして愛なき幼馴染こと鈴堂さんが実は一番かわいい説(でもたぶんヒロインにはならない)。