まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

楽聖少女4

ストーリー
歴史的な二大交響曲《運命》と《田園》の作曲に取り掛かったルゥ。
しかしその初演にまたしても教会が言いがかりをつけてくる。
教会の妨害工作は大事件へと発展し、悪魔メフィをも巻き込むことに……。



天使のラッパが鳴り響くクラシックヒストリカルファンタジー第4弾。
いよいよ、ついに、やってきました。今回のテーマ曲は交響曲第五番《運命》! そりゃもう盛り上がらないわけがありません。
過去最高に魔術師ファウストが活躍する巻でもありましたね。追い詰められるところまで追い詰められて、本当にだめかもしれないと思わされてからの物語の加速度にただただ魅入られました。


出だしでいきなり《運命》と《田園》を書くルゥ。まったくベートーヴェンというのは凄いですね。毎回「おおっ」と思っちゃう有名曲があるんですから。
もちろんそれなりに作中時間も流れているわけで、ユキがこの世界に連れて来られてからなんともう4年が経過。ユキもルゥもメフィも年を取らないからすっかり油断してました。まあ、ルゥの見た目が成長しないのは嬉しいっちゃ嬉しいことですねロリ。ルイーゼ姫は大きくなってしまってちょっと残念ですロリ。
それはさておき、音楽史に残る(それどころか現代人ならたぶん誰でも知っている!)曲がまさに生まれようとする瞬間です。そりゃユキが興奮するのも納得ってもんですが、そんな彼らの前にまたも立ちはだかるのがキリスト教
トロンボーンにそんな意味合いがあったなんて初めて知りましたけれど……それにしても教会の連中の厭味ったらしさたるや! 相変わらず杉井先生はヴァチカンの嫌な部分を描くのが上手すぎる。自らの正義に絶対の自信を持った人たちの集団には、何をしでかすか分からない、得体の知れない恐ろしさを感じます。


ルゥはもちろん最強に可愛かったんですが、今回ヒロインとしての株を大きく上げたのはメフィでしょう。
ユキの魂を奪う悪魔でありながらユキとルゥのために自分の身を投げ出すメフィの姿には、思わずぐっときてしまいました。
失うものを全て失ってからのユキの自暴自棄っぷりがまた切ない。でもこれがまた彼の魔力をぐっと引き出すことにつながるのですから皮肉なものです。思えばファウストの力はいつも誰かが傷ついているときに目覚めていましたが。何かを失うことでしか得られない力など、少し悲しすぎると思います。


いよいよもってファウストに近づいたユキ。最終的に彼はどうなってしまうのでしょうか。
ナポレオンとの対決のゆくえや、謎の機械技師メルツェルとの因縁、そして何よりルゥのこと。まだまだ気がかりなことだらけ。
『第九』が物語の最終盤に大きく関わってくるのだろうというところまでは読めますが……さて、そこに辿り着くまでに何が待ち受けているのやら。
とにかく次巻が楽しみでなりません。またクラシック音楽でも漁りつつ首を長くして待ちたいと思います。


口絵に添えられた解説が思わぬご褒美で本文に入る前に鳥肌立っちゃいました。ずるい。