まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

剣魔剣奏剣聖剣舞

ストーリー
神より与えられし不壊の“神剣”とそれを駆る“剣聖”が祖国の威信をかけて戦う戦乱の時代。
一匹狼の剣聖・リューインはラドガヴィガ王国から神剣を強奪、“絶華十剣”のひとり、ソーロッドの追撃を受ける。
ソーロッドを軽くあしらって行方をくらました彼が逃げ込んだのは、王国と敵対するゼゼルク大公国の前線基地で……。



神剣の使い手として名を上げたい剣聖の少女と、笑いながら各国を荒らしまわる最強の剣聖が奏でるソードファンタジー。
力不足でも健気に愚直に頑張る姿に頭を抱えつつも応援したくなる魅力的なヒロイン。一方、へらへらして女好き酒好き、なのに無茶苦茶強い、正直好きにはなれない男主人公(?)。
このふたりが出会って戦って……もちろんヒロインの方の活躍に期待していたわけだけれど、まさかこんな展開になるとはね!


かつて大陸の覇者だったものの、現在は国力も落ち、隣国ゼゼルクに国境を脅かされているラドガヴィガ王国。
その王国で“絶華十剣”として神剣を操る少女・ソーロッドが今作のヒロイン……もしかしたら主人公、です。
記憶をなくして現在の兄に拾われた時から持っていた神剣ジェグマダールに選ばれたことから、ろくに実績もないのに絶華十剣に選ばれた彼女。剣聖である以上、一騎当千の剣士ではあるものの、その重い立場に比べてやはり圧倒的に足りていない経験と力量。
敵として出会った男主人公・リューインと戦い、思い切り手加減をされた挙句に軽くいなされ、悔しがってまた戦いを挑んで、そしてまた負けて……。あまりにまっすぐでばか正直で、そこをリューインに突かれて慌てるんだから、少し落ち着けとも言いたくなるけれど、個人的にはこのひたむきさが好ましく思えてきます。
親友にして同じく絶華十剣のひとり、フルルロッサとの姉妹のような友情もよかったですね。直情径行なソーロッドを、フルルロッサが冷静に収めて、なだめて、なぐさめる。ソーロッドは彼女に甘えつつも、甘えすぎないように自律する。ともに戦場に立つ者として理想的なコンビのように感じました。


一方のリューインは、王国の神剣護送部隊を襲って大公国に奪った神剣を売ろうとしたり、大公国からつけられた世話役・キリリクにセクハラをかましたり、かと思いきやふらりと王国に忍び込んでソーロッドにちょっかいをかけたり、なんとも目的の定まらない、でも圧倒的に強い剣聖の男。
自分を美少年剣士だとか抜かしたり、いつもへらへら笑いながらろくに神剣も抜かずに戦って、でもそのくせやたら強くって、ぶっちゃけ見ていて不快感の強い主人公でした。
集めた神剣を壊したり、ソーロッドに対して妙な執着を見せたりと、謎が多いのが気になりますね。ソーロッドと神剣ジェグマダールは、物語の根幹に関わる秘密を抱えているのかも。
さて、大公国と契約を交わしたリューインが、王国の剣士であるソーロッドやフルルロッサと戦いを繰り返していく……そういう展開が待ち受けているものと思っていたのですが、リューインとソーロッドの一騎打ちによって、ストーリーはまさかの方向に。
とりあえず、リューインにことごとく負けっぱなしだったソーロッドが、ある剣聖を相手にちゃんとその強さを披露してくれたのは嬉しかったけれど、これからお話がどう進んでいくのかまるで予想がつきません。
王国と大公国。剣聖と神剣。リューインと謎の美女ヌグレードは次にどこへ向かうのか。そしてソーロッドが今後どのように戦い、どのように成長していくのか。様々な謎の解決も含め、次巻以降の展開が楽しみでなりません。


イラストはカグユヅさん。絢爛な衣装と神剣がソーロッドの容貌によく映える表紙ですね。
ギュンターにいさんもイケメンでした。でも頭の冠はちょっと……いや、将軍だからね、仕方ないね。


キリリクさんの本性、嫌いじゃない。