『ワキヤくんの主役理論』感想
- 作者: 涼暮皐,すし*
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2017/09/25
- メディア: 文庫
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ストーリー
青春を最大限楽しむためのメソッド《主役理論》を掲げ、夢の一人暮らしを勝ち取った俺・我喜屋未那。隣に住む少女・友利叶も一人暮らしで、クラスメイトで、バイト先も趣味嗜好も全てが同じ……なのに俺と真逆の《脇役哲学》を掲げる、決して相容れない天敵だった! そんな叶との口喧嘩の果て、同時に部屋の壁を蹴破ってしまい、何故か同棲する羽目に。そして俺たちは、やはり同時に考えた――これは戦争だ、と。
「そのさもしい青春に嫌気が差したら、いつでも言ってくれればいいぜ?」
「そっちこそ、煩わしい人間関係に嫌気が差したら、いつでも頼ってくれていいよ」
俺の《主役理論》と叶の《脇役哲学》、どちらが正しいかこの同棲で白黒つけようか!
住んでる部屋、クラス、バイト先、趣味嗜好、最高の青春を送りたいという思い、全てが同じなのに生き様だけが真逆の少年少女を描く青春学園コメディ。
ふぉー、面白かった! 喧嘩するほど仲がいい(本人たちは気付いてない)を地で行くふたりのやりとりにニヤニヤが止まりませんわ。
お互いに誰より相手を理解してる、だからこそ絶対に相容れない、そんな不器用で頑固で面倒くさすぎる青春模様は、だからこそこんなにも輝く。
主役になることを目標に高校入学と同時に独り暮らしを始めた主人公・未那。
脇役になることを目標に高校入学と同時に独り暮らしを始めたヒロイン・叶。
たまたまアパートでお隣さんになった両者の部屋の間の壁はあんまりにも脆く、入居初日で崩れ去ってしまった!
なしくずし的に同じ部屋で暮らすことになっちゃう未那と叶。同い年の高校生男女で同棲とか、やだ最近の若い子ったら。でもふたりはあまりにも似通いすぎていて、そのくせに致命的な部分があまりにも違いすぎていて、男女のアレコレな関係にはまったく発展する気配がない。
しかし傍目から見る分には、寝ぼけ眼の叶を起こして、愚痴をこぼしつつ朝ごはん食べさせて、叶は下着姿も気にせずお着替え……ってなんじゃそれ! 完全に熟年夫婦! ほんとに出会って1週間なのかよお前ら!
クラスメイトに関係を悟られないために普通の友人を装うのだけれど、ごくナチュラルにお互いの私生活のことに話が及んで、悪口をぶつけあったりしちゃうの、なんていうか最高じゃない? ねえ、めっちゃ最高じゃない?
本人たちには全く自覚がなくて、友人たちにも必死で弁明するのだけれど、その言い訳がことごとくかぶっちゃったりもしていて、かーっ! お前ら、かーっ!(言語を失って悶え狂う)
とまあ、傍観者は好き勝手言えるけれども、未那と叶にとってはそのスタンスの違いは大きすぎる問題で。
一旦の協力関係の中で相手の理論を屈服させようとするのだけれど、やっぱりどこかでズレが生じてしまう。
そのズレを見て見ぬふりをすることができないくらいには、ふたりとも自分の生き方に一生懸命で、自分の選んだ青春を本当に謳歌しようとする真面目さが伝わってきます。
でもだからといって、それで袂を分かつことが正しいとは限らない。なぜなら、ふたりはもう出会ってしまったのだから。
主役と脇役、目指す立場は違うけれど、でも、それでも。未那が叶に放ったこっ恥ずかしい叫びはとてもくすぐったくて、だからこそストレートに突き刺さる、破壊力抜群の台詞だったと思います。うーん、いい……。
さて、今後はどっちの方向に走っていくのかな。ふたりの姿に激しく揺さぶられたらしい少女・さなかがどう出てくるのか、期待と不安で半々です。楽しみ。
イラストはすし*さん。笑顔からダウナー顔、魂抜けた顔まで表情豊かな叶が魅力的!
あとさなか。超ストレートに美少女って感じでなんかずるい(笑)。
電話越しでだけ登場してくる旧友がめっちゃ謎。