まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

『ボクは再生数、ボクは死』感想

ボクは再生数、ボクは死

ストーリー
しがない会社員の狩野忍は世界最大のVR空間サブライム・スフィアで世界最高の美少女シノちゃんとなった。VR世界で恋をした高級娼婦ツユソラに会うため、多額の金銭を必要とするシノは会社の先輩である斉木みやびと共に過激で残酷な動画配信を行うことで再生数と金を稼ぐことを画策する。炎上を繰り返すことで再生数を増やし、まとまった金銭を手にしたシノはツユソラとの距離を縮めていくのだが、彼女を取り巻く陰謀に巻き込まれていき――!?

リアルなVRVRはリアル
おッ、石川博品の新作ジャ~ン、でもVRモノか~あんま得意じゃないんだよなァ~でも石川博品だし読むかァ~って感じであんまり乗り気でもなく作家ブランドに釣られて読んだんですけど今はやっぱ石川博品ハンパねえなって気持ちでいっぱいですごめんなさい。マジ面白かったです。
いい年こいた青年が紙オムツ履いてゲーム世界で美少女になってオンラインで風俗通いして、お気にの嬢に会えなくなったから金を稼ぐためにストリーマーデビューして炎上上等の過激配信でバズってファンとオンパコするどっしょもない話なんだけどその全てが生き生きしてて、ああ世界を紡ぐってこういうことなんだって思う。
シノちゃんマジ世界最高の美少女なんで早く現実のネット世界に降臨してほしい。投げ銭の準備はできてる。


舞台は近未来のVR世界。主人公は人気モデラーが作った世界最高峰の美少女アバター・シノ(中身は28歳男性・会社員・独身)。
通い詰めていたオンライン風俗の嬢・ツユソラが引き抜きで高級娼婦になってしまったので彼女に会うためにリアルの上司に誘われて動画配信を始めるのだけれども鳴かず飛ばず、思い切ってネット上のアングラな街に乗り込んだらアウトローに襲われかけて結果それが大バズリ、味をしめて有名配信者を(ネット上で)殺害する過激配信に乗り出していくというストーリー。
もちろんネット上のアバターだから実際に殺し合ってるわけじゃないんだけど、消えたアバターは復活できないという仕様もあって結構殺伐としている。何より神は細部に宿るっていうけどちょっとした描写がこのVR世界の現実味を形づくっていて、ここで彼ら彼女らは実際に生きてるんだなって思わせるからなおさら緊張感がある。
かと思えば淡白なようでユーモアに富んだ会話劇、スパチャ祭りやコメント芸、アバターネーム大喜利などの配信あるあるなんかも盛り込んで、ニヤッとする笑いが随所に散りばめられていてもはや面白いがごった煮だった。ヴァルハラは麦。


とにかく主人公は風俗と金のために狂ったことを平気でやるやべー奴なんだが、惚れた女のために全部賭けるっていうポリシーは一貫していてそこは好感がもてるし、中身が男ってわかってても笑顔で死地に身を投げ出していく危険な美少女ってカタチにやられてなんだか好きになってしまう。これがリアルの配信ならバ美肉ってジャンルもあるしビジュアルやボイチェンされた声でファンになるのもまあ自然かなって思うんだけれど文章でそれをやってのけるのがすごい。
バズるたびに増えていく仲間と敵対者、そしてオンパコフレンズ。金、暴力、SEX。この中で真の意味で現実なのはスパチャで飛び交う金だけだけど彼らにとってはたぶん現実かどうかなんて関係なくて、VR世界のそこにあるかどうかってだけで、だから見てるこっちもこんなに胸が熱くなる。
楽しかった。僕は普段FPSなんて全くやらないけどシノがいるなら守り隊に入ってもいいかなって思った。でも本当の推しはキャッシュマネーとツシマ。


イラストはクレタさん。スタイリッシュとKAWAIIのマリアージュ
三人娘のバランスの取れたデザイン感。


イツキのことはママと呼びたい。