まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

雛菊こころのブレイクタイム1

ストーリー
実家の喫茶店に一度だけ現れた美少女に思いを馳せるも、再び会うことができぬまま高校に入学した伊莉也。
そんな中、伊莉也は生徒の悩みを聞いてくれる“お雛様”の噂を耳にする。
その人物こそ、彼がずっと思い焦がれていた少女・雛菊こころだった……。



第4回講談社ラノベチャレンジカップ<佳作>受賞作品。学園の生徒たちの悩みを、心理学に詳しい「お雛様」ことヒロインが優しく解決に導いていくふんわりお悩み解決ストーリー。
ほんのり優しいお話でよかったです。生徒たちの悩みを受けるヒロインがとても魅力的でしたね。
主人公の淹れるコーヒーも毎回おいしそうで、ふたりで過ごすブレイクタイムのたびに、こっちまでほっこりしてきちゃいます。


生徒指導室で心理学を勉強していたら、いつの間にか生徒たちのお悩み相談をするようになってしまったヒロイン・雛菊こころ。
「お雛様」なんて異名までついてしまった彼女は、まさにその名にふさわしい、おっとりしていて、包容力があって、優しくて、かと思えばふいに見せる無防備な顔がやたら可愛らしい、魅力溢れるヒロインでした。先輩なのに、守ってあげたくなる……。
生徒たちのお悩みは、人間関係のちょっとしたものがほとんどなのですが、彼女とお喋りするだけで気持ちが軽くなるというのも分かる気がします。
一方、主人公の伊莉也は、実家が喫茶店のためにコーヒーを淹れるのが上手い新入生。
こころさんのためにコーヒーを淹れる係としてちゃっかり助手に居座ってみせたその度胸に拍手だよ! いやあ、上手いことやったなあ。技術のある男は違うなあ。


部活の雰囲気を改善したいバレーボール部の部長、大学生の彼氏との恋愛に悩む3年生女子、果ては生徒会長まで。こころさんの助言を求めて、色んな悩みが持ち込まれました。
彼女のお悩み解決の持ち味は、とにかく相手の話を聞くこと。どこまでも相手目線で、寄り添うように一緒に考えるその姿勢がとても真摯で素敵です。
それから、心理学の知識を使って語りやすい場を作ったり、ちょっとしたアドバイスをしてみたり。心理学のあれこれはそれほど専門的な内容ではありませんが、繰り返されるお悩み相談の中でいいアクセントになっていましたね。
お悩み相談だけでなく、勝手にこころさんをライバル視してやってきた占い少女・桃花と友だちになるまでの様子や、こころさん自身の過去に秘密についてなど、意外に波のあるストーリー展開で楽しく読ませてくれました。
こころさん、伊莉也、桃花の3人がこれからどのような学園生活を紡いでいくのか、続刊に期待です。


イラストは笹森トモエさん。こころさんのイメージぴったりのふんわりお嬢様っぷりがたまりません。
空蝉先輩の陰のある感じも好きです。


体操服いいな……。